goo blog サービス終了のお知らせ 

かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 280 トルコ②

2024-02-16 09:28:46 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
   【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放

   
280 寒いほどのひとりぼつちにあくがれきうすきゆだるにまた船が入る午後

      (まとめ)
 「寒いほどのひとりぼっち」は井伏鱒二の「山椒魚」の主人公である山椒魚が岩屋から出られなくなって吐く言葉からきているのだろう。「うすきゆだる」は地名「ウシュキュダル」。石井照子氏のエッセー「旅行随行記」(「短歌」2002年1月号)に教えられた。生暖かい空気感が伝わってくるようなひらがな表記だ。このひらがな表記と不思議なリズムが、旅の途上、船着場にまた新しい舟が入ってくるのを眺めている少しアンニュイな気分を醸しだしている。そして景の類似から谷川の岩屋に閉じこめられた山椒魚のことを思ったのではなかろうか。「寒いほどのひとりぼっち」にあこがれた若い日の厳しい精神の在りようを懐かしんだのかも知れない。「うすきゆだる」という名詞のせいもあるが、6・7・5・7・9と字余りだ。「また」が無ければ結句は7音で収まるが、「また」はどうしても言いたかったのだろう。何度も船が入ってくるのを目撃しているのだ。(鹿取)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする