「呪い」は本当? オリンピックの混乱の歴史
1964年東京五輪の開会式で、聖火リレーの最終ランナーを務めた坂井義則。1964年東京五輪は日本で初めて開催された五輪。1940年も東京で開催される予定だったが、第2次世界大戦が現実味を帯びてきたため、中止を余儀なくされた。(PHOTOGRAPH FROM SANKEI ARCHIVE, GETTY)
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックを受け、延期が決まった2020年東京オリンピック。
五輪がこれほどの大混乱に陥るのは戦後初めてだが、歴史を振り返ればボイコットや参加禁止、火山の噴火など、多くの混乱や危機に見舞われてきた。
ローマからロンドンへ
ローマは1904年、ベルリン、トリノなどを抑えて1908年五輪の開催都市に決まった。ところが、準備開始から2年後にベスビオ山が噴火、麓の街が破壊され、ナポリは都市機能が麻痺した。復興に多額の費用がかかることから、イタリアはローマ五輪の開催を断念した。
それでも、五輪が中止されることはなかった。国際オリンピック委員会(IOC)は開催都市をロンドンに変更。準備期間は10カ月しかなかった。英国オリンピック委員会は残された時間を最大限に活用し、真新しいスタジアムまで建設した。五輪専用の施設がつくられたのはこれが初めてだった。
ヨーロッパが戦争に突入
1914年7月、第1次世界大戦が勃発したとき、ベルリンはすでに1916年五輪の準備を進めていた。新しいスタジアムも建設され、ドイツ皇帝兼プロイセン国王ヴィルヘルム2世の面前で落成式のパレードが行われた。
ヨーロッパの大部分が戦争に突入していたため、当時まだ戦争に加わっていなかった米国など、中立的な地域への変更も検討された。しかし、問題は開催地だけではない。十分な数の選手を集められるかどうかもわからなかった。米ニューヨーク・タイムズ紙は1914年12月、「戦争により、(五輪は)おそらく中止せざるを得ないだろう」と予想した。結局、1916年五輪は中止になった。
1920年、五輪はベルギーのアントワープで再開された。開会式では、平和の象徴としてハトが放たれ、初めて選手宣誓が行われた。その後、五輪は20年にわたって通常通り開催され、1924年には、冬季五輪も始まった。
ナチスに対するボイコットと第2次世界大戦
IOCはベルリンに1936年五輪開催の栄誉を与えた。第1次世界大戦で敗北したドイツが国際社会に復帰したことを象徴するためだった。ところが、アドルフ・ヒトラーが台頭し、ユダヤ人選手の五輪参加を禁止したことで、多くの国が激怒した。そして、1936年五輪をボイコットする動きは米国、英国、フランス、スウェーデンなどへ広がった。
1936年ベルリン五輪の開会式で、ナチスのシンボルが並ぶ満員のスタジアムに到着した聖火。アドルフ・ヒトラーの台頭と反ユダヤ主義を理由に、多くの人がボイコットを求めたが、ベルリン五輪は予定通りに開催された。しかしその後、第2次大戦が勃発し、五輪は10年以上にわたって中断されることになった。
人種差別的なプロパガンダで台無しにされたものの、ベルリン五輪は予定通りに開催された。その後、第2次世界大戦が勃発し、五輪は10年以上にわたって中断されることになった。
日本は1940年、東京で夏季五輪、札幌で冬季五輪を開催する予定になっていた。しかし1937年、日中戦争が勃発して各国がボイコットを示唆、戦費の上昇などもあり、日本は五輪の開催権を返上した。
IOCは再び、フィンランドとドイツを候補に開催地の変更を検討し、最終的にヘルシンキでの開催を決定した。ところが1940年までに、ソビエト連邦がフィンランドに侵攻し、五輪は中止された。世界を巻き込む戦争は1945年まで続き、夏はロンドン、冬はイタリアで開催予定だった1944年五輪も中止を余儀なくされた。
ボイコット
五輪の歴史を通じて、ボイコットする国、参加を禁止される国がたびたび現れている。1964年には、人種隔離政策アパルトヘイトを理由に、南アフリカがオリンピックへの参加を禁止された。1976年には、米国コロラド州の有権者が五輪費用の負担を拒否し、デンバーが開催地を降りている。
しかし、近年で最も有名な出来事は、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議するため、米国が主導した1980年モスクワ五輪のボイコットだ。日本、カナダ、西ドイツなど、66カ国がボイコットに賛同した。そして4年後、1984年ロサンゼルス五輪が開催された際、1980年の報復として、ソ連が14カ国によるボイコットを率いた。
東京と40年の呪い
数十年にわたるボイコットと禁止の歴史を乗り切ったかもしれないが、五輪は呪われていると信じる者もいる。特に、日本で開催される五輪は縁起が悪いようだ。財務相の麻生太郎氏は3月18日、中止になった1940年東京五輪と1980年のモスクワ五輪ボイコットを引き合いに出し、「40年ごとに問題が起きた。呪われたオリンピック」と発言した。
1964年、ついに東京五輪が開催されたが、やはり騒動が起きている。まず、IOCが一部選手の参加を拒否したことで、北朝鮮、中国、インドネシアが五輪そのものをボイコットした。南アフリカがアパルトヘイトを理由に五輪参加を禁止された最初の年でもある。
このように星回りの悪い日本だが、すでに1兆円以上の予算をかけて五輪の準備を進めており、2021年に延期する意向を示している。それまでにはおそらく、40年の呪いは無効になっているだろう。
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