かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 261

2024-10-12 08:49:40 | 短歌の鑑賞
 ※昨日から、今年8月実施の報告をアップしています。
体調の悪い会員が複数出て、圧倒的少人数で勉強会をしています。
渡辺松男研究に参加出来そうな方がありましたら、ぜひご連絡ください。
場所はJR戸塚駅徒歩5分の戸塚フォーラム、日時は不定期です。

  渡辺松男研究2の34(2024年8月実施)
     Ⅳ〈白骨観〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P167~
     参加者:M・A、岡東和子、鹿取未放、
          菅原あつ子(紙上参加)、山田公子(紙上参加)
     司会と記録:鹿取未放


261 白骨観なまぬるき風ふきつづけコンクリートいちまいいちまいはがす

    (紙上意見)
●固く壊れないもののようなコンクリートもいつかは壊れはがされて行く。白骨感の
長い時間の目でみれば…ということか…(菅原)


●固く剝がれようのないコンクリートを一枚一枚剥がす行為こそが、自身や他者の生き
た身体が白骨化してゆく様を観ているようである。(山田)


       (当日意見)
★風がコンクリートを剥がすというのが、ちょっと分からない。タイルなら一枚一枚っ
 てあるけど、コンクリートは一枚とは言わないのでは? コンクリートを剥がすの
 はドリルで穴を開けて無理矢理でないと剥がせないので、人生の剥がしがたい何かを
 剥がすのだろうかとか考えました。でもなまぬるき風がコンクリートを剥がすとは思
 わなかったので、この風がよく分からない。それから「白骨観」との繋がりもよく分か
 らない。菅原さんの「白骨感の長い時間の目でみれば」を拝見して、なるほどとは思っ
 たんですが。(M・A)
★体が白骨化するまでって、どれくらい時間が掛かるのでしょうかね。(岡東)
★土の温度とか水分の有る無しとか、周囲の環境とかによって違うみたいですね。
  (M・A)
★沙漠とかだともっと早いんですね。でも、コンクリートは50年くらいしかもたない
 みたいですよ。(岡東)
★渡辺さんの絵の中でどういうふうに描かれているのか。主語と述語の関係を考える
 と、なまぬるい風がコンクリートを剥がすとなるんですけど。渡辺さんの歌だから訳
 分からないけど面白いって読み方をしてもいいのかな。私は自分の感覚に従って作品
 に即して読もうと思っているのですが。作者を理解しようとして読むのは大事だと思
 うけれど、ある人の特定の世界という文脈で読むのは自分としては抵抗があります。
 知らないからそう思うのかもしれませんが。(M・A)
★冷たい風ならまだ分かるけど、なまぬるい風だからね。(岡東)
★なまぬるき風は怪談のイメージの風かな、なんとなくじめっとして何かおどろおど
 ろしいことが起こるような。その風に誘われてコンクリートが一枚ずつ剥がれてい
 く。コンクリートは道いっぱい何キロも繋がっているので一枚とは言えないけど、
 ある部分を切り取った何層にもなったコンクリート、パイの層みたいなイメージを抱
 きました。それが次々に剥がれていくと、元の地面が見えて、その下には沢山の白骨
 が埋まっているのかもしれない。初句に「白骨観」とおいているからこれがヒントにな
 ります。以下は空想で良いわけです。だから風が物理的な力でコンクリートを剥がす
 わけではないのです。現実には起こらなくていいのです、牧師さんが自分の死後の白
 骨を瞑想しながら食事するように、松男さん流にこういう瞑想をしているんですよ、
 きっと。メメント・モリということでしょう。(鹿取)
★なるほど、そうですね。おっしゃることはとてもよくわかります。(M・A)
★さきのM・Aさんの発言に対してだけど、私は渡辺松男を理解しようと思って読ん
 でいるけど、松男さんの歌だからどれも素晴らしいとは思わないです。割とリアル
 な職場をうたった歌などは、私は苦手ですね。(鹿取)」
★私なんかは一つ一つの言葉にこだわって全体を見られなくてダメですね。(岡東)


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