かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 176

2021-03-03 20:13:27 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究22(2014年12月) 【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
      参加者:石井彩子、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:石井 彩子  司会と記録:鹿取 未放


176 闇は隅から来るものなりて校庭の鉄棒も子も見えなくなりぬ

       (レポート)
 校庭に立っていると、周りは薄闇なのに、隅はもう真闇に覆われ、鉄棒も子も等しく見えなくなった。この歌をこどもを主格として、物語風にも解釈できるが、渡辺氏は物を語る作家ではない。時空を超え、時には因果律さえ凌駕して、詩的真実を紡ぎだす作家である。テーマは闇である。物の形が見えなくなる黄昏時の、異界に入っていくかのような景を巧みに捉えている。現代人は照明器具の発達により、ほとんど闇を意識しなくなったが、氏は灯りの乏しかった時代の人々と同じ思いで、闇の本質を見つめているのかも知れない。(石井)
      

     (意見)(2014年11月)
★黒の中にも濃淡があるような感じがうまく表現されている。現代人はほとんど闇を意識しなくな
 ったというレポーターの解釈は、作者はそこまでは言っていないかなと思う。(真帆)
★単純に実感としてわかる歌。立ち位置がよく分からないけど、周辺から闇が迫ってくる感じ。だ
 からレポーターの言うように「異界に入っていく」ほどの感じではないと思う。(鈴木)
★闇が隅から来るという捉え方は的確だと思う。〈われ〉はどこかから子どもを見守っているとい
 う設定なんでしょうね、何か闇の怖さとか子どもがどこかへ連れ去られるような不安感とか、女
 性だとそういうところに繋がっていくんだけど、この歌はそういう具体的な不安とは違うのかな。
やっぱり、もっと闇の持つ本質みたいなものに迫ろうとしているのかなと思います。(鹿取)


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