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センダン・3~開花

 私は落語が好きで、それも聞くだけではなく読むことも多い。高校生の頃、興津要編の『古典落語(全6巻)』(講談社文庫)や、落語協会編の『古典落語(全11巻)』(角川文庫)が受験参考書と共に本棚に並んでいた。今年1月に発刊された山本一力著の『落語小説集 芝浜』(小学館文庫)の中に“百年目”があるが、その話に栴檀と南縁草のくだりがあるので紹介しておこう。
 芸者遊びを見つかった大店の番頭にその店の旦那(主人)が優しく話す。
 『五天竺のひとつの南天竺には栴檀という立派な木が植わっている。その周りには南縁草(なんえんそう)という名の汚い草が生えている。高貴な香りを放つ栴檀とはまるで釣り合わない。そう思った者が南縁草をすべて刈り取ってしまった。南縁草が無くなると栴檀も枯れた。汚く見えていた南縁草は実は栴檀にとってかけがえのない相手だった。栴檀は葉に溜まった雨水を垂らし南縁草を潤し、南縁草はそのお返しに養分を栴檀の根に送り込んでいたのだ。
 無駄に見えるものでも実は大切な役割がある。持ちつ持たれつの間柄が上手くいってこそ初めて繁栄という果実が稔る。うちで言えば私が栴檀でお前が南縁草だ。店で言えば今度はお前が栴檀で、手代、小僧が南縁草ということだ。栴檀と南縁草はどちらが欠けても繁栄は無くなる。その間柄の大切さを常に忘れないために、栴檀の檀と南縁草の南を合わせて、檀南(だんなん)と呼んでいた。それがいつしか短く詰められて“旦那”と呼ばれるようになった(諸説あります)。云々』
となってサゲに続く。 
 写真は長池公園の尾根幹線口付近で見られる「センダン(栴檀)」。センダン科センダン属の落葉高木だが、話に出てくる香りの良い“栴檀”は“白檀”のことでこの樹ではない。また上記の“南縁草”が何の草かは調べたがわからなかった。
 落語ついでに、以前、私が創作した落語『ナガバノスミレサイシン』をリンクしておこう。お好きな方でお時間があればお付き合いのほどを。
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ナワシロイチゴ

 バラ科キイチゴ属の「ナワシロイチゴ(苗代苺)」。草本のように思えるが、茎が木質化するので落葉低木に分類されている。花が開くのはこれが精一杯で、先端には多数の雌蕊の柱頭が見える。左側の花は既に終わった花だが、雌蕊の周りに役目を終えた雄蕊が確認できる。果実は7月上旬に熟す
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