建築現場の「言葉の遊び」―――の巻
『建築用語』の中には一般に使用する言葉でも全く違った意味を持った面白い言葉がある。
昔の人は上手く名前を付けたものだと感心する。
専門的に正しい解説だとは言えないにしても、
(そんなものを言うのか・・・)
程度で読み流して頂きたい。
先ずは《食べる物から》
らっきょ 鉄筋の梁筋を加工した時の一種の形。
ドーナツ 鉄筋と型枠の間隔を保つための円形の物。
ようかん レンガをたて長方向に切断したもの。
まんじゅう 鉄骨建て方の時、柱の高さ調整用のモルタルのお団子(だんご)。
キャラメル 鉄筋と床の間隔を保つための2㌢角程度のもの。
コーク クロス貼りの隙間を埋めるもの。ボンドコークの略称。
チーズ 配管類でT字になる部分の部品。
ミルク セメントを溶かしてドロドロにしたもの。
のり 掘削した部分の斜面をいう。
くり 防水層を直角に曲げないためのコーナー。
あさり 鋸(のこぎり)のギザギザの刃の角度。
せり 鉄骨柱の下に打ち込んで垂直を修正する冶具。
まめ コンクリート打設不良で表面に砂利が表れている状況。
れんこん 墨壺の中で回っている糸巻き。
《動 物 か ら》
とら 1.鉄骨が倒れない様に控えのロープの事。
2.トランシット(角度を主に測る測量器具の略)。
3.黄色と黒の縞模様の標識。
ねこ 1.鉄骨胴縁等を取り付け用の受け鉄板。
2.一輪車、ネコ車、手押し車、カート車ともいう。
とんぼ 1.コンクリートを均(なら)す道具。
2.アスファルト防水に金網を取付け用の接続金物。
ノミ 部材(木・石・コンクリート等)に穴をあける刃のある道具。
とび 鉄骨を立てる職人。足代を組立てる人の総称。
からす 1.からす口。墨を入れて書く時の鉛筆代わりのもの。
2.とび職の技量に一歩手前の職人さんを見下した(差別語)
うま 脚が4本で組み立て作業台(通路・足場)にもなる便利な脚立。
アンコウ 竪樋と横樋の飾り桝の総称。
しゃこ ワイヤーロープの先端で簡単に締める為の冶具。
きりん 土留め工事の切梁に使う強力なジャッキ。
モンキー 1.足代に取り付けて軽量な荷揚げのクレーン。
2.ナットを締める冶具。
つる スコップとツルはし。先の尖った土工事用の道具。
犬(走り) 建物際から飛び出たコンクリートの土間。
猫(走り) キャットウォーク。劇場などの天井ウラの細い通路。
《上品でない物から》
ケツワレ 契約工事の途中で止めてしまう事。
ハナたれ タイル面からの白い汚れ(白華現象)を言う。
はなかくし 屋根の母屋材を隠す幅の広い化粧板。
きんかくし 和風トイレの便器。男性用はアサガオ。
キンタマ 下げ振りのおもり。
ふんどし ワイヤーを締め付けずに吊り上げる状態。
ブ ラ 下げ振りの別名。
バ カ ばか棒。所定の寸法に予め作った定規。
なわばり 建物の位置と大きさ(面積)をロープ類で示す事。
たたき 床や石工事の仕上の方法。
盗 み 前もって欠き込みを入れて設計寸法より小さくする事。
殺 し 永久に取り付けたままの状態にする事。
バラシ屋 組み立てた型枠をコンクリート打設後に解体する専門職人。
にんぷ 本職は土工。特に力仕事を行う便利屋さん。人夫。
じょうふ 情婦でなく、色々と雑用を行う準職員。常夫。
ヒモつき 『神の声』を背に威張って割り込んで入ってくる業者。
エンギレ くっついていた部分が隙間を生じて離れてしまう事。
大 恥 くっつく所、隠れるべき所が下地まで丸見えの状態。
《この物語に出ているものから》
躯体工事 型枠・鉄筋・コンクリート工事の総称。
5 K 休暇がない・給料安い・汚い・危険・カッコ悪いの5K。
ゼネコン 建築会社つまり、元請け会社。ゼネラルコンストラクション。
協力業者 実際に現場に出向する会社(下請け・孫請け)。サブコン。
世話役 協力業者が現場に振り当てた責任者、職長。
オーナー 施主、工事発注人。ある時は神様。
足代(あしば) 場当たり的な足場に代わり、足元迄安全(完全)に組み立てるもの。
出面(でずら) 出勤しただけの賃金。当日の出勤者の頭数。
《本音で言えば・・・から》
設計図 建物を創ってみようと言う基準のもの。
施工図 創ってみるには現場で書かないと決まらないもの。
見積書 請負金に合わせて、すぐに変動する不思議なもの。
予算書 直接工事金よりも現場交際費が気になるもの。
安 全 誰が見ても危なくない施設のもの。
精 度 創った後をチェックして、悩むもの。
工 期 終わりの目標のしるしで、相当苦しめられるもの。
検 査 適当に終わりたい所を厳しく追及するもの。
所 長 口先だけで一向に現場で働かないもの(私の事)。