………『総合図』その1………
『総合図』って訳のわからん図面が出回っている。
設計図があるのに総合図が必要で、しかも施工業者が設計図に書かれてない
事柄まで記入して設計者へ提出するという図面が・・・総合図と云うらしい。
建築工事にも工事監理者に対しても世間一般の人々から信頼を頂いていない
ところに「レオパレス21」の不良物件(組織ぐるみの手抜き物件)が発覚し、
対処(弁明)の仕方もオソマツで、建設業が未だに手抜き産業から脱却して
ない事が浮き彫りとなった。
自社の設計施工(多分)で、一級施工監理技士がいて、社内竣工検査も合格
させて、バレたので仕方なしの謝罪TV会見を見て悪質さに憤りが沸く・・・。
設計図があっても施工物件がこういう風になるのは「どうしてか?」との
答えが見つかるかも知れない話に今回はなりそうだ。
設計図があり、設計監理者の承認があり、施工図があり総合図(賃貸パンフ上
の展開図)があり一級施工監理技士が常駐する現場で信用失墜させる現場事情
になる筈がないのだが、原因はどこの建築現場にでも起こりうる事を・・・私の
現場から本音より怒りを発信するつもりはないのですが……のお話です。
……では『総合図』について語ってみよう………………
「『総合図』を至急提出しなさい!」
といきなりの、命令が届いた鈴鹿市のH中学校の工事(平成**年)の話
から始めよう。
入札時の条件や設計図のどこにもそんな『総合図』の文言は見当たらない。
それを受注が決まって新しい設計図を受け取った時に、
「総合図を検討した上で施工図を承認する……」
ともっともらしい文面が書かれた書類をR設計事務所から手渡されたのである。
『総合図』って一体、誰が言い出したものだろうか?
私が現場所長の時代に聞いた時、
「設計図により請負範囲の《施工図》は作図しますが『総合図』は設計事務所
さんの仕事です」
こう答えたのであるのに、何故今の時代の現場所長が同様に返答出来ないのか
理解出来ない。
技術屋として「しのぎを削る」には労を惜しまないが、設計監理者側の責任
範疇まで工事最初から首を突っ込む余裕も無く、まして『総合図』を書く
意味も意志すらもないのが請負者(技術屋)のプライドである。
国交省の標準仕様書にもその言葉は載っていない筈だ。
(私の勉強不足なら許して)
設計図に『総合図』の三文字が記載されていないのは、世間に設計能力の無さを
知らせる図面になるのを恐れて、記録に残さない別の図面で建物を創らせよう
という魂胆なのである。
設計図のとおりに工事を捗めていく為に、設計者の意図を確かめる為にも
詳細図をかねて「施工図」を作図する事は《建設現場の子守唄》《――の風来坊》
《――の玉手箱》でも相当なドラマが繰り返される話をしました。
それも設計図さえしっかり書いてあれば施工図は不要な筈なのに、ここ鈴鹿市
H中学校の工事では施工図よりも『総合図』を最初に提出しなさい……とR設計
事務所からの通達である。
「チョット待ったア!」
何の為に総合図が必用なのか、請負者側からは全く判断出来ないものだから、
「何が書いてあれば『総合図』なのですか?」
白々しく訊ねて、R設計事務所にて作図された設計図の充実内容を聞き出そう
とする。
説明を聞くと、設計図に備品(机・黒板・ロッカー・スピーカー・掲示板等)
それに天井照明・コンセント・空調機器・タイル等々)を書き込んで、設備の
スイッチ迄もありとあらゆるものを、書き込んだ図面を我々請負者側で作図
して提出するのだそうだ。
「御冗談でしょ、それが書かれてあるから『設計図』なのでしょ」
厳しい言葉だが、設計者のプライドを深く傷付ける質問である。
「…………(お前ら…黙って言われた通りすればイイのだ!)・・・」
「設計図に書かれてない事柄を、請負者側で判断して作図するのですか?」
「そうだ、設計図の一枚毎に、全てを網羅した図面にして、R設計が判断を下
すから………」
「エッ!?(冗談じゃあねえよ!…あんたそれで設計屋なの?建築士なの?)」
「今までどこでもそうやって来た。近くのK中学校の現場の時も……」
「私はそんな設計事務所の《お手伝い図面》を書くように言われた事はあっても、
今の時点では施工図を書き上げる事が《全国の建設現場》で常識です。総合図は
施工図の承認の目途が立ってから書くのなら、やぶさかではございませんが・・」
設備が別途工事であるので、教室内でさえ照明やTV・スピーカー等が天井の
どこからブラ下がっているのかを気にせず工事が始まったばかりの杭工事の時に、
「設備業者と打ち合わせをして、総て網羅させた図面を早急に出せ!」
には、『R一級建築士事務所』の看板が泣く設計屋の集団に見えてしまった。
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設計図が机の上にあっても、現場で設計の先生の言葉には逆らえず、言われるが
ままの現場が大半である。
森友問題のゴミの写真とかも、施工業者は設計者の指示とおりに撮影して報告書に
承認印をもらってから工事費を頂いているのだから、調査官としては
設計監理者から事情を分析すればイイものを、立場の弱い業者は口止めされ
(コメントはもっての外)ていて正解は出るわけない。
設計図があるのに『総合図』云々がまかりとおるのは、続きで話ましょう。