特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

秘蔵酒

2025-02-15 05:37:35 | 特殊清掃
私は酒が好きだ。
たいして強くもないけど、下戸でもない。
数少ない、人並みにできることの一つが酒を飲むこと。


例えばビール。
子供の頃は、「大人は、なんでこんな苦いものを飲みたがるんだろう」と不思議に思っていた。
子供の頃に飲んだビールは、苦いばかりで本当にマズかった。


それからしばらく成長して自分でビールを飲み始めるようになるのだが、当初は周りに合わせて(大人ぶって)味の分かるフリをしていた。
ホントはマズイくせに、「うまい!」なんて言いながら。
しかし、飲み続けているうち次第に味が分かってきた。
そして、本当に「うまい」と感じるようになり現在に至っている。


少し前、ある居酒屋に行った時のこと。
高級店には縁がない私が行くのは、いつも安価な大衆店。
その時も大手チェーンの大衆店だった。


「とりあえずビールを下さい」
目の前に、どの店にも見られる普通の中ジョッキがでてきた。
私は、当たり前の味を想像してグビグビッと勢いよく飲んだ。


「ん?うまい!・・・」いい意味で意表を突かれた。
「今日はヤケにうまく感じるなぁ」
「喉が渇いてるのかな?」
不思議な感覚のまま、ビールはグイグイすすんだ。
しばらく飲んでいても、ペースは落ちない。
しばらくして、店員に尋いてみた。


「このビールの銘柄は何ですか?」
「○○(メーカー)の○○(銘柄)です」
「え?この値段で?」
「メーカーとタイアップして、○○記念のキャンペーン中でして」
「なるほど!そう言えば、このビールは○○でしたよね」


私は、そのビールの存在は知っており、ずっと「飲みたい」と思っていたものだった。
しかし、貧乏人の私には手が届かないでいたもの(いつも雑酒ばかり)。
それが偶然にも一般ビールと同じ値段で飲めたことはラッキーだった。


私は宣伝のつもりでも、結果的に営業妨害になってはいけないので、メーカー・銘柄は伏せておく。
ちなみに、有名メーカーの国産だ。


ある腐乱現場。
故人は年配の男性。
台所で腐っていた。
部屋の隅にはビールの空缶や酒瓶がゴロゴロと転がっており、酒好きだったことが想像されて親しみを覚えた。


床には腐敗粘土が厚く広がっており、私はそれを回り(外側)から少しずつ片付けていった。
そのうち、床からは床下収納のフタが見えてきた。


「中に 何か入ってるかな~?」


私は、目詰まりしたフタを工具でコジ開けた。
床下収納のフタは意外に重いもの。
私は、腐敗脂で滑りやすくなっていたフタを慎重に外した。


中には、何本かの酒瓶が立っていた。
その一つを手に取ってみたら、名の知れた高級酒。


「おっ!?」
少し興奮してきた私は、次々と瓶を取り出してみた。
日本酒・ウィスキー・バーボン・ブランデーetc、知らない酒もあったけど、どれも高級酒である威厳があり、かなりの熟成度を誇ってるようなモノもあった。
しかし、残念ながら、それらには例の熟成した液体がベットリ着いていた。


「これじゃぁ、どうしようもないなぁ」
せっかくの酒も、飲めるとか飲めないを考える以前の状態になっていた。


酒好きの故人は、きっと大事にとっておいたのだろう。
そして、それを口にする前に逝くハメになろうとは思ってもみなかっただろう。


人間は死んでしまうと、高級酒も金も、自分の身体さえも持っては逝けない。
何でも惜しみ過ぎないで、適当に使っていった方がいいね。
それが、生きているうちの特権かもしれないから。


さーてと、今夜も飲むか!
宵越しの銭なんか持ってられるか(単に、持てないだけだけど)!




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2006-12-05 18:05:00
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追いつめられて ~小心者の戦いⅡ~

2025-02-13 06:37:00 | 特殊清掃
ワサワサワサワサ・・・
汚染箇所の周辺には、それまでに何度かお目にかかったことがある未確認歩行物体が、群れをなして這い回っていた。
「オッ?こいつらに会うのは久し振りだな」
最初はそんな余裕をかましていた私だったが、よく見てみるとその数は膨大。
気のせいか、彼等は私に向かって近づいてきているように思え、その不気味さに鳥肌が立ってきた。


「こんな所に長居は無用!退散、退散っと」
現場見分の山場(汚染箇所の確認)をクリアした私は、気持ちも軽快に外に出るため玄関に進んだ。
そして、老朽鉄扉のノブに手をかけた。


「あれ?」
ドアが開かない。
「あれっ!?」
まだ開かない。
「あれーっ!?」
全然開かない。


私は、何が起こったのか理解できず、頭が真っ白になった。
無意識のうちに、ドアをガチャガチャやり続けた。


「ま、ま、まさか?」
「ひょ、ひょ、ひょっとして?」
「と、と、閉じ込められた!?」
私は動揺しまくった!
心臓はバックンバックン、身体からはイヤな汗がジトーッとでてきた。


「落ち着け!落ち着け!」
「慌てるな!慌てるな!」
「冷静に!冷静に!」
自分に言い聞かせる自分が、既にパニックに陥っていた。
精神的にも物理的にも、完全に追いつめられた私。


しばらくの間、ドアノブと格闘した私だったが、いつしか弱気になり、ついに自力脱出を諦めた。
「どうしよぉ・・・」
とにかく、他の住人に私の存在を知らせることにした。


まず、ドアを内側からしばらくノック。
時折、外から物音・人の動きを感じるものの、反応がない。
「腐乱死体部屋の中からノック音がしたら、助けるどころかビックリして逃げてしまうか・・・」


次に、ドアポストの隙間から「スイマセーン」と何度か声をだしてみた。
「・・・ま、これも不気味だな」


私は、他に助けを呼ぶことにして、ポケットの携帯電話を取り出した。
「さて、誰(どこ)に電話しよぉか・・・」
会社・大家・鍵屋etc、自分の面子や事の緊急性など色々考えて、とりあえず不動産会社に電話することにした。
そして、特掃を依頼してきた担当者に、「玄関ドアが壊れたらしく、真っ暗な腐乱死体現場に閉じ込められてしまった」ことを伝えた。
すると、担当者は驚いて「すぐに110番か119番に電話する!」と、見当違いな返答をしてきた。


このくらいのことで警察や消防の手を煩わせる訳にはいかない。
私はそれを制止して、とにかく鍵を持って急行してくれるように頼んだ。


担当者が到着するまで、私は、そこで待つしかなかった。
腐敗臭、未確認歩行物体、そして暗闇。


私は、意識的に楽しいことを考えようと試みたが、思考はどうしてもネガティブな方向に傾いた。
「俺には、楽しいことのネタがこんなにも乏しいのか」
と苦笑したのもつかの間
「未確認歩行物体が自分を食おうとするのではないか」
「幽霊がでるんじゃないか」
と言う不安が襲ってきた。
「なんだか、恐いなぁ・・・」


私は、余計なものが見えたり聞こえたりしないよう目を閉じ、両手で両耳を塞いでジッとしていた。
そして、自分を励ますために、どこかで聴いたことがあるアンパンマンのテーマソングを不完全な歌詞で繰り返し唄った。
ちなみに、「ウジとシタイだけがト~モダッチさ~〓」なんて唄ってないからね。


助けを待つ、その場の臭かったこと、その時間の長かったこと。
しばらくして、やっと担当者が来てくれた。
そして、外からドアを開けてくれた。
意味不明なことに、外からだと普通に開いたドアだった。


「助かったーっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「あまり大丈夫じゃないです」
「でも、大事にならなくてよかったですね」
「まぁ・・・ね」


長時間いたせいで、私の身体には腐乱死体臭がバッチリ着いていた。
生きているのに死人の臭いを発しながら、ヨロヨロと帰途につく私だった。


「追いつめられて・三部作」はこれで終了。


記したこと以外にも、私は毎日色んなかたちで追いつめられながら生きている。
そんな人生は、楽よりも苦の方が多いような気がしている。
それでも、人は誰でも、追いつめられた土俵際で踏ん張る力は備わっているようにも思う。
ま、踏ん張れないときは一旦負けて、また仕切り直せばいいんだけどね。


気づけば、2006年も師走。
大したことができないまま、歳だけとっていく。




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2006-12-03 08:46:09
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追い詰められて ~怠け者の苦悩~

2025-02-08 05:39:38 | 特殊清掃
私は、幼い頃から怠け者である。
元来、努力・忍耐・勤勉には無縁の私は、何をやるにも面倒臭がってしまう。
面倒臭がらずにできることと言えば、食うことと寝ることぐらい。
特掃がない日は、風呂に入るのも面倒臭い。
若いころには、面倒臭がらずにできることがもう一つあったけどね。
んー、我ながら情けない。


怠け者の私は、だいたいのことは追いつめられないとやらない。
何をやるにも、前倒しより後手後手。


学校の宿題やテスト勉強も、面倒臭くてなかなか手をつけることができないタイプだった。
それでもまだ、着手すればマシな方で、怠け心に負けて全然勉強しないことも多かった。
更に、自分一人で開き直っているのならまだしも、末期になると他人(友人)をも巻き込んで堕落していた。
「実社会で生きていく上で、学校の勉強がどれほど役に立ち、どれほど重要なものか、はなはだ疑問に思う」
等と吐いて、勉強嫌いな友人をこっちサイドに引きづり込んでいた。
典型的な劣等生だ。


特掃業務においても、「面倒臭えなぁ」と思うことがたくさんある。


作業を終えて帰って来ると、道具・備品類をきれいにして片付けなければならない。
これが結構面倒臭い!
ただでさえ疲れて帰って来るのに、その後まだ道具類の掃除をしなければならないなんて、かなわない。
しかも、普通の汚れじゃないんで、なかなか手間がかかる。


腐敗液の主要構成物質の一つに脂がある。
一度この脂が着いてしまうと、なかなか落ちない!
実質は、食用油や工業用油と大差ないのだろうが、腐敗脂はなかなかきれいに落とせない。
汚いモノにでも触るかのように、オヨビ腰でやるからだろう。


しかし、道具類を使いっぱなしで放置しておくと、自分で自分の首を締めることになる。
一番恐ろしいのは、自分でも気づかないうちに腐敗液が素肌に付着してしまうこと。


「ん?なんか臭えなぁ」
と思っていたら、手や腕に腐敗液が着いていたなんてことがある。
「ギョエーッ!早く拭かなきゃ!消毒!消毒ーっ!」


こんな仕事をしていても、私は、わりと潔癖症なのである。
我ながらおかしい。


他に面倒臭い作業と言えば、階段の上下がある。
現場が、団地やマンションの場合だ。
エレベーターのない建物はもちろん、エレベーターがあっても使用を許してもらえない所も少なくない。
運び出すモノがモノだけに、住民からも嫌悪される訳だ。当然だろう。
そんな現場はかなりキツい!
肉体的にハードなのはもちろん、精神的にもいたたまれない。
近隣住民からの好奇・嫌悪の視線を浴びながら作業しなければならないからだ。
これも結構キツい!


でも、請け負った仕事に逃げ道はない。
追いつめられた状態で荷物を持ち、階段をひたすらUpDown。
まるで、筋力トレーニングでもしているかのような作業が続く。
しかも、私は荷物を身体から離して持つ習性があるため、腕力も余計に必要。
それが、涼しい時季ならまだしも、暑い夏にこの作業は過酷だ。
滝のように流れる汗と膝の感覚麻痺に、意識が遠退いていきそうになる。
怠け者は苦悩する。
腐乱現場を少しでも楽に片付けるため、少しでも人の視線を浴びないために。
しかし、考えても得策はない。
結局は、足元に垂れる汗を踏み、「ヒーヒー」言いながら、黙々と身体を動かすだけ。
人と視線を合わさないように、時々空を仰ぎながら俯いて地道に働くだけ。


追いつめられた状態では、怠け者も働かざるを得ない。
追いつめられた状態でも、死なないうちは生きなければならない。


そして、今日もクタクタになった身体を奮い立たせ、人の死に様を消していく。



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2006-11-29 09:24:55
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追いつめられて ~臆病者の根性~

2025-02-06 05:17:57 | 特殊清掃
私は、幼い頃から臆病者である。
もっとも、何をもって臆病者とするかは曖昧なものだが。
ま、今回はその辺には触れないで話を進めるとしよう。


その昔、私は、同年代の子が怖がらないようなもの(こと)も怖がっていた。
結構な弱虫だと自認している。
今でも、恐いもの・恐いことがたくさんある。
中でも、人が一番恐いかも。


人は、人を悩まし・苦しめ・キズつける。
もちろん、マイナスなことばかりではない。
人は、人を楽しませ、助け、幸せにする。
それでも、私は「人って恐い」と思う。


私は、人の何を怖がっているのだろうか。
まずは、その力。
暴力・経済力・社会的な力etc。
それから、その精神。
怒り・妬み・恨みetc。
そして、今までのブログにも何度となく書いてきた・・・そう、人の目(評価)だ。


「人からよく見られたい!」という自己顕示欲が強くて、時には見栄を張ったり、時には虚勢を張ったりする。
でも、残念ながら実態がともなっていないから、そんなことからは虚無感・空虚感しか得られない。
それなのに、また懲りずに見栄と虚勢を張っては虚しさを覚える日々を繰り返している。


人の目を気にせずに生きられたら、どんなに楽だろうか。
そうは言いながらも、今日も私は人に好印象を与えるべく、社交辞令と建前を駆使しながら無駄な抵抗をしている。
そして、なんとか人並に人間関係を動かしている(つもり)。


特掃は臆病者には無理そうな仕事に思われるかもしれないが、実はそうでもない。
どちらかと言うと、臆病者の方が向いている仕事かもしれない。
臆病者は人を気にするので、人に顰蹙をかわないように細心の心配りをするし、人の言うことに従おうとする。
そのスタンスが、結果的にGoodjobにつながるのかも。


臆病者が特掃をやるには、追いつめられる必要がある。
特掃現場の一件一件、いつも私は追いつめられている。
自分が生きるためにやらなきゃならないプレッシャーと請け負ったこと(依頼者)に対する責任とに。


「やりたい?」or「やりたくない?」→当然、やりたくない!
単純に考えると、やりたい訳じゃないのにやっている自分と向き合うことになる。
誰もが嫌うこの仕事、自分でも苦しいこの仕事なのに、やり続けている。
この葛藤は、ほとんど毎日ある。


請け負った現場に逃げ道はない。
まさに、追いつめられた状態だ。
恐くたって、吐いたって、泣いたって逃げられない。


そして、そこからくる疲労感と脱力感は独特な重さがある。
頭も身体も、ホント、グッタリくる。


特掃をやる上で欠かせないものは、道具やノウハウ・経験etc色々あるが、基本的には「根性!」だ。
それも、「最後の根性」だ。


「最後の根性」とは、常日頃から当人の人格に備わっているものではなく、臆病者が追いつめられたときに爆発させるエネルギーのこと。
「火事場の馬鹿力」と言えば分かり易いだろうか。
そんな場所では「火事場の馬鹿力」に頼るしかない。
特掃って、そんな最後の根性をださないとできない仕事かもしれない。


相手は、元人間の一部。
しかも、とてつもない悪臭を放ち、見た目にもグロテスク。
こんなモノの始末なんて、余程追い詰められた人間でないとできないだろうと思う。


私は、今日も追いつめられて、頭が壊れそうになりながら、腐乱人間がこの世に残した痕を消している。



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2006-11-27 17:31:22
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愛の痕

2025-01-15 05:57:54 | 特殊清掃
時々、思うことがある。
生きていることの不思議さ。
生きていることの意味。
自分とは何か。


私が、「生は夢幻」「人生は夢幻の想い出」だと捉らえていることは、たまにブログでも取り上げている。
ただ、私の中でもこれは一側面でしかない。
あくまで私の中だけの話だが、矛盾しないかたちで違う捕らえ方もしている。
モヤモヤして収拾がつかない話になりそうなので、今回は取り上げない。


人間(死体)は、放っておくと腐り溶けていくことは過去ブログの通り。
自然現象とは言え、そのグロテスクさは凄まじい。


私は、そのイメージだけで「溶ける」と表記しているが、正しくは「解ける」か?、はたまた「熔ける」か?・・・流行りの平仮名表記で「とける」がマッチするのか、ちょっと迷うところだ。
でも、間違っても「とろける」って書かないように気をつけなきゃね。


現場はマンションの一室。
故人は若い男性、依頼者は故人の父親だった。


私は、部屋を見分しているうちに自殺を疑い始めた。
その理由は三つ。
故人の年齢が若いこと。
消費者金融の請求書がたくさんあったこと。
部屋にはやたらとゴミが多くて、ちらかっていたこと。
私の経験に限っては、このパターンの自殺率は高い。


遺族や故人を気の毒に思う気持ちがない訳ではないが、私は、基本的に他人の死は悲しくない。
冷たいようだが、事実だから仕方がない。
したがって、現場では辛気臭い演技もほとんどせず、思いついたことは率直に口にだしてしまう。


「自殺ですか?」
「一応、自然死ということになってますが、どうも薬を飲んだみたいで・・・」
父親もハッキリした事実を掴めていないらしく、言葉を濁すしかないようだった。


「余計なことを尋いてスイマセン」
「いえいえ、そちらの仕事にも影響することでしょうから」
寛容な、理解のある依頼者だった。


決して広くない部屋なのに、家財道具・生活用品・ゴミは大量だった。
汚染箇所を先に処理することはできず、まずは部屋を空にすることを先行させた。
この現場に限ったことではないが、悪臭とホコリ、そして汚物にまみれながらの作業は、なかなか楽じゃない。


荷物を搬出し終えると、部屋には、床に広がる腐敗液とウジだけが残った。
そして、その様を父親が見に来た。


「これは?」
「人体が腐敗した痕です」
「えっ!?」
「人体は腐敗するとこうなるんです」


父親は驚いたようだった。
「人は腐ると溶ける」と説明した方が分かりやすかったのだろうが、ずうずうしい私でもさすがにそのセリフは吐けなかった。


「と言うことは、息子の一部ということか・・・」
そう言って、父親は急に泣き始めた。
私と接するときは、ずっと冷静な姿勢を保っていた父親が急に泣き出したので、私はちょっと驚いてしまった。
しかし、その心情を察すると、余りあるものがあった。


気の利いた言葉を思いつかなかった私は、黙って床の掃除を始めた。
私にとっては、腐敗液の拭き取りはお手のもの。
みるみるうちにきれいになった。


空になった部屋、きれいになった床を見渡しながら父親は感慨深そうに言った。
「こうして見ると、息子がこの世に存在して生きていたということが、まるで夢の中の出来事のようですよ」
「・・・残った臭いが夢の痕ですかね」
「夢のあとか・・・そうですねぇ・・・」
「多少の後先があるだけで、我々の人生だってそのうち終わるわけですから、とにかく元気だして下さいね」
「ありがとうごさいます」
「こちらこそ」


私の人生は、どんな夢のあとを残すのだろうか。
大きな不安と小さな期待の中、現場をあとにした。



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2006-11-17 10:01:58より

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故郷

2025-01-11 06:15:52 | 特殊清掃
「故郷」は、人によって違う。
物理的に異なるのは当然として、その定義(概念)も違うのではないだろうか。


生まれた所、育った所、長く暮らした所etc。
場所に限らず、人や想い出が故郷になるこもあるだろう。


特掃の依頼が入った。
故人は老人(男性)、依頼者はその姉。
現場は老朽一戸建。
平屋・狭小、プレハブ造りの粗末な家だった。


腐乱場所はその台所、板の間。
古びた室内は、かなり汚れてホコリっぽかった。その中央に腐敗痕が残っていた。
死後、かなりの時間が経っているらしく、腐敗粘土は乾き気味だった。


依頼者の話によると、現場の周辺は故人・依頼者達にとって故郷らしかった。
幼少期を家族で楽しく過ごした場所。
戦火が激しくなった頃、田舎に疎開し、終戦を迎えて戻って来たら一面が焼野原になっていた。
それで、一家は仕方なく外の地に移り住んだとのこと。


故人は、若い頃から故郷に家を持つことを目標にしていた。
そして、故郷で人生を終えることも生前から望んでいたらしい。
それを聞いて、自殺を疑った私だったが、どうも自然死のようだった。


故人は企業人としての現役を引退した後、かねてからの希望を叶えて故郷に家を構えた。
小さくて質素な家でも、愛着のある故郷で暮らすことができて、故人は幸せだっただろうと思った。
それから幾年が過ぎ、亡くなったのである。


台所に広がる汚物には嫌悪しながらも、生前の故人には親しみに似た感情が湧いてきた。


腐敗液は、台所の床にとっくに浸透していた。
表面を掃除したところで、汚染の根本が片付く訳ではない。
表面の腐敗粘土を掃除するより台所の床板を剥がして撤去する方が得策だと考えた私は、依頼者にそれを提案した。
誰も住む人はいないし、取り壊すしかない家なので、依頼者は私の提案を快諾。


私は、愛用の大工道具を使って、床板を少しずつ剥がしていった。
薄暗い床下を見て、「!?」。


床下の土には、妙に脚がたくさんある二種類の虫が這い回り、黒くボソボソとした盛り上がりができていたのだ。
床板を透り抜けた腐敗液が、床下の土に滴った結果であることはすぐに分かった。
髪・骨・歯は残っただろうけど、故人は故郷の土に還っていった訳だ。


「故郷の土に還ることも、生前の故人が望んでいたことではないだろうか」と、勝手に想像して微笑んだ私。


「土に還る」という言葉があるが、「土に帰る」じゃないところに、何とも言えない深い意味を感じる。
その意味が何であるか具体的には説明できないけど、本能的に重く感じるものがある。


以前も書いたが、私は自分の屍を火葬(焼却)して欲しくないと考えている。
故郷でなくても、どの地でもいいから、土に還りたいと思う。
しかし、今の法律や葬送習慣じゃ、無理だろうなぁ。


そうは言っても、今回の故人みたいなイレギュラーなケースは遠慮したいものだ。
仮にそうなったとしたら、後世にも特掃隊長が現れて、片付けてくれるかな?




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2006-11-13 21:31:50
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ヅラ?ツラい!

2025-01-05 08:35:18 | 特殊清掃
特掃現場では、死体の頭髪が残っていることはザラにある。
と言うより、大量の毛髪が残っている現場の方が、そうでない現場より多いと思う。


骨や歯は警察がきれいに回収していくが、毛髪にまではいちいち手が回らないのだろう。
腐敗液の中にポツンと残された毛髪には、不気味なものを感じる。


首吊自殺によくある、座位のまま腐乱していったケースでは、頭皮・毛髪が床ではなく壁にくっついていることも珍しくない。
腐敗液が乾いていく段階で、接着剤みたいに作用するのだ。
なかなか想像し難いかもしれないが、この光景はかなり不気味。
想像しやすいように、具体的に説明すると、壁にベッタリと部分カツラがくっついているようなもの。
そして、当然のごとくその下は凄惨な状態。
赤茶黒の腐敗液・腐敗脂・腐敗粘土が広がっている。


ある現場。
故人は和室、畳の上で腐乱していた。
驚いたのは、その頭髪。
頭の形状が極めてリアルなかたちで残っていたのだ。


死後、かなりの時間が経過していたらしく、白髪混じりの頭髪は、本物のカツラのごとく頭の形をとどめてシッカリと残っていた。
気持ち悪かったのか面倒臭かったのか、警察は頭蓋骨だけを拾って帰ったのだろう。


「ついでにコレ(頭髪)も持ってってくれればよかったのに・・・」
私はボヤいた。
そして、躊躇した。
「コレ、どうしようかなぁ・・・」


考えたところで、やるべきことは決まっている。
とりあえず、畳から拾う(剥がす)ことにして、片手で掴んで引いてみた。
重い抵抗を感じた。


「ちゃんと掴まないと、中途半端なところでちぎれてしまう」
そう判断した私は、両手を使い、髪の間で深く指を入れた。
その感覚は、自分の身体から手(腕)だけが分離されているような変なものだった。
防衛本能か?私は、自然と自分の手からを視線を外して、それを慎重に引っ張った。
精神的にも物理的にも、重い重い抵抗を感じた。


ベリベリ・バリバリと頭髪は畳から離れていった。
ところが、あともう少しで持ち上がりそうなところで、私のカラータイマーが点滅。
同時に、私の全身にモノ凄い悪寒が走った。


「イカンッ!緊急避難!」
私は、作業を中断して外に駆け出た。
そして、マスクを外して深呼吸。
心臓がバクバクしていた。
「恐えぇ・・・」
ボヤきながら、気持ちを整えた。


心のカラータイマーが点滅をやめて元に戻るまで、しばらくの時間を要した。
私は、晴天の空を見上げた。
「俺の人生、こんなんでいいのか・・・」
「今は、これをやれっつーことか・・・」
特掃には関係ないことを考えて、気を紛らわした。


しばらくの後、意を決して再突入。
余計なものを見ないように、余計なことを考えないように、毛髪を引っ張った。


メリ!メリメリメリーッ!
「お゛あ゛ーっ!」
私は、持ち上げた自分の手を見て、再び全身に悪寒が走った。
中身(頭・顔)がないのに、まるで生首を持ち上げたような錯覚に襲われたのだ。


さて、畳から外したのはいいけど、後始末には困る。
私は、どうしても持って帰る気になれなかったので、遺族に返すことにした。


もともと、でてきた貴重品は遺族に渡すことになっていたので、この「ヅラ風自毛」も貴重品の一つに混ぜておいた。


中を開けてビックリしたかな?


なにはともあれ、このヅラはツラいよ!



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2006-11-15 13:29:14
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カレーライス

2025-01-04 06:36:01 | 特殊清掃
私は、オニギリをよく食べる。
「好物」と言う訳ではないのだが、その手軽さや携行の利便性から重宝している。


緊急性を要さない特掃のときは、一日の作業開始時刻は10:00~11:00頃。
身体には汚れや悪臭が着くので、昼食休憩をとらないで作業を進めることが多い。
だから、昼食が夕方近くになることも日常茶飯事。


そんな時にオニギリはいい。
作業前の腹ごしらえに、作業途中のおやつ代わりに、作業後の食事に、車の中でいつでも食べられる。


カレーライスは、幼少の頃からの好物。
「大好物」と言うほどではないのだか、たまに食べる。
カレーって、いくら安物でもどこで食べても、それなりに美味しい。
まずいカレーって、当たったことがない(ふざけ半分の激辛カレーは例外)。
いい食べ物だ。


食べ物を表題にするときは、ロクな話じゃなくて恐縮だ。
・・・と思いながらも書く。


ある風呂場での話。
ちなみに、これは「不慮の事故」が起きた現場とは違う、ずっと以前の話。


ボロボロの老朽団地の一室、故人は風呂場で腐っていた。
私は、浴室全体をゆっくりと眺めた後、恐々と浴槽を覗き込んだ。
幸い、汚水は抜けていた。
が!、浴槽の底には腐敗粘土がたんまりと溜まっていた。
そして、その中にはおびただしい数のウジが。


「うぁちゃー!」
毎度、ワンパターンの反応をする私。


一口に「腐敗粘土」と言っても、その色は黄色っぽいものから焦茶色っぽいものまである。
また、粘度も高いものから低いものまである。
(以前の記事で説明したっけ?)


この現場の腐敗粘度は黄色っぽくてドロドロしたものだった。
それはまるで、程よく煮込んだ・・・
ここまで書いたら何が言いたいのか分かると思うので、以下省略。


では次の具材を探そう。
老朽団地の風呂は、かなりの旧式。
追焚ができないタイプで、浴槽は浴室に置いてあるだけのものだった。
浴槽の汚物を片付けてから、その浴槽を動かしてみた。


すると、浴槽の陰、浴室の隅に大量のウジが固まっていた。
大量のウジが平面的に広がっているのは珍しくない。
しかし、折り重なって立体的に群生しているのは珍しい。
それはまるで、オニギ・・・
ここまで書いたら何が言いたいのか分かると思うので、以下省略。

汚物容器の中。
白いウジと黄色い腐敗粘度。
それはまるで、カ・・・
ここまで書いたら何が言いたいのか分かると思うので、以下省略。

やはり、カレーライスは大衆食。
心に響く(のしかかる)その深いテイストは、ビーフシチューに敵わない?

どちらにしろ、カレーもビーフシチューも人間が作るものの方がいい。
人間で作られるものよりね。



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2006-11-09 08:28:20
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深刻な深呼吸

2024-12-23 05:27:15 | 特殊清掃
季節は初冬、現場は老朽一戸建。
閑静な住宅街に、その家だけが異様な雰囲気を醸し出してした。
「近所付き合いなし!」
「発見が遅れてもやむなし!」
と、家が語っていた。


腐乱場所は奥の洋間。
死亡推定日が間違いじゃないかと思うくらいに酷い状況だった。
「真夏ならいざ知らず、この季節でこの汚染とは・・・」


私は、ガッカリしながら作業手順を頭の中で組み立てた。
本来なら、汚染部を先に片付けたいところだったが、家財(ゴミ)が多すぎてそれができなかった。


猛烈な悪臭に閉口しながら、まずは家財を梱包して搬出。


私がいつも使っているマスクは、安物の簡易マスク。
防臭より防塵優先。
悪臭は、余裕でマスクを通り抜け、鼻から肺に入ってくる。


ん!?ちょっと待てよ。
これを書いていて気付いたが、ひょっとすると、大量の腐敗臭を吸ってきている私の肺は、腐敗臭にバッチリ冒されているかも?
だとすると、私の吐く息は腐乱死体の臭いがするのかな?
調度、タバコと同じような原理で・・・。
ウェ~ッ!
そう考えると、自分で自分が気持ち悪い!


話を戻す。
腐乱現場では、本能的に浅い息で通す。
とても、深い息ができる所ではないから。
ま、それが適度な酸欠状態をつくりだして、脳的にも作業をしやすくしてくれているのかもしれない。


家財の梱包・搬出を終え、やっと汚染箇所に着手。
汚腐団をたたみ、汚妖服を拾った。


汚妖服に言及するのは初めてかと思うが、早い話が「故人の着衣」。
警察が遺体を片付ける際に脱げてしまうのだろう(あえて脱がせているとは思えない)、汚妖服が現場に落ちていることは多い。
腐乱死体が着ていたものだから、普通じゃない。
タップリの腐敗液を吸っているのが常。
現場によっては、ベトベトの腐敗粘土にまみれているモノもある。
また、故人が脱いだ汚妖服は、その後はウジが着ていることが多い。


次は、床に敷いてあるカーペットに手をつけた。
どうも、二枚重で敷いてあるらしく、まずは上のものを剥がした。
ネチョネチョと捲くれ上がるカーペットの間にも、腐敗液が浸透して粘土状態になっていた。
「ミルクレープみたいだな」


二枚目のカーペットを見て驚いた。
「ん!あったかい?」
「これ、ホットカーペットじゃん!」
「しかも、スイッチONのままじゃねぇかよ!」
「誰かスイッチ切っとけよーっ!」


こんな状況じゃ、遺体の分解もはかどるし、ウジだってスクスクと育つに決まっていた。


「あ゛、い゛、う゛、え゛、お゛ーっ!」
と、くだらない悲鳴を上げながら、ホットカーペットをコンパクトに丸めた。
「ウジロール完成!」


そんなこんなで、その現場を終えた(楽しそうに書いていても、実際は全然楽しくない)。
現場を離れても、腐乱臭が鼻に着いているのは毎度のこと。
それは仕方がないものと諦めている。
風呂に入れば、だいたい落ちるんで。


しっかし、肺にまで腐乱臭が付着していないことを祈るばかりだ。


身の回り、見渡す世の中は空気が汚れている。
たまには、きれいな所に行って、のんびり深呼吸したいもんだな。



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2006-10-24 17:21:40
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ビッグウェーブ

2024-12-18 05:52:44 | 特殊清掃
人間であるかぎり、気分・感情に波があるのは自然なことだろう、
ただ、私においては、その波の高低差が激しいのが難点。
特に、30歳を過ぎてからは、全体的に低い位置で上下している。
歳のせいかメンタルな問題か分からないが、若い頃に比べて、気分がスカーッと晴れることが少ない。


そうは言いながらも、特掃業務においては、年々パワーが上がっている。
特掃業務に対しては、体力は落ちても、精神力は上がっているのだ。
単に、経験を重ねている がゆえの「慣れ」かもしれないけど、我ながら、「たくましくなったなぁ」と思うことが増えてきた。
そんな今では、どんな現場でも臆することなくズカズカと入り込む。
そして、「こりゃヒドイ!」等と、時には無神経な言葉を吐いてしまう。


そんな私でも、特掃を始めた頃はいつもビビりながら現場に入っていたものだ。
あまりの凄惨さに、目を閉じたこともある。
あまりの悪臭に、一分と部屋に留まれなかったこともある。


そんな初々しかった頃の話。
とある1Rマンションの一室。
腐乱現場はトイレだった。
依頼者はマンションのオーナー。


玄関を開けた途端に強烈な腐敗臭とハエが襲ってきた。
それだけで、逃げたい気分。
内心ではかなりビビっていたのだが、そんな心情を依頼者に悟られてはマズイので、精一杯気丈に振る舞った。


玄関を突破し、問題のトイレの前へ。
悪臭が外にもれないように、玄関ドアは閉められてしまった。
もちろん、依頼者は外。
薄暗くて臭い室内には私一人きり。
その時点で、既に半泣き状態。


しばらく悶々とした後、勇気を振り絞ってトイレのドアを開けてみた。
すると、衝撃の光景が目に飛び込んできた。
液化汚物になった元人間が床一面に溜まっていたのだ。
ユニットトイレの床は、液体を浸透させないから、腐敗液はドア下面までなみなみと溜まっていた。


気持ち悪さを通り越した嫌悪感で、私の脳と心は、「イヤ!嫌!イヤ!無理!ムリ!無理!」と、完全な拒絶反応を示した。
まるで、脳ミソと心臓が、プルプルと横振れするかのように。


「これをきれいに掃除するのが俺の仕事(責任)か?」
そう考えると物凄い重圧がのしかかってきた。
更に、何とも言えない惨めで悲しい気分に襲われた。


「何で俺がこんなことしなきゃならないんだ?」
「生きていくためか?」
「食っていくためか?」
「俺は、こんなことをしなきゃ生きていけない人間なのか?」
その葛藤の中で、私は深く落ち込んだ。
「最低だ・・・最悪だ・・・」
私の心は完全に泣いていた。


あれから、私も歳を重ねた。
葛藤と戦いの日々に変わりはないが、私は強くもなり弱くもなった。
頑張れるときもあれば、頑張れないときもある。
晴れの日もあれば、雨の日もある。


日々の気分にも波はあるし、人生にも波がある。


私には、凪の道ではなく波浪の道が定められているのだろうか(それとも水中?)。


今でもアップアップ状態なのだが、どうせならビッグウェーブを待ちたい(望みたい)。
波にのまれるのもよし、乗れれば尚よし。
それが私の人生。
でも、希望の浮袋を持っていれば、とりあえず溺れることはなさそうだ。


私のアップアップ人生は、まだしばらく続きそうだ。


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2006-10-22 13:06:53より

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リアル

2024-12-13 04:49:59 | 特殊清掃
現場に行ってから、「こんなのありかよぉ」と思うことは多い。
床を埋め尽くすウジの集団、壁を黒く染めるハエの大群、飛び散る血、正体不明の肉塊etc。

私が現場に到着するのは、腐乱死体の本体は警察が回収した遺体の後。
死体本体が残っていることは稀である。

まぁ、「死体本体」と言っても、その溶け具合いによって、指すモノが変わってくるのだが。
溶けた人間が相手じゃ、何が「死体本体」なのか不明確だ。
とりあえずは、骨は本体にあたる。
では、「死体本体」に含まれないものは?
お馴染みの、腐敗液・腐敗粘土・毛髪などの小物(?)がそう。

現場によっては、残された汚物から遺体があった状況がリアルに想像できるところがある。
手足や頭があった位置がハッキリ分かると、結構不気味なものである。
人間の痕を残す汚物が、私の想像力をバーチャルな世界に引き込むのだ。

そんな時は、いつもの手段で脳の思考を停止させるしかない。
防衛策はそれしかない。
ある腐乱現場。
汚染場所は洗面所だった。
洗面台の前に膝まづくような格好で汚染が広がっていた。
その汚染から、シンクに両腕と頭を突っ込み、膝立ち状態だったことがうかがえた。
シンクの内側には無数の頭髪がつき、腐敗液・腐敗脂が溜まっていた。

死後日数がそんなに経っていなかったのだろう、腐敗液はみずみずしい(変な表現?)ままで、腐敗粘土にまではなっていなかった。

大量の髪が小さな排水口に詰まっているらしく、先に腐敗液を除去するしかなかった。
吸水・吸油用のパックを使って吸い取りながら、髪の毛も拭き取った。

排水口が浅いところで詰まっていたのは不幸中の幸いだった。
深いところまで汚染されていると、水回りの管を通じて風呂・トイレ・キッチンにまで悪臭がまわる可能性があるからだ。

アパートやマンション等の集合住宅の場合、その臭いは他住居にまでまわることもある。
「家の水回りから変な臭いがしてくると思ったら、他世帯の腐乱死体臭だった」なんてことも有り得るわけ。
こうなると、部屋の消臭だけではどうすることもできない。
ま、ここではそこまでのことにはなっていなかったので、よかった。

シンクの脇には腕の痕、ワインレッドの液体が伸びていた。
腐敗液の態様からは、警察が遺体を回収した様もうかがえる。
それもひたすら拭き取るしかなかった。
床の汚染も同様。

特掃作業が終わってから、依頼者が現場確認にきた。

「遺体はどんな格好で死んでたんでしょうね?」
そう尋ねられた私は、洗面台の前に膝まづきポーズをとって言った。
「ちょうど、こんな感じだったと思います」

何も考えずに安易な行動をとってしまった私。
とっさに、特掃前の光景が頭を過ぎった。
頭の中で、自分と腐乱死体が重なってしまい、思わず「ウワッ!」と叫んで飛び退いた。

こともあろうに、実際の現場で腐乱死体を代演する自分にこう思った。
「いい度胸をしてるのか、バカなのか・・・」

汚物が人間的だと精神的にキツい!
人間が汚物的だと、これまたキツそうだけど。


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2006-10-20 16:05:29
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笑いのツボ

2024-12-10 05:14:05 | 特殊清掃
この仕事をやっていると、「大変な仕事ですね」と言われることが多い。


その言葉が意味するところは、労い・励まし・感謝であり、嫌悪・蔑み・同情である。
同じセリフでも、声のトーン・顔の表情から、その人が何を思ってそんなセリフを発するのかが、だいたい分かる。


今更、奇異の目で見られたところで気にするまでもないが、時々、「俺って、しょうがないヤツだなぁ」と思うことがある。


ある日の夕方、マンションの一室に出向いた。
依頼者はマンションのオーナー。
現場マンションの駐車場で待ち合わせすることになっていたのだが、約束の時間になってもなかなか現れなかった。


時間を持て余した私は、現場の部屋の前に行き、玄関ドアの隙間から腐敗臭を嗅いだりしながら待っていた。
(※腐敗臭フェチではないので、くれぐれも誤解のないように。中の状況を想定するための行為である。)
それなりの臭いを感じたので、並、またはそれ以上の汚染であることを想像した。


しばらくすると、依頼者がやって来た。
手には、この場に合わないバッグを持っていた。


簡単な挨拶を交わして、とりあえず現場を見ることに。


すると、「今、仕度をしますから」と、依頼者はバッグから何かを取り出した。
上下の雨合羽(深緑色)、ゴーグル、防塵マスク、手袋、長靴etc・・・次から次へと色んなモノがでてきた。
そして、それらを身につけはじめた。


本格的な装備を整えた依頼者は、「一体、これからどこに行くの?」と言いたいくらいの格好になっていた。
軍隊の化学部隊みたいに。
一方の私はいたって軽装。
作業ズボンにスニーカー、半袖のポロシャツ。
衛生用品と言えば、薄っぺらいマスクと手袋ぐらい。


二人のギャップがあまりに大き過ぎて、かなりおかしなコンビになってしまった。
私は、別の意味で回りの人の視線が気になった。


依頼者と私は、現場の玄関の前に立った。
先に嗅いでおいた腐敗臭がしてきて、依頼者の息づかいが急に荒くなってきた。


「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です・・・」
しかし、あまり大丈夫そうではなかった。


「私一人で行ってきますよ」
「え?一人で行ってきてくれるんですか?」
「ええ、かまいませんが」


私は、依頼者の重装備を見回しながら言った。
「せっかく準備をして来られたのですから、一緒に入られてもいいですけど・・・」
依頼者は首を横にプルプルさせながら、「お願いします!」


依頼者は、てっきり自分も現場に入らなければならないものと思って、かなり気を重くしていたらしかった。
そして、その憂鬱さが、現場到着を遅らせたのだろう。


依頼者に現場を見てもらうことはベターなのだが、気が進まないなら見ない方がいい。
凄惨かつインパクトのある腐乱死体現場は、トラウマになって一生引きづることにもなりかねないから。


結局、私一人が現場に入って、中の状況を確認した。
中の見分が終わってから外に出ると、依頼者は重装備のままで「スーハー、スーハー」と荒い呼吸。
中に入った訳でもないのに、前より息が荒くなっていた。
ゴーグルも曇って、回りがよく見えていないようで、玄関から離れる私の後ろをピッタリくっついて来た。


我々は駐車場に戻り、私は中の状況を伝えた。
素人でも理解しやすいように、丁寧に説明。


私の話を黙って聞く、謎の化学部隊員の姿がかなり可笑しくて、思わず笑いながら話す私だった。


「こんな現場でも笑っていられるなんてスゴイですね」と依頼者は感心してくれた。
「いやぁ、こんな仕事だからこそ、自分を鼓舞するために無理矢理笑ってるんですよ」と私はごまかした。


作業の打ち合わせが済み、我々は後日(作業日)の再会を約して別れた。


「俺って、しょうがないヤツだなぁ」と思いながらも、依頼者の姿に笑いを抑えられない私だった。
緊張の糸が解けたのだろう、謎の化学部隊員は、自分の姿が平和な街に馴染まないことに気づかないまま歩き去って行った。


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2006-10-15 10:57:28
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汗と涙(後編)

2024-12-07 05:53:24 | 特殊清掃
「しょうがない!やるしかない!」
私はまず、道具を揃えることを考えた。
代用できる物は、だいたいどこの家にもある。
男性の許可をもらって、あちこちを物色した。
そして、手袋・マスク以外は、台所・風呂・洗面所にある一般の生活用品を使わせてもらうことにした。


一通りの代替道具を揃えてから、私は腐敗液の除去に取り掛かった。
男性は、部屋を出たり入ったりして落ち着かない様子だった。


手始めに固形物の除去。
頭皮付の毛髪(毛髪付の頭皮?)を持ち上げた。
長い髪の毛に腐敗液がベットリの光っており、それが手に絡んでくる様が髪が生きているようで不気味だった。
多少のウジはいたものの、無視できるレベルだった。


次に、腐敗液を拭き取る作業。
厚い部分や乾いた部分は、「拭く」と言うより「削る」と言った方が適切。
私は、床にしゃがみこんで、ひたすら腐敗液と格闘した。
暑い季節ではないのに、私の額と首筋には汗が滲んできて、そのうちに床にポタポタと垂れ始めた。


しばらくすると、男性が寄って来て、黙って私の作業を見始めた。
私は、男性の存在は無視してコツコツと腐敗液を片付けていった。


しばらくの沈黙の時を経て、男性が声を掛けてきた。
「大変な仕事だね」
「よく言われます」
「稼げるんでしょ?」
「そうでもないですよ」
「だったら、なんでやってるの?」
「他に取りえがないもんで」
「そんなことないでしょ」
「残念ながら、そんなことあるんですよ」


男性は、私の作業の過酷さを目の当たりにして同情してくれたのか、横暴キャラから柔和キャラに変身してくれていた。
そして、話しているうちに、お互い打ち解けてきた。


私は、床にしゃがんで手を動かしながら、男性は私の傍に立ったままで会話は続いた。


「娘は自殺した可能性が高いらしいんだよ・・・」
「そうですか・・・」
「女房は、そのショックでまともに話もできなくなってね・・・」
「・・・」
「驚かないんだね」
「職業病ですかね」
「娘は精神科に通ってたらしくて・・・薬を大量に飲んだらしいんだ」
「そうだったんですか・・・」
「精神科に通ってたことすら知らなかった私は、親として失格だよ」


男性は悔しそうに言いながら、自分に腹が立って仕方がないみたいだった。


腐敗液もだいぶ除去できたところで、男性は私の作業を手伝い始めた。
素手でやろうとしたため、私は慌てて手袋を勧めた。


「死んだ娘のためにしてやれることと言ったら、これくらいのことだから」
男性は私と一緒になって床を拭いた。


気づくと、男性の足元にポタポタと雫が落ちている。
どうも、泣いて涙を落としているみたいだった。
悲しくて、寂しくて、悔しくて仕方がないのだろう。
少しは男性の気持ちが分かった私は、気づかないフリをして床を拭きつづけた。


腐敗液の上に男性は涙を、私は汗を落としていた。
涙と汗で拭く腐敗液、こんな局面を故人は想像することができただろうか。


「涙は心の汗って言うよね」
「TVか何かで聞いたことがありますね」
「なんだか涙がでて仕方がないよ」
「涙が心の汗なら、汗は心の涙ですかね?」
「・・・そうかもね」
「現場で汗をかくことが多い私は、心が泣いているのかもしれません・・・こんな仕事はイヤだってね」
「正直言わせてもらうと、色んな意味できつそうな仕事だよね」
「おっしゃる通りです」
「でも、アンタに頼んで助かったよ」
「そう言っていただけると幸いです」
「大家と近隣からうるさく言われて、弱っていたもんで・・・こっちは、娘が死んだって言うのに」
「さっさとここ片付けて、また新しい日を迎えましょうよ」


汚染箇所の掃除と汚物の撤去を終えた私は、汗を拭いながら残された両親の今後を考えた。
そして、眠くなりながら帰途についた。


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2006-10-12 16:32:00
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汗と涙(前編)

2024-12-05 12:47:16 | 特殊清掃
夜の出動は身体にこたえる。
特に、家でくつろいでいる時に出動要請が入ってくると、かなり気落ちする。
その重さは想像してもらえると思う。
普通の仕事でもかなり面倒だろうに、私の場合は行き先にあるものがアレだからなおさらだ。

そんなある日、一本の電話が入った。
ぶっきらぼうな男性が一方的に特掃を指示してきた。
ハイテンションで私の言うことを最後まで聞かない男性は、なんだか怒っているようでもあった。
私の質問にも最後まで答えず、とにかく一方的に、命令口調に近い話し方だった。

私としては、見ず知らずの男性に横柄な態度をとられる筋合いはない。
見積りだけだったら翌日にしてもらおうかと交渉したが、男性は聞く耳を持たず「とにかく、今すぐ来い!」と言わんばかりの勢いだった。

寛容さがない私は、男性の無礼な態度に不満を覚え、見積依頼を断ってしまおうかと思った。
しかし、「いちいちそんなことに引っ掛かっていたんじゃ、死体業なんかできないか」と、気を取り直して現場に向かうことにした。

現場に着いたのは、夜中近くになっていた。
電話をしてきた男性は、イメージ通りの横暴キャラで、私に労いの言葉ひとつ掛けることはなく、いきなり部屋に案内した。

現場は新しいアパートで、フローリングの中央に腐敗液が広がっていた。
汚染としては並。
腐敗液に、頭皮とともにくっついたままの長い髪の毛と部屋の雰囲気が、故人が女性であることを示していた。

男性は故人の父親、つまり、死んだのは男性の娘らしかった。
故人はまだ若そうだったが、雰囲気的な判断で男性に故人の年齢を尋ねることは控えた。
ましてや、そんな雰囲気では死因なんか聞けるはずもなかった。

「故人は若い女性・・・」
私は、とりあえず自殺を疑った。
だから、まず先に汚染箇所に面した壁や天井を観察した。
念入りに凝視したが、首吊りを思わせるようなものは発見できなかった。

自殺方法は首吊りとは限らないが、今までの経験から、まず首吊りを疑う私なのである。

時間も時間だったので、私はそそくさと現場の状況を観察して、特掃の見積金額を提示。
すると、男性は、私が提示した金額に異を唱えることなくすんなり了承した。
私は、電話の時から男性の態度が気に入らなかったので、「仕事にならなくてもいいや」と、始めから値引き交渉には乗らないつもりでいた。
しかし、予想に反して男性の方から値引要請はなかったので少し拍子抜けした。

金額の問題はあっさり片付いたのはよかったが、それからが問題だった。
男性は、「これから直ちに作業してほしい」との依頼(指示)してきたのだ。

「えっ!?これから?」私は困った。
現場見分・見積だけのつもりで来たため、ろくな装備がなかったためだ。
明日、夜が明けてからの出直しではダメなのかどうか交渉したが、男性は頑として受け付けてくれなかった。

「わざと俺を困らせているのか?」
「俺が困る様を見て楽しんでいるのか?」
私は疑心暗鬼になってきた。

どんなに頑張っても、できることとできないことがある。
私は、最初より低い姿勢をとって(チャッカリしてるでしょ)作業スケジュールを交渉した。
それでも、汚染部分の清掃と汚物の撤去は当夜中に行うことになった。

「上等だよ!やってやろうじゃないか!」
私は、ヤケクソ気味に特掃の仕度にとりかかった。

つづく



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2006/10/11 15:54:02
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女心Ⅱ(前編) ~独居女の悲哀~

2024-11-22 07:09:31 | 特殊清掃
統計によると、自殺者数の性別比は、だいたい男7:女3らしい。
私の経験からもそれは実証されている。
また、孤独死の数も男性の方が多いと思う。


自殺をする人間を一概に「弱い」とするのは軽率かとも思うが、生きることの本質においては男性より女性の方が強いのだろう。
平均寿命が男性より女性の方が長いこともしかり。
ちなみに、街で見かける浮浪者は、圧倒的に男性が多いことにも 何か共通するものがあるような気がする。


中年の女性が孤独死した。
離婚経験のある故人は、子供もいなかったらしかった。


「オシャレな人だった」
「上品な人だった」


遺族の言葉通り、部屋はきれいに整理整頓されており、インテリアもオシャレにコーディネイトされていた。


ただ、どんなにオシャレできれいな部屋でも、腐乱死体がだいなしにしてしまう。
腐乱の程度は酷かったが、汚染状態はシンプルだった。
主だった汚染は布団とベッドくらい。
それを撤去してウジ・ハエを始末してしまえば、見た目には普通の部屋になった。
「見た目には」というのは、「腐乱臭はバッチリ残っている」ということ。


遺族は、「いくつかの物を持ち帰りたい」と言う。
廃棄物が少なくなるのは私にとっても助かることなので、家財の選別を手伝うことにした。


その前に、消臭剤を噴霧し、窓を開け、悪臭を軽減させた。
それから、遺族にマスクと手袋を渡して、部屋に入ってもらった。
遺族は、あれこれと相談しながら捨てる物と捨てない物を仕分け始めた。
汚染物を片付けたとは言え、遺族は、腐乱部屋には入りたがらなかった。
その部屋は悪臭も強く、何よりも精神的に抵抗があるようだった。


そういう訳で、その部屋にある荷物の分別は私が代行することになった。
タンス・書庫・収納ケース・引き出し類の中身を一つ一つ確認。
そして、それらの物の必要or不要を隣の部屋で作業中の遺族に尋ねた。
必要な物は遺族のいる部屋に運び、不要な物は廃棄物袋にポイッ。


部屋には小さな仏壇があった。
家具調の仏壇で、特に汚れてもいなかった。
私は、遺族が見やすい所まで仏壇を移動して、その処分についての指示を仰いだ。


遺族は、仏壇を捨てるかどうか悩んだ。
「捨てたいのに捨てられない」と言った感じで。
アドバイスを求められた私は、あくまで個人的な見解であることを前置きしてから応えた。


「仏壇や位牌なんて、 ただのモノ」
「魂や霊とは関わりのない」
「家具やインテリアと同じ」
「物理的な存在を維持するには限界がある」
「したがって、捨てたって構わないと思う」


それを聞いた遺族は、「そりゃまた極端な考え方だなぁ・・・」と、割り切れない様子だった。


自論を吐いた私も、ほとんどの人には賛同を得られない理屈であることは承知していた。
後は、遺族の判断を待つしかなかった。


結果、位牌などの中身だけを持ち帰って、仏壇本体は廃棄することになった。
よくあるパターンの結論だ。


私は、仏壇の中身を丁寧に取り出し、一つ一つを遺族へ渡していった。
下部の引き出しからは、経本や予備の線香・ローソクなどがでてきた。


そして、その中に、布に包まれた細長いモノがあった。
手に取ると、ズシッとした重量感。
「多分、仏像だと思います」
「この大きさでこの重さだと、高価なモノだと思いますよ」
と調子のいいことを言いながら、うやうやしく布をめくってみた。


「ん?何だこりゃ!」
そこで私が目にしたモノとは・・・


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2006-10-02 17:59:32
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