男性の事情を詳しく説明すると・・・
男性は、彼女イナイ歴が長いみたいだった。
しかし、最近になってやっと仲良くできる女友達ができた。
何かの時にアウトドアレジャーの話になり、その会話は結構盛り上がった。
ありきたりの飲食に飽きていたのか、その女友達はバーベキューに強い関心を示し、その反応に着火点を得た男性は、やったこともないバーベキューに思い切ってチャレンジしてみることにした。
未経験であることを隠して。
そして、ある日の夜、その娘を呼んでバーベキューパーティーを決行。
予行演習なしの、ぶっつけ本番だった。
炭には簡単に火が着くものと思っていた男性は悪戦苦闘。
この辺りから、熱く燃えかかっていた二人の関係に冷たい空気が漂い始めた。
やっとのことで炭に火を着けた時は、女心の火はは風前の灯火。
そのうち、彼女は「虫が恐い」だの「寒い」だの言い出し、ベランダのバーベキューコンロは室内に移動せざるを得なくなった。
しかし、コンロを室内に持ち込んだら持ち込んだで新たな問題が発生。
炭の火力をコントロールできず食材を焦がしまくり、部屋中に煙が充満したのだ。
これにも彼女は文句タラタラ。
結局、楽しくなるはずのパーティーは、ものスゴク寂しい終わり方をし・・・炭火と恋の炎は、あえなく鎮火したのだった。
とりあえず女友達の気を引き、いいところを見せたかった男性の心意気とその後の悲哀に同情し、料金も割安に脱臭作業に勤しむ私だった。
私が思うに、男性は見た目もキャラクターも恋人ができなようなタイプではなかった。
だから、これを教訓に女性を相手に嘘をつくことの限界を心得て、もっと自然体で仲良くできる女友達を見つければいいと思った。
この後、男性は彼女のハートに火を着けることができたかどうか・・・私には定かではない。
別の日、別の現場。
マンションの玄関を開けると、いつもの腐乱臭。
プラス、何かが焦げたような臭いがミックスされて、何とも言えない不快な悪臭が漂っていた。
依頼者から、「汚染箇所はトイレ」と聞いていたので、ほとんど役に立たない簡易マスクを頼みの綱にして、私は迷わずトイレに向かった。
そして、躊躇うことなくドアを開けた。
「何?!・・・」
死因や現場の詳しい状況を聞かされてなかった私の目に、奇異な光景が飛び込んできた。
狭いトイレの床には、不気味な模様を浮かべた茶黒い元人間。
白い便器と赤黒い元人間とのコントラストが鮮烈。
いつものコレはいいとして、何よりもインパクトがあったのは、便器の傍らに置いてあったバーベキューコンロ。
「こんな所で、バーベキュー?・・・そんな訳ないか!」
コンロの上に網はなく、中の炭は不完全燃焼の状態の黒い塊で残っていた。
部屋の中でバーベキューをやる人も珍しいけど、トイレの中でバーベキューをやる人はまずいないはず。
故人が、一酸化炭素中毒による自殺を図ったこと、そして一人で死んで腐っていったことは誰が見ても明白だった。
何故だか、風呂やトイレの腐乱現場は、強いグロテスクさを感じる。
実際は、部屋での腐乱と大差ないのかもしれないけど、感覚的にそのスペースの狭さが悪臭と悪景観を濃縮させるのかもしれない。
私は、まず先にバーベキューコンロをトイレから運びだした。
故人が決死の覚悟で運び込んだものを、私が生きる糧として運び出す、何とも因果な対比を感じさせる作業だった。
「こんな使い方もあるもんなんだなぁ」
「準備するのに、結構な手間がかかっただろうな」
故人の死を痛む気持ちを持たず、この状況を一つの仕事として割り切っている自分に、人間の寂しい冷たさと人間が生きることの悲しい強さを見たような気がした。
「火事になったらどうすんだよ!」
「他人まで巻き添えにしかねなかったぞ!」
腐敗液にまみれた足元の容器を持ち上げて、私は憤った。
それは、着火用に使ったと思われるホワイトガソリンだった。
ここにも、他人の不幸も顧みない人間の寂しい冷たさと人間が死に向かうことの悲しい強さを見たような気がした。
その後の特掃作業自体は特記するようなこともなく、いつものようにベソをかきそうになりながら格闘するのみだった。
これから暖かい季節になると、私にとってのバーベキューシーズンがやってくる。
炭火も心の炎も、なかなかコントロールしにくいもの。
ま、焦がすのは魂くらいにして春夏を謳歌しようと思う。
公開コメントはこちら
特殊清掃プロセンター
遺品処理・回収・処理・整理、遺体処置等通常の清掃業者では対応出来ない
特殊な清掃業務をメインに活動しております。
男性は、彼女イナイ歴が長いみたいだった。
しかし、最近になってやっと仲良くできる女友達ができた。
何かの時にアウトドアレジャーの話になり、その会話は結構盛り上がった。
ありきたりの飲食に飽きていたのか、その女友達はバーベキューに強い関心を示し、その反応に着火点を得た男性は、やったこともないバーベキューに思い切ってチャレンジしてみることにした。
未経験であることを隠して。
そして、ある日の夜、その娘を呼んでバーベキューパーティーを決行。
予行演習なしの、ぶっつけ本番だった。
炭には簡単に火が着くものと思っていた男性は悪戦苦闘。
この辺りから、熱く燃えかかっていた二人の関係に冷たい空気が漂い始めた。
やっとのことで炭に火を着けた時は、女心の火はは風前の灯火。
そのうち、彼女は「虫が恐い」だの「寒い」だの言い出し、ベランダのバーベキューコンロは室内に移動せざるを得なくなった。
しかし、コンロを室内に持ち込んだら持ち込んだで新たな問題が発生。
炭の火力をコントロールできず食材を焦がしまくり、部屋中に煙が充満したのだ。
これにも彼女は文句タラタラ。
結局、楽しくなるはずのパーティーは、ものスゴク寂しい終わり方をし・・・炭火と恋の炎は、あえなく鎮火したのだった。
とりあえず女友達の気を引き、いいところを見せたかった男性の心意気とその後の悲哀に同情し、料金も割安に脱臭作業に勤しむ私だった。
私が思うに、男性は見た目もキャラクターも恋人ができなようなタイプではなかった。
だから、これを教訓に女性を相手に嘘をつくことの限界を心得て、もっと自然体で仲良くできる女友達を見つければいいと思った。
この後、男性は彼女のハートに火を着けることができたかどうか・・・私には定かではない。
別の日、別の現場。
マンションの玄関を開けると、いつもの腐乱臭。
プラス、何かが焦げたような臭いがミックスされて、何とも言えない不快な悪臭が漂っていた。
依頼者から、「汚染箇所はトイレ」と聞いていたので、ほとんど役に立たない簡易マスクを頼みの綱にして、私は迷わずトイレに向かった。
そして、躊躇うことなくドアを開けた。
「何?!・・・」
死因や現場の詳しい状況を聞かされてなかった私の目に、奇異な光景が飛び込んできた。
狭いトイレの床には、不気味な模様を浮かべた茶黒い元人間。
白い便器と赤黒い元人間とのコントラストが鮮烈。
いつものコレはいいとして、何よりもインパクトがあったのは、便器の傍らに置いてあったバーベキューコンロ。
「こんな所で、バーベキュー?・・・そんな訳ないか!」
コンロの上に網はなく、中の炭は不完全燃焼の状態の黒い塊で残っていた。
部屋の中でバーベキューをやる人も珍しいけど、トイレの中でバーベキューをやる人はまずいないはず。
故人が、一酸化炭素中毒による自殺を図ったこと、そして一人で死んで腐っていったことは誰が見ても明白だった。
何故だか、風呂やトイレの腐乱現場は、強いグロテスクさを感じる。
実際は、部屋での腐乱と大差ないのかもしれないけど、感覚的にそのスペースの狭さが悪臭と悪景観を濃縮させるのかもしれない。
私は、まず先にバーベキューコンロをトイレから運びだした。
故人が決死の覚悟で運び込んだものを、私が生きる糧として運び出す、何とも因果な対比を感じさせる作業だった。
「こんな使い方もあるもんなんだなぁ」
「準備するのに、結構な手間がかかっただろうな」
故人の死を痛む気持ちを持たず、この状況を一つの仕事として割り切っている自分に、人間の寂しい冷たさと人間が生きることの悲しい強さを見たような気がした。
「火事になったらどうすんだよ!」
「他人まで巻き添えにしかねなかったぞ!」
腐敗液にまみれた足元の容器を持ち上げて、私は憤った。
それは、着火用に使ったと思われるホワイトガソリンだった。
ここにも、他人の不幸も顧みない人間の寂しい冷たさと人間が死に向かうことの悲しい強さを見たような気がした。
その後の特掃作業自体は特記するようなこともなく、いつものようにベソをかきそうになりながら格闘するのみだった。
これから暖かい季節になると、私にとってのバーベキューシーズンがやってくる。
炭火も心の炎も、なかなかコントロールしにくいもの。
ま、焦がすのは魂くらいにして春夏を謳歌しようと思う。
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