――― 工 程 に つ い て 考えると (3)――――――
今から追いかけると断言しても頭数は揃わない。
たとえ頭数が増えても現場で作業するスペースが出来ていなくて、狭い場所
に職人をひしめかせても、仕事にはなるまい。
更に遅れる事になる。
工期の半ばにこの状態ならば、残り日数の100日ではもっと条件は厳しく
なり、取り戻す事の労力は並大抵のモノではない。
1ヵ月で3日ずつ遅れていたら、5ヵ月目にはこの様な計算になるのだ。
この論理には非常に無理がある。工事は最初から最後迄一定の人員でもなく
工事量も一定ではないし、労務費が20%以上では採算割れである。
15日の遅れを月間25日の仕事の中で取り戻すには昼夜働いたとしても、追い
つくのには無理が有る事を認識して欲しい、と云う算数式と思って頂きい。
工事量も職種も職人も最初は少なくて、仕上げ工事の後半になると職人の数
も出来高も急速にアップするのが普通の工程の流れではある。
それなのに、途中で遅れていて工事終盤になって遅れを取り戻すとなっら、
いつも以上に出来高も人数も急に激増した分、テンヤワンヤになるのは目に
見えている。
工事量に対しての絶対に必要な人数はあるから、平均的に話をしただけであ
る。
工程が遅れていれば相当な人数を確保し、注ぎ込み出来る手配能力が必要と
言う事なのである。
(手配が今迄にも出来ていれば遅れていない筈だが・・・)
竣工1ヵ月前、突貫工事に突入して《精度》だ《品質》だ《安全管理》だと
ゴタクを言う暇も無いとなるのでは『工程管理』は何をしてたのかと言える
のではなかろうか。
ではどこでつまずいたのかを、どの時点で遅れを生じたかを自分なりの判
断が甘くて
《まだ予定通り大丈夫》
とタカをくくっていたから、アワを食うのだ。
性格的におおらかなタイプだと―――、
〈何とかなるさ、今迄も『工期延長願』を出した事はないし、何とかケツは合ってるさ〉
と本人が思っているだけで、周囲の人達がかなり振り廻されている事を認識
して欲しい。(私の所からも応援部隊の出動があったンだよ―――って事)
工程管理に於いて最初に遅れ、最大に遅れる原因ソノモノは
『施工図』である。
施工図・躯体図が書けていないなら、当然その工事も出来ないが、基本とな
る施工図が無い事には協力業者が自分の関係する部分を準備する事さえも出
来ないのである。
施工図の意義については、
《建設現場の子守唄》丸善出版の〈施工図が何だってんだ〉
の所をもう一度読んで頂きたい。
(連絡くだされば私から『ー子守唄』無料送付します。FAX052-303-7098)
施工図が遅れる事自体の原因が、重要なのである。
施工図が遅れるのは施工図が書けないからなのである。書く時間が無いのも
言えるが書いてある図面をチェックする判断も欠如しているのである。
承認してイイものか悪いものか、果してこの通りに工場で製作して持って来
たら、現場で取り付けられるのか―――の自信が無いから、せかされる迄、
図面は棚の上で埃を被っているままの現場が多い様である。
また、施工図を残業して手で書いていると云う考えも古い。
何故、CADで書かないのか、コンピュータを駆使しないのか。
一つの図面(躯体図)一枚のフロッピーからどれだけの図面が動かせるか。
1階から各階に通しての柱・壁の位置、部屋の詳細図、電気設備の配線配管
図、天井割付け図、天井インサート図、造作図、金物図………。
(下請けの施工図も活用可能)
それが2階~最上階へと応用出来るのがCADの良い所だと気付く事であ
る。
建築現場で施工図を早く協力業者に渡せる現場は、工程の遅れは絶対に少
ない。
遅れないと云う事は捗(はかど)っていると云う事であり、協力業者として
は早くモノが作れると他の現場の仕事も受注出来るのだから売上が増え分、
忙しいが絶対に儲かる。
〈忙しい〉の考え方を改めて欲しい。
どんどん仕事をこなして行けての《忙しい》ならば、誰が文句を言おうぞ
だ。
工期が迫って来て日程の無い所で短期間に仕事をする事になり、他の現場と
仕事の時期が重なるから〈忙しい〉のである。
現場マンが工程をしっかり管理して協力業者さんをグイグイ引っ張って
行けば、現場も最後には突貫工事にならなくて済むし、
協力業者さん達も儲かるのである。
総作業日数の5%を短縮した工程を着工時に作り・守れば(管理すれば)
最後にドタバタとなる事はない。
儲けも少なからず出て来る事にもなる。こんなウマイ話はないよね。
協力業者は長年の経験から所長さんを見て、自分の所が参入する時期を調整
している。
「エラそうな事言ったって、いつも総合工程表から遅れていて『とにかく
ケツ(最後)は間に合わせろ!』と言い、大突貫になるじゃァないよ・・」
と、言わなくても、顔に書いてある様な素振りを見たくはないものだね。
工程管理はただ単に進んでいる・遅れているの判断で終るモノではない。
管理と名付く以上、判断を行ない指示を出す根拠も必要である。
日程通りに進まないママ、天気のせいとか職人の数が少ないとか、
今日も予定人数が来なかったと言い訳を始める前に
〈明日から倍の人数が来ても構わない〉と云う段取を先に考えて、
一気に協力業者に折衝する下準備も『管理』なのである。
遅れを取り戻すには〈それ迄の工程管理〉を反省しなおす勇気もいる。
現場(所長)の判断の甘さが全体の流れを悪くしていると、事は最悪であ
る。
工程管理は工程表の追跡だけではなくて、遅れていれば回復する手段に用い
て、遅れている事の重大さに気が付いて頂ければ、私の偏見も救われると
思っている。
―――ケツに火が着く前に、サァ頑張ろう―――――
(完了)