かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 262

2024-10-13 10:27:06 | 短歌の鑑賞
 ※昨日から、今年8月実施の報告をアップしています。
体調の悪い会員が複数出て、圧倒的少人数で勉強会をしています。
渡辺松男研究に参加出来そうな方がありましたら、ぜひご連絡ください。
場所はJR戸塚駅徒歩5分の戸塚フォーラム、日時は不定期です。

  渡辺松男研究2の34(2024年8月実施)
     Ⅳ〈白骨観〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P167~
     参加者:M・A、岡東和子、鹿取未放、
          菅原あつ子(紙上参加)、山田公子(紙上参加)
     司会と記録:鹿取未放


262 ヨブの柩南天に浮き冷ゆるなりにんげん歩みくるしみをする

    (紙上意見)
●死があるから、人は苦しみ神を求める。ヨブの苦しい生と死に意味はあるのかとい
 う問か… (菅原)


●ヨブの柩とは、イルカ座の別名で、このひし形が本当にヨブの柩に似ているかは分か
 らないが、明るくない星座であるというところが、無実であるにもかかわらず、あ
 らゆる苦難を与えられた神への信仰を捨てなかったヨブに…心寄せる私がいます。多
 分、松男さんも? (山田)


    (当日意見)                               
★この歌は好きです。私は山田さんのレポートを見るまで「ヨブの柩」 が星座のこと
 だとは知りませんでした。旧訳聖書のヨブは分かりますが、まあ、松男さんの空想
 の中ではヨブの棺は常に天にある存在なのかなあと思っていました。星座だって分
 かったことで、スケールが大きくなって、空間的な広がりを感じます。下の句、もし
 私が作ったら人間が苦しむは言えると思いますが、「歩み」は言えない。「歩み」が松
 男さんですね。(鹿取)
★ヨブが大事ですよね、ヨブでなければ下の句に繋がらないですね。ヨブという苦し
 い道を歩いた人の話を採りこんで松男さんの世界は広いなと思うのですが。「ヨブ
 の柩」は天の川の牽牛星の近くなんですね。菱形で小さくて暗くて。(M・A)
★松男さん、クリスチャンではないけど。神はヨブをこれでもか、これでもかというよ
 うに試みるんですね。ヨブは元はお金持ちだったんだけど、子供も亡くし、お金も
 無くし、恐ろしい皮膚病になり、それでもヨブは神への信仰に揺るぎがなかった、そ
 れで神はヨブを元のお金持ちで健康な体にした。私は信仰が無いのでその結論があま
 り納得出来ないんだけど。でも、そこに至るまでの苦難というのは大変なもので、ま
 さに「歩み苦しみをする」んですよね。(鹿取)
★ヨブだけじゃなくて、神はいろいろ試みをしますよね。背く者は許さないし。戦争も
 させるし。この歌、星座としてうたったのはちょっといいかなと思います。とくに
 「柩」が「南天に浮き冷ゆるなり」はイメージがぞくっとしていいですね。思考も深いけ
 ど知識が豊富で、付いていくのが大変って所もありますけど。(M・A)
★松男さん、星座にもかなり興味があるようですよ。歌集には星座の歌もあるし、宇
 宙図の歌とか出てきますしね。(鹿取)


     (後日意見)
 重大な間違い発言をしていたけれど、ヨブを試みるのはあくまでサタンであって神ではないそうだ。「ヨブの柩」は夏の星座で、日本での呼び名は菱星。(鹿取)

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