私、開業医でありまして、関西ですから、朝夕の外来診療の傍ら(関東は朝しか外来診療されないようです)在宅医療にいそしんでおります。開業以来、求められたら、距離で5㎞以内という制限は設けておりますが、要望のあるところ、24時間体制で対応して22年になります。始めたころは在宅医療という制度すらなくて、24時間対応に対する報酬も皆無でした。
徐々に制度が形作られて・・・・私がやって来た方向性を厚生労働省が保険点数の加算という形で認めてきてくれてきたように思っています。
やりがいもあり、感謝もされる素敵な仕事なのですが・・・・・24時間の束縛は・・・やはり一人の人間として・・・無理なんです。
日本全国、各地にスーパーマン、スーパーウーマンがいて、素晴らしい対応をしてくださるのですが・・・・・やはり、普通の人間には継続的にこなしていくのは無理なんです。
私、65歳になって、「こんなブラックな働き方、いつまでもできないな。」と、思うようになりました。
同級生たちが、引退して悠々自適の生活に移行していく中で、24時間束縛されて遊びに行くのもひも付きってのをつらく感じるようになりました。
で、今日のお話です。
実は、昨夜から、「危ない患者さん」がおられました。慢性呼吸不全の末期で、酸素と二酸化炭素の血中濃度が逆転してすでに一か月。一週間ほど前から一層の悪化があり、血液ガス検査すら施行するのをやめました。入院希望も人工呼吸器の希望もないので、検査しても何ら益がないからです。2週間ほど前の血液ガス検査では二酸化炭素の血中濃度が100torrを超えていましたし、酸素濃度は、経鼻で1.25l吸って60とrr程度でした。
昨夜(21日)から意識が落ちて、血圧も低下しておられました。
本日(22日)の朝8時に訪問看護の報告を受け、悪いなりに安定されているので、「先生、山に行っていいよ。」と、ベテラン訪問看護師に言ってもらって出かけたのですが・・・・
出かけた先が吉野山周辺でしたので、携帯電話が通じました。
午前10時45分に亡くなりましたとの報を11時過ぎに受け取りました。
医師の仕事としては、昨日訪問診療していますので、死亡確認せずとも、死亡診断書を書くことは可能です。
医師法第20条ただし書
1.診療中の患者が診察後24時間以内に患者がその病気やその病気に関連した傷病で死亡した場合は、再度診察をしなくても死亡診断書を交付出来る。
また、24時間以上たっている場合でも、再度診察を行い、生前に診察していた病気やその病気に関連した傷病での死亡であると判断出来る場合は死亡診断書を交付することが出来る。
2.診療中の患者が死亡した後、再度診察し、生前に診療していた傷病に関連しする死亡であると判定できない場合には、死体の検案を行う。
この場合、死体に異常があると認められる場合は、警察に届けなければならない。
とありまして、24時間以内に見ていれば、直に死亡確認しなくとも死亡診断書を作成することは可能なのです。しかしまぁ、私はそんなことしたことないですし、周囲の医師でしたことのある方知らないです。
団体での山ツアーの最中でありましたし、ある程度予想されていた最期であり、ご家族にも事前に説明していたので、ツアーが終わって現地に行くことのできる夕方まで、死亡確認を待っていただくことにしました。
ツアーから戻って、死亡診断書を作成後に患家訪問、患者さんの死亡を確認して死亡診断書をお渡ししました。長い付き合いのご家族なので、「これが来ないと、葬儀屋さんに何もできないと言われました。」と小さく愚痴られましたが・・・・大きくは「子のおっさんやから・・・しゃあないなぁ」と、諦念の中、納得していただけたようでした。
今後、こうした、医師はその時はやってこない 看取りが増えると思います。
厚生労働省は、訪問看護師にも死亡診断を許可する方向で動いているようです。
当然だと思います。訪問看護師に権限を委譲しないと、在宅医療なんて成り立たないのです。医師会は強く意識して移譲するべきだと思うのですが・・・
欲張り村の村長さんたちは、既得権を譲る気はなさそうで困っています。
吉野山周囲で遊んだ、今日の裏側でした