特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

まりも(後編)

2024-12-02 06:43:24 | 腐乱死体
「顔は見れないのですか?」
「ご覧になりたいですか?」
「ええ、できたら・・・」
「個人的には、あまりお勧めできませんが・・・」
「状態がよくないと言うことですか?」
「ええ、私の臭いでお分かりになりませんか?」
「確かに・・・」
「ただ、私が責任を持てるものでもありませんので、ご家族で決めて下さい」
「どうしようかなぁ・・・」


すると、親戚らしき中年女性が口を挟んできた。
「最期のお別れなんだから、顔ぐらい見ておきなさいよ!私も一緒に見てあげるから!」
躊躇う娘を無視して、その中年女性は、私に柩の蓋を取るように指示してきた。


「本当に開けてよろしいんですね?」
と、私は念を押した。


「構いませんから、早く遺体を見せて下さいよ!」と、中年女性は不機嫌そうに返事。


「では、早速!」と、私は事務的にテープを剥がし一気に柩の蓋を取った。
すると、中に潜んでいた猛烈な悪臭が勢いよく溢れた。
遺族は驚嘆の声をあげながら、柩から離れていった。


私は、続けて納体袋のファスナーに手をかけて言った。
「これから、お顔をご覧いただきますので、どうぞお近くに」


しかし、誰も近くに寄って来なかった。
言い出しっぺの中年女性も、顔をひきつらせたまま近寄ってこない。


「あのぉ、お顔をご覧になりたいのでは?」
私は、中年女性に目を向けて、柩に近づくよう促した。
中年女性は、不満そうに近づいてきたので、私は納体袋のファスナーを少し開けた。


緑色の皮膚が少しだけ見えた。
ハンカチで鼻口をおさえながら中年女性は尋ねてきた。


「これは何です?」
「故人様の身体です」
「え?身体?」
「そうです、身体です」
「・・・身体のどこ?」
「おそらく、頭部のどこかのはずですが・・・全部開けてみますか?」
「・・・」
「全部開けてみますか!?」
「イ・イヤ、結構です!結構です!は・早く蓋を閉めて下さい!」


中年女性は、後退りしながら、「見ない方がいい!見ない方がいい!」と、遠巻きに眺めていた遺族に叫んだ。


その様子を離れて見ていた娘さんは泣き始めてしまった。
中年女性はハイテンションで興奮するし、娘さんは悲しそうに泣きだすし、私はトホホ気分になった。


私は、娘さんが持っていた故人愛用のタバコを柩に入れて、急いで蓋をした。
そして、再び厳重にテーピング。


人は、死んで腐ってしまえば、誰からも嫌悪される汚物になるだけか・・・毬藻人間は、人のはかなさを訴えかけていた。
更に、その処理を生業としている自分に疑問を持たずにはいられなかった。


私は悩んだ。
着ているスーツを捨てるべきかクリーニングに出すべきか。
また、いつまでもこんなことをやっていていいのだろうか・・・。


迷いの中、毬藻人間と別れたのであった。
悪臭をプンプンさせながら。



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2006-10-09 17:14:24
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もったいない

2024-11-28 04:56:30 | 腐乱死体
小さい頃の私は、モノが捨てられない子供だった。
何を見ても、いつか必要な時が来るような気がしていた。
そんな訳だから、私の机の引き出しや収納箱には不要な物がたくさん納まっていた。


何事にも「もったいない精神」は大事だと思うが、度が過ぎると問題がでる。


ある腐乱死体現場。
年配の女性が依頼者で、依頼者と共に現場に入った。


「かなり臭いですよ」
と、申し訳なさそうに言いながら、女性は玄関ドアを開けた。
そして、あちこちの窓を急いで開けて回った。
少しでも悪臭を緩和させようと、私に気を使ってくれたみたいだった。


「大丈夫ですよ、慣れてますから」
と、言いながら私は汚染部屋に入った。
汚染は、ベッドだけに見えた。
やはり、他の部屋に増して濃い腐乱臭がこもり、ハエが飛んでウジが這っていた。


「ヒドイでしょ?」
「スイマセンねぇ」
と、女性は私に優しい声を掛けてくれた。
「大丈夫ですよ、慣れてますから」
と応えて部屋の観察に入った。


汚染度は深刻な状態だった。
一見、ベッド以外に汚染されたものはないように見えた。
ただ、腐敗液がどこまで染み込んでいるかを確かめておく必要があった。


まず、私は敷布団をめくった。OUT!
更に、その下のマットをめくった。OUT!
そして、ベットマットを動かした。OUT!
ベッドの底板まで腐敗液は下りていた。
まぁ、ここまでは仕方がない。よくあることだ。


腐敗液がベッドを通り抜けて畳に到達していると、作業も費用も全然変わってくる。
私は、「止まっていてくれよ!」と念じながらベットを横にずらした。SAFE!
幸い、床の畳には汚染痕はなかった。
腐敗液は、ベットの底板でかろうじて止まっていた。


腐敗液は少しでも見逃す訳にはいかないもの。
悪臭はもちろん、ウジの温床になる危険性があるから、私は念入りに畳を見た。
とりあえずは、汚染ベッド一式を撤去すれば急場は凌げそうだった。


私がそんなことをしていると、台所の方から女性の独り言が聞こえてきた。
「お茶くらい出した方がいいわねぇ」
「何かないかしら」
「あら牛乳、賞味期限は・・・切れちゃってるわ」
「もったいない」
「あとは・・・このジュースはどうかしら」
「○○(故人の名前)の飲みかけか・・・賞味期限は・・・あら、これも過ぎちゃってるわ」
「もったいない」
「他には・・・何もないわねぇ」
「一昨日までだから、ま、大丈夫でしょ」


断片的に聞こえる言葉から意味を推測すると、どうも私に飲物でもだしてくれようとしているらしかった。
そして、見つけたのが賞味期限が切れた、故人飲みかけのジュース。


冷蔵庫の中に保存してあったとは言え、腐乱現場にある物を口にするのは抵抗がある。
しかも、故人が生前に飲みかけていたうえ、賞味期限が切れてるものなんて。
私は、イヤ~な予感がして不安になってきた。


見積を終えた私は、女性と今後のことを打ち合わせるため、台所の椅子に腰を掛けた。
全部の窓が開いているとは言っても、腐敗臭はバッチリ臭っていた。
話し始める前に女性は、「どうぞ」と言ってジュースを出してくれた。


「このジュースは・・・」
さすがに、このジュースには「慣れているから大丈夫」とは思えなかった。
私の脳は、非常事態宣言を発令。
女性は、自分の分は用意していなく、私は増々警戒感を募らせた。


「せっかく出してくれた物に口をつけないなんて、女性は気分を悪くしないだろうか」
「ここで飲むのが礼儀か?」
「俺って失礼なヤツ?」


自分の中に葛藤があったが、どうしてもコップに手を出す気にはなれなかった。
打ち合わせの最中も、女性はジュースを飲むように促してきた。


私が飲まないのは、明らかに不自然だった。
「仕方ない・・・口をつけるか・・・」
私が諦めかけた時、一匹のハエが飛んで来てコップにとまった。
私と女性は、ハエを見た後にお互いの顔を見合わせた。
三者、しばし沈黙。


「嫌なハエだこと、すぐ新しいのを入れますから」
「すぐに失礼しますから、もう結構ですよ」


私は、ハエに助けられて、その場を切り抜けることができた。


物があふれている現在、まだまだ使える物がどんどん捨てられていく。
機能・性能より外見・デザイン重視か。
これは人間にも当てはまる。
人格や性格は二の次・三の次。


こんな時代には、この女性のような「もったいない精神」を持つ人が貴重かもしれない。


コップにとまったハエが、両手を合わせて「いただきま~す」する姿が印象的な出来事だった。



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2006-10-05 09:23:41
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探し物(後編)

2024-08-28 11:23:30 | 腐乱死体
何日か後、依頼者の女性と現場で待ち合わせた。
女性が、現場となった故人(母親)の家を訪れるのは初めてとのこと。
女性には敷居が高過ぎて、今までずっと来ることができなかったらしい。
女性と故人は、それだけ疎遠な関係だった。

初めて顔を合わせた我々だったが、初対面のよそよそしさはなかった。
共に戦う同士みたいな感覚。

骨を見つけられなかったことをあらためて詫び、毛髪を取っておいたことを初めて知らせた。
私が好意でやったことでも、女性の気分を害してしまうことも有り得るので、慎重に話した。

幸いなことに、女性は喜んでくれた。
そして、また泣き始めた。
白い綿に包まれた毛髪を握り締めて、絞り出すような声で「お母さん、お母さん・・・」と。

女性には、それなりの過去があった。
親の言うことにも耳をかさず、若い頃には放蕩の限りを尽くしたらしい。
ここでは明かせないが、女性の身体的特徴もそれを物語っていた。
家族にも随分と迷惑をかけたであろうことは容易に想像できた。

そのせいで、親族からもやっかい者扱いされ、ずっと疎遠にされたまま。
身内の中で完全に孤立しており、葬式にも参列させてもらえなかったそう。

女性が本当に欲しかった物は、遺骨なんかじゃなく母親への謝罪と親孝行をするチャンスだったように思えた。
この半生、それを探し続けて生きてきたのに、ずっと見つけることができなかった。

私は、例によって勝手な自論を展開した。

「お母さんは○○さん(女性の名前)のことをとっくに赦してくれていると思いますよ」
「だから、腐乱してまでも○○さんが来るのを待っていてくれたんじゃないですか?」
「お母さんが腐ってくれたお陰で、他の親族に見つからずに来ることができた訳ですよね」
「きっとお母さんは、○○さんに重荷を降ろすチャンスをくれたんですよ」
「○○さんの将来を大事に想ってね」

失礼な暴言なのか、いいアドバイスなのか分からないようなコメントになったが、女性は泣きながら頷いて聞いていた。

「親孝行、したい時に親はなし」
「親の心、子知らず」

生前は大したことはできなくても、とりあえずは親より後に死ぬことが大事な親孝行だと思う。


トラックバック 2006-08-27 12:04:46投稿分より

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探し物(中編)

2024-08-27 15:00:03 | 腐乱死体
依頼者の女性は、母親の遺骨探索を私に頼んだことを他の親族には知られたくないようだった。

どんな事情があるのか分からなかったけど、他の親族の手前、何かと神経を使う仕事になった。

作業は、覚悟していた通り過酷なものとなった。
「ビーフシチュー」を彷彿とさせるレベル。
腐敗粘土をすくっては解して骨を探す。
ひたすらそれの繰り返し。
腐敗粘土は軟らかいモノから硬いモノまである。それらを一切合切すくっては中を探ったのである。

腐敗粘土をほぐすのは手作業。
小骨を探す細かい作業に道具は使えない。
自分の視覚と手の感覚だけが頼りだった。

もちろん、便器の中にも手を突っ込んだ。
「ウ○コor腐敗粘土、どっちがマシかなぁ」等とくだらないことを考えながら(過酷な現場には、くだらない思考が必要)。
そんな私の手(もちろん手袋装着)は汚物でヒドイことになっていた。
例によって食べ物に例えてしまうが、糠床を混ぜた後の手みたいに。

「俺って、よくこんなことができるよなぁ」
自分に呆れるような、自分が惨めなような、自分を褒めたいような、何とも言い難い気分だった。
私は、プレッシャーと疲れを感じていた。
特掃作業の結果として骨を見つけた経験はあるものの、始めから骨を探すことが目的の作業には独特の重圧を感じていた。
そして、私の念いとは裏腹に、いつまでやっても骨らしきモノは見つからない・・・残りの汚物はだんだん少なくなっていく・・・。
焦りからか、ウジが何度も骨に見えてしまい悔しい思いもした(ここでもウジにやられっぱなし)。

途中から、私は毛髪を取り避けた。
毛髪なら汚物の中にたくさんある。
「骨がでてこなかった場合の代替物にできるかも」と考えたのだった。

結局、残念ながら、最後まで骨がでてくることはなかった。
私が見逃した可能性も否定しきれないけど、「やれるだけのことはやった」と自分を納得させた。
私は集めた毛髪を洗剤で丁寧に洗った。
脂の悪臭がなかなか落ちなくて、何度も洗い直した。

私は女性に電話をして、先に骨が見つからなかったことを報告した。
そして、確認のため近いうちに現場を見に来てほしい旨も。
女性は、労いの言葉をかけてくれながらも、落胆していた。
私は申し訳ない気持ちになったが、「仕事の成果は約束していないから・・・」と、内心で言い訳をして自分をごまかした。

正直、この仕事はこれでおしまいにしたかった。
しかし、女性と話しているうちに「他に役に立てそうなことがあれば言って下さい」と話していた。
女性に泣かれると弱い・・・。

つづく


トラックバック 2006-08-26 08:53:24投稿分より


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探し物(前編)

2024-08-24 06:49:58 | 腐乱死体
特掃現場では、何らかの探し物を依頼されることが多い。
私は片付屋・始末屋であっても探し屋ではないのだが、依頼者は他に頼める人がいないから私に頼んでくる。

「自分で探せばいいのに」と思うのは腐乱死体現場を知らない第三者。
故人の身内とはいえ、一般の人には腐乱現場での探し物などとてもできない。
視覚と嗅覚が瞬時やられてしまい、ほとんどの人はわずかな時間でも現場に滞まることはできない。

依頼品で多いのは預金通帳・印鑑・権利書・株券・保険証券・年金手帳・貴金属、やはり金目のモノである。
残された人は故人の死を想ってばかりはいられない。
死後の後始末をきれいに済ませる、社会的責任がある。
特に、腐乱現場・自殺現場の始末には重い責任がのしかかってくる。
それには、まずはお金が必要ということ。

たまに、変わった探し物を頼まれることがある。
遺骨もその一つ。

「骨を探してほしい」
中年女性からそんな依頼が入った。
孤独死・腐乱、亡くなったのは女性の母親らしい。

警察が遺体を持って行った後も、現場に小骨が残っていることはたまにある。
しかし、まだ骨が残っている可能性があることを素人の女性が知っていることが不思議だった。

「現場には行けないので、勝手に入っていい」とのこと。
電話口で思案していても仕方がない。
とにかく現場へ向かった。

現場はトイレ、床一面に腐敗粘土と腐敗液が広がり、厚い層を作っていた。
例によって「こりゃヒドイなぁ」と呟いた私。
乾燥しかかった腐敗粘土は、便器の中までたまっており、死後かなりの日数が経っていることが読み取れた。

「これで骨が探せるかなぁ」
「ヤバイ作業になりそうだなぁ」
汚物の量にいきなり自信喪失、腰が引けてきた。

現場を確認してから女性に電話。
トラブルを避けるため、依頼作業の成果は約束できないことを先に伝えた。
あと、作業が過酷を極めるであろうことも。

骨が残っている可能性があることは警察から聞いたらしい。
現場を見た私は納得できた。
「あれじゃぁ骨を拾い残しても仕方ないな」
逆に、「よく遺体を回収して行ったな」と警察に感心したくらい。

正直、この仕事はやりたくなかった。
しかし、女性と話しているうちに引き受ける方向に気持ちが動いていった。
女性に泣かれると弱い・・・。

つづく



トラックバック 2006-08-25 08:23:20投稿分より



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ブラックホール

2024-07-06 10:58:52 | 腐乱死体
便所の話。
そこは「お手洗い」とか「トイレ」という呼称は似合わない、いかにも「便所!」という感じの現場だった。
発見が早かったためか、汚染は軽いもの済んでいた。
悪臭も腐乱臭なのか便所臭なのか分からないくらい。
それよりも、私はその便所の形態に驚いた!
水洗式ではなく、いわゆるボットン便所。
しかも、私が知るボットン便所よりはるかにハイグレードで古風なモノだった。


ほとんどの人が「ん?どんな便所だろう?」と、その便所の形態を理解できないと思うので、詳しく説明しておこう。
地面に深さ1.5~2.0m、直径1.5~2.0mくらいの穴を掘る。
その上に床板を敷き、屋根と囲いをつける。
床板に直径20~30cmの穴を開ける。
床板に和式便器をくっつけて完成。
あまりにシンプル過ぎて、これ以上詳しく説明できない。

大きな口を開けた和式便器を覗き込んでみると、下は真っ暗のブラックホール状態。
深くて大きな穴が開いているらしかったけど、真っ暗で何も見えない。
それは、悪臭を忘れるくらいの不気味さがあった。
そして、小心者の私には、薄くて古ぼけた床板に乗る勇気はなかった。
床板には悪いけど、その風貌からは強度を信用する訳にはいかなかった。
信用性が乏しいこの床に乗るということは、一種のロシアンルーレットみたいなもの。
万が一にも「バキッ!」といってしまったら、アウトーッ!
「故人はいつもこの床板に乗って用を足していたのか・・・勇気あるなぁ」と感心してしまった。

しかし、シンプル便所と故人の勇気に感心してばかりもいられない。
これを何とかしなきゃならないのが私の仕事。
トイレや風呂で死ぬ人も少なくないので水回りの始末も慣れてはいたが、ここまでシンプルな便所は見たことがなかった私。
「汚い」というより「怖い」という気持ちの方が大きかった。
掃除するより解体した方が早いと判断して、依頼者に相談。

汚染されているのは床板の一部と便器が少し。
もう誰も使わない便所なので解体することで話はまとまり、すぐさま作業にとりかかった。
どうしてもブラックホールへの恐怖心が抜けない私は、恐る恐る床板の隙間にバールを差し込んだ。
驚いたことに、床板の一枚一枚は固定されている訳ではなく、細い梁にポンとのせられているだけだった。
「えッ?こんな簡単なもんだったの?」
おかげで、便器も床板も簡単に取り外せて作業的には楽だった。

そして、床板を外すと底の穴が露になった。
「これが肥溜というヤツか!」
ずっと以前から言葉では知っていた肥溜、その本物を生まれて初めて見た瞬間だった。
その光景にはちょっとした衝撃を受けた。
そして、妙に感心したというか感銘を受けたというか・・・人が生きることの凄さのようなものを感じた。
肥溜に、生きるエネルギーみたいなものを感じる私は変?・・・やっぱ変だろうな(苦笑)。
そしてその中ではウジが気持ちよさそうに泳ぎ、ハエが気持ちよさそうに飛んでいた。
彼らは、いつも私の行く先々に先回りする賢い連中だ(笑)。

そして、肥溜の臭いは鼻にツンとくる刺激臭で、「アンモニアの影響か?糞尿が熟成されるとこんな臭いになるのか!」と、またまた感心してしまった。

ちょっと余談。
下水道が完備されていな地域では、行政による糞尿回収サービスが行われている。
たまに、その車を見かけることがあり、車輌後部に表記してある積載物欄に「糞尿」と書いてあるのが印象的。当然、それに従事する人もいる。
子供の頃の風説に、その仕事に従事する人のことを言ったものがあった。
「身体にウ○コの臭いが染みついていて、風呂に入ったくらいでは臭いは落ちない」というもの。
実際にその仕事に従事する人と接したことがないのでハッキリしたことは分からないけど、
多分それはガセ。
濃い!腐乱臭が着いた私でも、ユニフォームを着替えて風呂に入れば完全に臭いは落ちるから。
変な偏見は持たないで、そんなことを言っている子供達がいたらキチンと否定しておいてね(笑)。

私を含めて、現代の男どもは軟弱になっているような気がする。
歳のせいもあるのかもしれないけど、最近の若者は、外見からは性の違いが分かりにくくなってきているような気もする。
最近の家庭は、ほとんどが水洗・洋式。そして、小でも便座に座る男が増えているらしい。
筋肉に負担が大きい和式便所にまたがって、心もとない床板に勇気を持って身体をあずけていた故人は、この有り様を憂いているかもしれない(完全な想像)。
男として、もっと強くなりたいものだ。

しっかし、便所ネタでここまで語れる私ってウ○コ臭い・・・もとい、ウサン臭いヤツかもね。


トラックバック 2006/08/02 11:10:47投稿分より
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液体人間

2024-06-11 05:32:19 | 腐乱死体
  • 今回の表題を見て、これ以降にどんな文章が続いていくのかは容易に想像できると思う。
食事中の方、そしてこれから食事をしようと思っている方は、一旦このページを閉じて食事を済ませ、一息ついてからあらためて読んだ方がいいかもしれない・・・イヤ、読まない方がいかもしれない(うまい誘い方でしょ?)
読者に避難するチャンスを与えるために、少し行間を空けておこう↓



期待通り?今回は腐敗液のお話。
人間が腐乱していく過程で液状のなることはご存知の通り(残念ながら、知ってしまったね)(6月30日掲載「お菓子な奴」その他参照)。

この腐敗液が放つ悪臭にはモノ凄いパワーがある(6月15日掲載「臭いなぁ」その他参照)。そのパンチは鼻にくるのは当然、それ以上に腹をえぐってくる。
一般の人には「臭い」ということは分かっても、「腐乱死体の臭い」ということは分からないらしい。ま、当然と言えば当然か(笑)。
私は、かすかな臭いでも、ただの悪臭と腐乱死体臭とを区別することができる(自慢にもならないけど)。
たま~に、街を歩いていると、それと似た臭いが漂ってきて「ん!?」と思うこともあるが(結構怖いでしょ)、仮に自分で腐乱死体でも発見しようものならやっかいなことに巻き込まれる可能性が高いので、それ以上の深追いはしないことにしている。
冷たいかもしれないけど、発見したとしても既に手遅れなのは確実だしね。

腐敗液の原料は大きく分けると脂と血肉の二つに分かれる。
脂は黄色がかったもので、濁ったオリーブオイルみたいな感じ。
時間経過とともに、色が濃くなり粘度が増してくる。
血肉は赤茶色で、チョコレートに少し赤味を加えてみたいな感じ。
時間経過とともに、黒ずんで固くなってくる。
フローリング床等で薄く広がって乾燥した場合は、薄く伸ばした飴のようにパリパリになって剥がれる。
また、それが厚い場合は、コーヒーの出し殻に脂を染み込ませ粘性を足したような感じになって残っている。
余談だが、どうも私は、食べ物に例えるのが好きみたいだ(最近、自覚)。
食は生に直結したものであり、死と対極にあるものだからかもしれない。

故人の死んだ場所で、この腐敗液痕の態様も異なる。

畳やカーペット等、浸透するもの上だと当然染み込む。
深刻なケースだと、畳を通り抜け、床板から梁まで汚染されている。
ここまでいくとリフォームも大掛かりになり、アパート・マンション等の集合住宅の場合は大変なことになる。
大掛かりでも梁で済めばまだ何とかなるが、基礎コンクリート部分まで汚染されていると、もうお手上げ。
さすがに、建築基準法に違反した改装はできないので。

フローリングやビニールクロス等、浸透しないものの上だと当然溜まる。
「オエッ!」ときやすいのはこっちの方。
何故なら、液体になった人間を拭き取らなければならないから。
しかし、拭き取りで済めばまだマシな方。
汲み出し、吸い取りレベルまでいくと、経験を積んでいてもかなりツライものがある。
こういう現場では、脳の思考を停止させ、「この液体は元々人間だった」という現実を完全に消去しないと作業ができない。
強引に自分の感覚をコントロールし、液体を単なるモノとして捉える。
しかし!ちょっとでも油断すると「液体=人体」という事実が頭をよぎる!
すると、たちどころに「オエーッ!!」とくるわけである。

ちなみに、どっちがいいかと言われると難しい(普通はどっちもイヤーッ!)
浸透性のものだと清掃作業は楽な分、ゴミ処分が大変。
不浸透性のものだと清掃作業が大変な分、ゴミ処分は楽。
どっちもどっちだし、「どっちがいい?」なんてバカな質問をし合うのは仲間内だけ。

特に、気温の高い夏は人間が液体になりやすい。
チョコレートやアイスクリームと同じように・・・おっと、また食べ物に例えてしまった。
この季節は、ただでさえ食欲が減退しやすいのに、このブログでもっと食欲を落としてしまったら申し訳ない。


我々の肉体は放っておくと液になり、そして消えていく。
髪と骨と爪と、思い出だけを残して。
そしてまた、思い出も時間とともに消える。
人生は夢幻なり(しんみり)。



トラックバック 2006/07/11 08:19:03投稿分より

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金魚すくい

2024-06-03 05:53:42 | 腐乱死体
腐乱現場でやる仕事は色々ある。
除菌消臭から家一軒丸ごとの解体処分まで、依頼される内容な多様である。
その中でも最も多いのが、家財道具・生活用品の全て一式を撤去し除菌消臭する作業。
ついでに内装工事まで依頼されることも多い。撤去する中身の主役は、もちろん腐乱死体に汚染されたモノである。


今回も、その様な依頼だった。
独り暮らしの故人は普段から病気がちで、一人で家にこもっていることが多かったという。

フローロングのリビングで倒れ、そのまま腐ってしまっていた。
汚染家財をはじめ、部屋にあるものは全て回収撤去した。作業中は作業に集中して、黙々とやることが多い。ほとんどの物を撤収してから、ふと気がついた。
リビングには水槽が3つあり、中には色違いの金魚が数匹づつ泳いでいる。

何日も前から(故人が死んでから)、餌も与えられてなかっただろうし、電気が止められたため酸素を送る機械も停止していたはず。
なのに、一匹も死なずに、全員(全匹?)生きていたのである。ちょっと驚いた。


勝手に想像すると、独り暮らしで病弱な故人にとっては、犬猫を飼うのは負担が多き過ぎる。金魚だったら、肉体的負担もないし、水槽はインテリア的にもお洒落だし、水の中を泳ぐ魚を見ると気分が癒されたのではないかと思う。


しかし、この金魚達。
自分達を可愛がってくれていた人が目前で倒れ死に、腐っていく様子が水槽の中から見えていただろうか(位置関係で言うと見えていたはず)。
仮に、金魚にも感情・思考力があると仮想してみようか。
彼らは飼主が死んで腐っていく様を見ていた訳である。しかも、腐乱していく様子が目の前で見えてしまっていては辛い!
自分達を愛してくれた人を失って、悲しくて寂しかったことだろう。

しかし、彼らは、飼主の死を悲嘆しているばかりもいられない。
何故なら、餌を与えてくれる人もいなくなり、おまけに酸素供給機もストップ!「死」は他人事ではなく、自分達もその直前の状況に置かれてしまったからである。

「この状態で、自分達はいつまで生きられるのだろうか・・・」

と不安はつのるばかり。しかし、一向に誰かが来る様子もない。
どこから現れたのか、倒れたままの飼主にはウジがたかり始め、こともあろうに飼主の身体を食べ始めてしまった。
飼主にたかったウジ達は丸々と肥えてハエになっていく。愛する飼主が餌にされて(悲)。

その間、飼主の身体はバンバンに膨らんだかと思うと、今度は液体を流しながら溶けだした。
ハエがまたウジを産み、ウジがまたハエになり、みるみるうちに増殖していく。
一方の自分達は、だんだんと息苦しくなり、空腹感も襲ってきはじめた。
極限状態に置かれた金魚は、何のなす術もなく、ただただ助けが来るのを待つしかなかった。助けが来るのが先か、自分達が死ぬのが先か・・・ノイローゼ寸前。


何日もして、やっと誰かが来た。
ずかずかと入り込んで、なにやら騒いでいる。そのうち、飼主の身体は運び去られていき、腐敗痕だけが残された。

「やっと助けが来た!これで助かる!」

と喜んだのもつかの間、誰も、自分達に気づいてくれないまま、いや、気づいても気づかないフリをしたまま居なくなってしまったのである。

その後、何度かは騒々しく人の出入りがあったが、結局、誰も自分達のことを気に掛けてくれる人はいなく、人間という生き物は冷酷だということが初めて分かった金魚達であった。
飼主があまりに優しく愛情深かったため、金魚達は、全ての人間は愛情深く優しいものだと大きな誤解をしていたのである。
人間が冷たい生き物であることを知ってしまった金魚達は、もう生きる望みを失った。
あとは、酸欠死か餓死かの違いがあるだけで、黙って死を待つしかない金魚達。


そこに現れたのが、彼等の救世主?特掃隊長!(自分で書いてて恥ずかしい)

私は、最後に残った水槽を覗いてみて、金魚が生きていること驚きながら困惑した。
ゴミとして捨てる訳にもいかないし、そのまま置いていくと依頼者との約束を破ることになる。

三つの水槽はそれなりの大きさで、それなりの器具がついている。
とても、そのまま運んで行けるようなものでもなく、思案した。
当然、結論は「救う」しかない。それよりも、「どうやって救うか」が要だった。
とりあえず、金魚達を多少の水と一緒にビニール袋に入れて、それを運転席に乗せて車を走らせた。ここまできて、酸欠とかで死なせたらもともこいうもない。とにかく、急いで走った。

目的地は、とある公園の池。人目を避けるように、金魚達を池に放してやった。
この私の行為は、自己満足に値するものだったが、公共の池に勝手に魚を放すことは犯罪行為になるんだろうか?どちらにしろ、その時は調べているヒマはなかったけど。


縁日の露店によくある「金魚すくい」。
私は、子供の頃からド下手なもんで、いつの頃からかチャレンジさえもしなくなった。
でも、今回の金魚救いは上手にできた。



善い行いをすると気持ちがいいもんだ。
晩酌もいつもより美味く、ツマミの刺身もうまかった!


トラックバック 2006/07/04 08:19:53投稿分より


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2024-06-02 05:24:20 | 腐乱死体
人は必ず誰かの子であり、親がいる。

また、とある腐乱現場。亡くなったのは独居の中年男性。死後、かなりの時間が経過しているようだった。例によって、遺体は警察が持って言った後で、腐乱痕と異臭が残されていた。
もちろん、私とは旧来の喧嘩友達であるハエ君とウジちゃん達もたくさん集まっていてくれた(笑)。


遺族は、故人の両親と故人の姉妹らしき二人の4名。見積時も作業時も4人とも現場に来た。両親はもうかなりの年配で

「おじいさん、おばあさん」

という感じ。
姉妹達(中年女性)は見積時も作業時も玄関から中に入ることはなく、ハンカチでずっと鼻口を押さえ、嫌悪感丸出しの表情で、私の作業を遠めに眺めていた。

それは、どう見ても、

「最初から来たくなかった!」

という感じ。
明らかに、現場に居たくないという雰囲気をひしひしと感じ、気のせいか、やり場のない不満を私に向けているような威圧感を感じた。
そんな雰囲気じゃ、こっちこそいい気分がしないので、

「そんなに居たくないなら、立ち会ってもらう必要はないんだけどなぁ」

と思いながら、その一家の会話を聞いていると、両親(特に父親)が強制的に姉妹達も現場に来させたみたいな様子が見受けられた。
父親(おじいさん)からは、

「兄弟の死の実態を、身内としてシッカリ見て置け!現実から逃げるな!後始末は我家の責任なんだ!」

と言わんばかりのガンコ親父的な雰囲気を感じた。



当人の父親と母親は、私の作業の邪魔にならないように、部屋の中に入って私の作業をずっと見ていた。臭いし、ホコリっぽいし、何より不衛生なので、

「外で待っていてもいいですよ」

と声を掛けたが、

「大丈夫ですから」

と言って外に出ようとしない。
何事においても浅はかな考えが第一にくる私は、

「貴重品がでてくるかもしれないから、チェックのために居るのかなぁ」

と疑心暗鬼になりながら黙々と作業を進めた。


すると、いつも間にか父親は、目を閉じ合掌してなにやら経文のようなものを唱え始めた。
てっきり

「亡くなった息子の冥福を祈ってるんだろう」

と思った。
しかし、違った。
父親は、明らかに私に向かって拝んでいたのである。作業であちこちと動いているうちに、父親が常に私の居る方へ向きを変えながら合掌・読経し続けていることに途中で気が付いたのである。
一体、何故?
ひとしきりの読経が終わると、父親は

「この作業にこんな若い人が来るとは思っていなかった。貴方が何故この仕事をしているかは分からないが、社会から嫌な思い受けることも少なくないでしょう。」

と私に言い、傍の妻には、私のことを指して

「死んで極楽に行けるのは、この人のような人間なんだよ。」

と言った。


妻は

「・・・そんなこと言ったら失礼よ!」

と返した後、私に

「縁起でもないことを言ってスイマセン・・・。」

と謝罪。


それでも父親は、その類の話をやめず、私への労い・感謝の気持ちと、親としての無責任さを恥じるような話を続けた。
ストレートな言葉から、その謙虚で誠実な人柄と責任感の強さがちゃんと私に伝わった。


この両親は、自分の子供がこんなこと(腐乱死体)になって色々な人に迷惑を掛けてしまっていることを重く受け止め、親として、なすべき責任を少しでもまっとうしようとしているのだった。だからこそ、悪臭漂うおぞましい現場に一緒に入っていたのである。
これには、逆に私の方が敬服。

息子を亡くした悲しみを抑えて、親として責任をとることを第一に考えるとは・・・こんな責任感の強い人にはなかなか出会えないものである。
片や、姉妹達は相変わらず嫌悪感丸出しで、玄関外で仏頂面(そのギャップに笑)。

惨めな気持ちになりやすいこの仕事に、強力なカンフル剤を打たれたようで、ありがたかった!嬉しかった!

ただし、人から拝まれるなんてめっそうもない!さすがに、それには恐縮しまくった!
ただの仕事として割り切るところは割り切って、時にはふざけた邪心を持ちながらやっている愚か者の私をそこまで高評してくれるなんて。

しつこく書いているように、一般には嫌悪されるこの仕事・・・父親の言葉に涙が零れ落ちて上を向けない私だった。
床の腐敗液を拭きながらうつむいたままの私に、

「どうしました?大丈夫ですか?」

と母親が声を掛けてくれた。
父親の言葉が心に沁みて泣けていたんだけど、

「ちょっと薬剤が目に染みちゃいまして・・・」

とごまかす私だった。



「親」と言えば・・・
6月6日掲載の「金がない」で保留になっていたその後の結末を追記しておこう。
代金は、故人の父親が約束通り支払ってくれた。そして、後日、丁寧な礼状と贈答品が送られてきた。

自分のケツを他人に拭かせるような親が目に付く昨今、まだまだちゃんとした親も多く居ることを気づかされ、少しホッとした。
同時に、

「結果オーライ」

と言ってしまえばそれまでだが、この仕事は代金未収のリスクを背負ってでも施行した判断は正しかった(良かった)と思った。



いくつになっても親は親、子は子。
親のある人、子を持つ人。親には孝行し、子には愛情をタップリと注ごう。



トラックバック 2006/07/03 10:00:30投稿分より

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ハグ

2024-05-22 05:50:58 | 腐乱死体
ある不動産会社から依頼が来た。過去のその不動産屋:担当者からの依頼で仕事をやったことがあり、お互い全く知らない間柄でもなかった。

現場は少し古いマンション。近隣の住人が

「異臭がする」

と言ってきたらしい。不動産業も長年やっていれば、住民が「異臭がする」と言ってくれば腐乱死体かゴミ屋敷かどちらかしかないと判断する。あとは、せいぜい排水溝の問題くらいである。

今回は、腐乱死体だと判断したらしく、

「ドアを開錠するので立ち会ってほしい」

という依頼だった。


現場に行ってみると、やはり腐乱死体の異臭が漂っていた。異臭の原因は腐乱死体に間違いない!
いつも通り手袋をして、ドアを開けるため鍵を預かった。

手袋を着けている間、一応、ドア回りを見回したら、ドアの淵が妙に湿っていて、よく見ると隙間にかすかにウジの姿が見えた。


「遺体は玄関ドアから近いところにあるな」

と内心警戒しながら、何となくイヤーな予感がしたので、

「第三者が最初に開錠して、後々に法的な問題が発生したらマズイから」

と、不動産屋に鍵を返して、不動産屋にドアを開けてもらうことにした。

「あ、そうですかぁ・・・」

と言いながら、少し嫌そうにしながら不動産屋は鍵を受け取った。不動産屋が嫌そうにしたのは、私だけが着けている手袋が気になったからであって、中の状況に不安感があってのことではなかったと思う。

渋々、その不動産屋は開錠・ドアを開けた・・・その途端、腐乱死体が不動産屋に抱きつくように被いかぶさってきたのである。
死体は、ドア金具に紐を掛けて首を吊ったまま腐乱していたのである。

不動産屋は

「ぎゃーっ!!!!!」

と悲鳴をあげて倒れこんだ。そして、その上には腐乱死体が!私も驚いて

「ウワ~ッ!!」

と声を上げて後ずさりしてしまった。


もう、ビックリして頭の中が真っ白になった。
とりあえず、この場は何とかせねば!不動産屋は自分にのしかかってきた遺体を押し退けて言葉にならない嘆きの奇声を発していた。それはそれは悲惨な状況だった。

まずは警察を呼ぶべきなのに、不動産屋は

「先に俺を助けてくれ!」

という状態に。それでも警察に一報いれてから、消毒剤を使いながら汚れた身体を清拭し、汚れた服を脱がせ、私の着替用の予備作業服を着せてあげた。不動産屋の服や身体には腐敗液がベットリ着いて、とっさに遺体を押し退けた手は、それこそ腐乱死体の手のように汚れていた。

近隣の人も集まってきて、大騒ぎになった。
そのうちやって来た警察に、その場はバトンタッチして一時退散。

「もし開錠を自分がやっていたら・・・」と思うと・・・たまらん!
よく「虫の知らせ」と言うが、ウジの知らせで助かった!私であった。



ウジさん、いつもアナタを虐めている私を助けてくれて、どうもありがとう!




トラックバック 2006/06/21 09:26:53投稿分より

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臭いなぁ

2024-05-16 05:42:15 | 腐乱死体
「腐乱死体の匂いって、例えて言うとどんな臭い?」

と尋ねられることがある。返事に困る。何故なら、何にも例えられない臭いだからである。そもそも、臭いだけじゃなく、音・味・色など、五感で受けるものを代替的に表現し伝えるのは難しい。特に腐乱死体の臭いなんて、世間一般に似たような匂いがないからなお更である。とにかく、腐乱死体は臭い!としか言えない。

腐乱死体の臭いに興味のある人は割と多く居そうだが、どんな臭いなのか具体的に伝えられなくて残念だ(申し訳ない)。ちなみに、ウ○コや腐敗ゴミどころのレベルじゃないんで。
多分、代替物をもって腐乱死体の臭いを作ることも無理だと思う(やってみる意味もないが)。自分で試作して「こんな臭いでどうか?」とくれぐれも送って来ないように。


ちなみに、遺体からの臭いには死臭というものもある。私は死臭・腐敗臭・腐乱臭をレベル毎に分けて捉えている。通常の遺体は死臭がする。これも独特の臭いだが、我慢できないレベルではない(スタッフの中には死臭好きもいる)。腐敗臭はだいぶ悪臭なので、我慢できない人が大半であろう。腐乱臭ともなると、ほとんどの人がノックダウンだ。吐く人もいるかもしれない。

私の場合は、嗚咽は日常茶飯事で喉まで上がってきたことは何度かあるが、口から外へ吐いたことは一度もない。もともとこの仕事に向いていたのだろうか?

やはり、私には、慣れと防臭マスクが一番の防御となっている。防臭マスクといっても、消防や警察が使っているような高価で高品質のマスクではないので、着けてないよりはマシという程度のものである。

昔の友人に、

「トイレでウ○コをする時は口で息をすればいい」

という奴がいた。鼻に臭いを感じさせない工夫なのだろうが、どうも納得できない。特に特殊清掃の現場では、とても口で息をする気にはなれない。科学的な根拠はないけど、身体にスゴク悪いような気がするから。この気持ち分かるかな?分かるでしょ?


口で息をするくらいなら、鼻が壊れてもいいから鼻で息をしたい。これからも。


トラックバック 2006/06/15 09:34:13投稿分より

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宝探し競争

2024-05-09 05:33:32 | 腐乱死体
腐乱死体で発見される故人は、やはり独居が多い。
前ブログにも載せたが、独居でない珍しいケースもあるが。

「お金持ち」とまではいかなくても、一般的には誰しもそれなりの御宝を持っているものである。生命保険証券・株券・預金通帳・現金をはじめ、新型のAV機器やブランド品などである。

普段は疎遠・不仲にしていた遺族達も、こうおう時はハイエナのように集まってきて、宝探しを始める。臭くて汚い現場でもお構いなし。ビニールの簡易カッパ・ビニール手袋・マスクを着用して、人よりも先に御宝を発見すべく、欲望を剥き出しに目の色を変えて探しまくるのである。

そうなれば、身内と言えども競争相手・ライバルである。さながら、死体に群がるハイエナのようである。遺族がハイエナなら、私はウジかもしれない?が・・・(苦笑)

その無神経さには、苛立ちを覚えるくらいである。でも、これが人間の悲しい性か。
可笑しいのは、せっかく発見した「御宝」が「汚宝」になってでてくることである。

例えば、高級ブランド品に腐敗液やウジがついていると、

内心「ざまぁ見ろ」と思ってしまう。

遺族は、そういう品物を私にきれいにして欲しそうにするが、

「壊したら責任とれないし、それは私の受けた仕事の範囲に入っていないから」

と断る。

「せっかく御宝を探しに来たんだから、汚宝でも喜んで持って行けよ!」

と思う。


生前は疎遠にしていながら、本人が死んでからそそくさとやって来て、御宝だけを頂戴して帰ろうなんて虫が良すぎる。
そういう人達は、欲が強いばかりか猜疑心も強くなっている。

「死んだ故人も悔しい思いをしているかもな」

と思いながら、私は私で特殊清掃の作業に励むのであるが、その私の動きにも注目してくる。


私は、故人の御宝を盗んだりはしないよ。汚い仕事はしていても、心までは汚したくないと思っているから。


トラックバック 2006/06/08 投稿分より


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香りのソムリエ 

2024-04-29 09:59:12 | 腐乱死体
  • マンションの大家さん依頼があって現場へ出掛けた。間取りは2DKで最上階の角部屋。

腐乱死体が発見・処理されたのは約一年前で、あとはそのままの状態で一年間も放置され
ていた現場だった。
一年間も手を入れずに放置しておくなんて、かなり珍しいケースである。隣近所はもちろん、大家さんもそんな物件を抱えたままで気持ち悪くなかったのだろうか、と不思議に思った。
同時に「一年経過した腐乱臭は、どんな臭いになっているだろう」と興味を覚えた。

「腐敗臭の中でも、めったに嗅げない匂いに違いない」といそいそと出掛けた自分に苦笑い。

誰もが忌み嫌う腐乱死体の発見現場に喜んで出かけて行く訳だから、我ながら、つくづく神経が麻痺してきていると思う。
現場に到着して、玄関を入ってみたら、全く期待外れ?で、いつもの腐敗臭と変わりはなかった。一年間熟成された腐敗臭がどんな臭いか期待していたのに・・・残念(バカな自分)。
逆に、一年経っても、悪臭度が全く低下しない腐乱死体のスゴさを感じた。


ただ、時間経過を思わせたのは、腐敗液を吸ったフローリング床がめくれ上がっていたことと、原因不明の木グズのような粉が床にたくさんあったことくらい。
腐敗当時はウジも大量に発生したはずだが、みんなハエになって飛んで行ったのだろう、ウジ・ハエは一匹もいなかった。どこかに飛んで行ったハエは、またどこかの死体に卵を産んで、子孫を増やしていることだろう。そして、その子孫達と私はまたどこかの現場で再会するかもしれない。

「ハエさん、お手柔らかに頼むよ。」

亀や鮭が故郷に戻ってきて再会するのとは次元が違い過ぎて、自分でも可笑しい。


トラックバック 2006/05/29投稿分より


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家庭内別居

2024-04-27 16:07:01 | 腐乱死体
閑静な住宅街の大きな家。豪邸といってもいいくらい。腐乱死体は離れの小部屋にあった。


依頼者は故人の夫。広い敷地内の大きな家で、家庭内別居でもしていたのだろうか、妻が腐乱死体で発見されるまで異変に気づかなかったなんて。

依頼者はとにかく近隣への世間体を気にしていた。私が行ったときは、まだ妻の死を近所には知らせていないようだった。とにかく「近隣へ悪臭が漏れないように。」「清掃業者が入って作業していることを気づかれないように。」ということを重々念押しされて作業。
したがって、いつも使っている業務用車輌ではなく自家用車風の車で、機材の持ち運びも回りの目を気にしながらコソコソと。ユニフォームもスーツにネクタイ姿での作業になった。非常にやりにくかったし、自前のスーツに腐敗臭と腐敗液が付着するなんて我慢ならなかった。それでも、依頼者のたっての願いだから仕方がない。

更には、悪臭が外に漏れるのを防ぐために、戸や窓も締め切ったまま。
鼻が壊れそうになりながら、密室で清掃作業をすすめた。身体はもちろん、自前のスーツもタップリ腐敗臭が付着して、悲しかった。
決して高いブランドスーツではないけど、量販店で数万円するスーツだ。まさか、
この特殊清掃作業で着ることになるとは・・・

料金にスーツ代もプラスすればよかった。


トラックバック 2006/05/27 投稿分より


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どうすりゃいいんだよぉ

2024-04-26 09:38:56 | 腐乱死体
小規模の賃貸マンション。依頼者はマンションオーナー。いつもの調子で現場検証・見積りへ出掛けた。


玄関ドアを開けるといつもの悪臭。豊富な現場経験を自負していた私は、いつものノリで室内へ。「マスクとかしなくて大丈夫ですか?」とオーナーは気遣ってくれたが、「現場見積でいちいちマスクしててもきりがないんで・・」と余裕をかましていた。

故人はトイレで亡くなっていたと聞いていたので、トイレのドアを開けてみた。
そこで仰天!ユニットトイレだから、腐敗液が床に染み込んだり隙間から漏れたりしていないものだから、人間の容積がそのまま液体になったくらいの量の腐敗液が便器と床に溜まっていたのである。これにはさすかに驚いた!正直「どうすりゃいいんだよぉ」と思った。いつものように、作業手順が即座に組み立てられなかったのである。
私は、吐きそうになる現場は少ないのだが、ここではいきなり「オエッ」ときた。

この現場は、トイレユニットごと入れ替え必要があったが、まずは、その腐敗液を何とかしなければならなかった。
通常は、吸収剤+拭き取りで処理できるのだが、ここはそうはいかなかった。そんなレベルではなく、汲み出す必要があった。この汲み出し作業が辛かった!小さい容器を使ってトイレ床の腐敗液を少しずつ汲み出していくのだが、汲んでも汲んでもなかなか終わらなず、気持ち悪くて気持ち悪くて仕方がない。なにせ、液体人間を汲み出してる訳だから。腐敗液の中に落ちていたメガネが人間的なものを感じさせ、余計に不気味さを増長させた。

これが腐敗液だと思うと、直ちに「オエッ!」とくるので、何も考えないように、心を無にしてやるのがこの仕事のコツである。


この仕事は、死体の腐乱臭が身体や衣服をはじめ、鼻にもばっちりついてしまうのは言うまでもない。もちろん、そのまま家にも帰れないし、どこかの店に立ち寄るのもはばかられる。そんな仕事なのである。


トラックバック  2006/05/26 投稿分より

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