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安保法制を開けたら日本会議が見えた

2015-06-15 15:19:28 | アジア情勢複雑怪奇

いやいやいや、面白い展開になってきました。

外国特派員協会が憲法学者の長谷部先生、小林節先生を招いてインタビューをやっていた。安保法制が違憲であるという指摘を受けても、政府は学者の意見など無視するのが正しいといわんばかりの姿勢を取っているわけで、この企画はタイムリーと言えるでしょう。

その中で、しかし、思わぬご発言が・・・。

【生中継】法学者 長谷部恭男氏、小林節氏の記者会見
https://www.youtube.com/watch?v=i5bALbGYX3k

質問者(エコノミストの人)の質問に政府の態度には日本会議の影響があるのかという質問が含まれており、それに対して、小林節先生のお答え。書き起こすと以下の通り。上のビデオの25分あたり。

日本会議はわたくしはたくさん知り合いがいるので、わたくしが答えることになるのですが、
日本会議の人たちに共通する思いは、第二次世界大戦で負けたことを受け入れ難い、だからその前の日本に戻したい。彼らの憲法改正もそうですし-明治憲法と同じですし。

つまり、明治憲法下の世界の軍事大国、五大国、五つの大国のひとつとなってアメリカと共に世界に進軍したいという思いを共有する人々が集まっていて、かつ、
それは、自民党の中に広く根を張っていて、かつ、
よく見ると明治憲法下でエスタブリッシュメントだった人の子孫が多い、

そうすると、make senseでしょ(笑顔)


いやぁ~、簡潔明瞭なお答えだと思いますです。

そして、私が直ちに思い出したのは、1年ぐらい前にチャンネル桜に伊藤寛さんが出てた時におっしゃったこと。小林先生と異口同音だと思った。概略こんなことをおっしゃった。

今後の日本はどうあるべきかについて、いくつかの考え方があると思うんです、チャンネル桜にでてらっしゃる方々は、明治憲法下に戻ることをお考えかもしれませんが、僕はそれはとりません。

そう、小林先生やら伊藤さんは、自民党の内部、日本会議に集まる面々をよくご存じの方たちなんですよね。そして、その上で、この方向性はマズイ、マズイだけでなく上手くいくわけもないとのご判断から、表だってのご批判をされている。ここが重要って感じでしょうね。

■ 誰かの夢につりこまれそうだった日本

私が思うに、日本は実際これらの誰だかわからない一群の夢につりこまれそうな危機にある、またはあったと思う。

で、明治憲法時代においても五大国なんて常時確定しているようなものはなかったんだけど、このある種の妄想がバカにできないのは、小林先生も自民党の中に広く根を下ろしていると語ってらっしゃるけど、日本の中にも一定程度あると思うんですよ、この妄想。

それは例えば、G7への執拗なこだわりなんかもその一例でしょう。私たちは「格」が上なんだ、ってことの証として拘ってると思う。

復古主義、回顧主義みたいなことを語る人たちの頭の中にあるのは、おそらく第一世界大戦後のほんの一時期にあった、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、そして日本、が五大国だった時代のことなんじゃないかと思う。

でも、そこに勝手にドイツを加えて、英米仏+ドイツ+日本、とかしているような気もする。

で、彼らにとってはこのグループが「格上」。一等国とかいう言葉が確かにあった。

で、この枠組みからすれば、必然的に、中国、ロシアへあたりが五大国になっている現在の国連体制は彼らにしたら許しがたい暴挙となる。そこで、尚のこと、連合国に対する敗戦なんか認められなくなって、負けたにしてもそれはアメリカに負けたのだ、みたいな方向に軌道が修正されていく。ポツダム宣言に対する拒否反応もここに結びつく(連合国からの申し渡しだから)。

ということは、これら復古妄想派にとって冷戦時代というのは、誠に気分のいいものだったと思うんですよね。英米仏、西ドイツあたりと競う日本で、中露は「あちら」の悪しき世界だったから。なにか、自らの正しさが証明されかのような気分だったんだろうと思う。

そういえば、アメリカは第二次世界大戦で敵を間違えたのだ、日本をたたき中国共産党を支援するようになったのは間違っている、という論が日本では根強い。

ここから、アメリカは実際には中国と並んで、あるいは中国を助けるために日本をたたいた、という視点が完全に「誤り」として退けられる。しかし、そんなことは事実ではないのね。そこで、いやそれはコミンテルンが悪いのだ、アメリカも騙されたのだ論が極大化されて流布される。

事実だろうがなんだろうが彼らにしてみればこんなことは受け入れられない。しかし事実だ・・・。

と、事実が事実として露見しそうだったのは(というかしたんだが)冷戦構造崩壊時。ソ連が崩れたことは彼らにしてみたら当然そうあるべきものであっただろう。ところが中国が崩れない。これは許せない。過去10年ぐらい毎年沸き起こる中国の崩壊、消失、分裂、みたいな本とか論は、この願望の表れだろうと思う。しかし、中国共産党を優先的な党とする制度の変更はあるだろうが、チャイニーズというアイデンティティを持った人々のユニティーは無くならない。(次に来るのは、チャイニーズなどというアイデンティティを持った人などいなかった、ってな話。そんなことを教え込んだのはソ連だ、コミンテルンだ、と昔から変わらない)

というわけで、上で小林先生がおっしゃる「第二次世界大戦で負けたことが受け入れがたい」というのは、ちょっと言い足りないように思います。1930年ぐらいの日本が東アジアで優位に立っていた時代こそ正常であるという(しかしその時だって別に余裕のある帝国ではなかったのだが)「願望」が粉砕されたことが受け入れがたい、というのがより正しいんだろうと思う。

■ 精度があらくてよかった

いやしかし、振り返ってみるに、この安保法制の理論武装があますぎて、さらにそれを推進しようとする議員たちの頭の具合が良好でなかったために、穴が開いてそこから日本会議が覗きこめるようになったわけだけど、もしそうでなかったらと思うと怖いっす。

このへんで、

「八紘一宇」と外征

問題化しなかった時、もうこれはこのままどこまで行くんだろう、自民党も行くとこまで行っちゃったな・・・だったわけだけど、ついに立ち止まったかという感じか。逆襲はあるんだろうか?


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