日々のできごと。生物準備室より

理科教育、生物教育に関して考えたことをぼちぼち更新。たまに授業実践報告をします。

”コピペ”(遺伝子重複)の重要性

2014-08-09 11:50:22 | 最近読んだ本
分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史 (ブルーバックス)
 
講談社


ヘぇ~と思ったところを忘れないようにメモ 

プラトンのイデア説やキリスト教の創造神話が合体した静的な世界観を覆したダーウィンの功績。
 「種は変わり得る」という証拠である痕跡器官。その器官を作る遺伝子は他の必要な器官等の形成に関わるから、遺伝子そのものがOFFにはなれない。

遺伝子重複の重要性。一方で生存に必要な遺伝子を保持するので、もう一方は多様に変化することができる。

 「分子時計」の発見の一人はライラス・ポーリング。NHKドラマ「DNA物語」で、ワトソン&クリックがひたすら恐れていた人物。分子時計は着目する分子によって進化速度が異なるのは構造的制約をどの程度受けるかどうか決まる。DNAを巻き付けられるヒストンはガチガチに制約されるために速度は遅く、フィブリノーゲンから切り捨てられるフィブリノペプチドはそもそも自体に機能がないから進化速度は早い。この辺りの機能的制約は、物理的・化学的に証明できるというから面白い。(数式は読み飛ばしたけれど)

 遺伝子の進化速度は発現している組織に依存し、多くの組織で発現している遺伝子はごくわずかで発現している遺伝子よりも進化が遅い。
 

 カンブリアの大爆発に見られるような形態の多様化は、いきなり起こった訳ではなく、それまでに遺伝子重複を繰り返し、遺伝子族が多様化するという下地ができていた。


 器官の進化は「便宜主義」。既に使われている遺伝子や器官を別の目的で利用。(酵素タンパク質を構造タンパク質として利用する等)
 


 「単純な構造→複雑な構造」の落とし穴。常により複雑な構造に進化している訳ではない。退縮しシンプルになることもある。


 ヒトに見られる赤色オプシンの多型。180番目のセリンがアラニンに変わると、吸収する波長が橙色に変わる。セントラルドグマの学習において、DNAの配列がタンパク質の発現に影響する分かりやすい例として活用できないかなとワクワク。既にSRIS先生が紹介していたような・・・。


 つい最近まで資生堂と関係があると思い違いしていた木村資生博士の「中立説」は、どうしても博物学的に捉えていた「進化学」を「分子生物学」に何となく繋げることができた説で、YMNI先生が開発した中立説をアナログに再現した教材(最新の理科教育研究にも載っていた)の面白さを再確認。今年も使わせてもらおう。