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旅の友・ポップス編 (399) 『ドンナ・ドンナ』

2018-04-03 14:01:56 | 旅の友・ポップス編

『ドンナ・ドンナ』 ジョーン・バエズ
”Donna Donna” Joan Baez 【YOUTUBEより】


このもの悲しい曲は、アーロン・ツァイトリン作詞、ショロム・セクンダ作曲 (いずれもユダヤ人) により1940年に
ニューヨークで公開されたミュージカル『エスターケ』の劇中歌が原曲となっているようです。
やがて1960年当初のフォーク・ブームにおいてジョーン・バエズが初のアルバム「ジョーン・バエズ」で取り上げたことで
フォーク・ソングの名曲として広く世界に知れわたり、日本でも1965年頃から静かにヒットし始めています。

原曲の歌詞では、ロープで繋がれて荷馬車に乗せられて市場に売られる仔牛と、自由に笑いながら空を飛ぶツバメ
という対比の中に祖国もなく放浪する救われないユダヤ人の運命が暗示され、やがて訪れる第二次大戦のナチスの
ユダヤ人迫害をも予告しているかのようにも思えます。
さらに、市場に運ぶ農夫が哀れな子牛に「なぜおまえは牛に生まれた?なぜツバメに生まれなかったのだ?」と残酷な
言葉を投げかけます。まるで逆らえない抑圧された運命をあざ笑っているかのようです。
この曲はそういった意味で強い社会的メッセージを込めたプロテスト・ソングとなっています。
見方を変えて、「なぜおまえは貧乏な家庭に生まれた?なぜ金持ちに生まれなかったのだ?」と置き換えてみれば
貧富の格差が一段と激しくなった日本の現代社会にも相通じるものがあるように思えてなりません。

タイトルの”Donna Donna”あるいは”Dona Dona”は、牛を追うときの掛け声ともいわれており、またイディッシュ語で
ユダヤ教の神を意味するドナイ(Donaj)の略語ともいわれていますが作詞者の真意は不明のようです。