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遠藤ミチロウが死んだ。
忘却を未来へ進める原動力とするこの国の民に、
昭和の生霊を蘇らせることで呪いの足枷を掛け、
「忘れるな、忘れるな、オマエらの原罪を、忘れるな」と唱え続けた男。
戦後の欺瞞、ノンポリ金満主義の浅はかさをひたすら歌い上げ、
サブリミナル的に「生きることの真意」を問うた男。
福島で生まれ、山形大学を卒業し、1980年に30歳でThe Starlinデビュー。
高度経済成長によって世界に君臨せよ!とするエスタブリッシュメントな面々に、
葬り去られた観念&イデオロギーの亡霊を徘徊させ、その思考停止を糾弾する。
『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。』は、その最たる名曲であり、
言葉の羅列によって意味が崩壊する現代社会の思考停止状態を高らかに歌い上げている。
旋律といい、ギターのリフといい、この高揚感が戦後の欺瞞そのもので、
「お母さん、血が止まらないのです、お母さん、赤い色は大嫌いです!!」と畳み掛けるラストは、
責任を垂れ流すこの国の全体主義批判の白眉。
…お母さん、雨の信号はいつも横断歩道のわきでパックリ口を開けているあなたの卵巣が
真っ赤に腫れあがった太陽の記憶をゴミ箱から引きずり出しそこから一匹の虫がこそこそ逃げ出そうと
28万5120時間の暗闇をめぐりながら夕餉の食卓に頻繁に出された玉ねぎの味噌汁を頭からかぶりズブ濡れになった
幸福の思い出を今か今かと待ちわびる自閉症の子供の通信欄に「僕のお父さんは公務員です」と一人で書き込む恥ずかしさを
誰かに教えたくて放課後の来るのを待ちきれず教室を飛び出して一目散に家をめざしたのだけれど
もれそうになるオシッコを我慢して教えられた通り緑色に変わったら渡ろうとしていた信号が実は壊れていたんだと
気づいた時にはすでに終わっていたんです…お元気ですか?(遠藤ミチロウ『お母さん、いい加減…』抜粋)
写真は、父方祖父戦中時昇進の賞状。
農家の末っ子は食い扶持を得るため、天皇のためと職業軍人になるしかなかった。
新元号が新しい時代の幕開けと、たわけた事を全体主義的に喧伝してるが、
【包摂による排除】で「天皇」をその「統合」から「象徴」できないような人間は
「国民」から排除するという「外国人には人権なし」の排外主義法体系は、
戦後一貫した日本国家の意志であり、
遠藤ミチロウが糾弾し続けた欺瞞の赤い血は未だ垂れ流しなのです。
#photobybozzo