おまえさんあたしって女は一度惚れたらとことん惚れるんだよ。
そういう女なんだ。
その代わり一度嫌いになったらとことん嫌いなんだよ。
あたしはさ!おまえさんの声に惚れたんだよ。
最初の男もそうさ。
声に惚れたんだよ。
次の男もそうさ。
声に惚れたんだよ。
おまえさんも声なんだよ。
その声に惚れたんだよ。
最初の男は綺麗な高音の声だったね。
次の男は澄んだ低音だったね。
おまえさんの声は
あたしの心に響くんだよ。
この胸にね。
お願いだ!おまえさんの声をもう一度あたしに聴かせてくれないかい?
その声を聴いてあたしはあの世に行くんだよ。
最後のお願いだよ。
後生だから聴かせておくれよ。
あたしは死ぬ前にその声を聴いてあの世に旅立つと決めたんだよ。
おまえさんに出会えたことはあたしの一生の宝だ。
あたしはもう永くはないんだよ。
最後にせめてあたしに一節聴かせてくれないかい?
あたしのためだけにね。
無理は言わないよ。
ほんの一節だけでいいんだよ。
その声を聴いたらあたしはあの世に行くんだよ。
最後の思い出だ。
さあさあ、やっとくれ!
(あたしが咳き込む)
もう永くはないんだよ。