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文明の衝突と不介入主義外交西部邁ゼミナール 2015年2月15日放送

2015-02-16 16:04:06 | 欧州情勢複雑怪奇

文明の衝突と不介入主義外交西部邁ゼミナール 2015年2月15日放送

 

一年ぶりに伊藤貫さん登場。

文明の衝突というワードが出て来るのが実際今日的に重要だと思うなぁ、いやほんと。

というのはアメリカはどういう国なのかをアメリカ人たちが困惑しているというのが実際には密かに問題だと思うから。

ISISの話について、オスマン帝国とヨーロッパの関係からお話され、オスマンが大きくて強くて攻め込まれた欧州側がオスマンを恐れていたが、その次に、プロテスタント・リフォーメーションと産業革命で強くなった欧州側にオスマン側が苛められる側に入る。だからオスマン側またはイスラム側は欧州の価値観からすれば300年間遅れてるような状態で、そこを今すぐ10年で変われみたいなことを言ったってそれは無理で傲慢な話だ、と。

さらに第一次世界大戦後に主に英仏がこの地を勝手に分割した。その分割は民族的な集団を分断するような仕掛けになっている。だから纏まれないようになっている。

その上さらに、1947年からイスラエルが勝手に入り込んできて建国騒ぎになる。

と、伊藤さんはスタンダードな流れを抑えていらっしゃって安心した。

というのは、日本では右派も左派も、なんだか知らないけど第一次世界大戦後に英仏が国境線を勝手にいじくったことが問題だ、という話をやたらにしてるように思うから。

しかし問題はそこだけじゃないでしょ? その前にじゃあオスマンそのものをあの時点で温存できたのかという問題があるし、とりあえず国境線を引いた後、イスラエルが入り込んで、誰の言うことも聞かずまっしぐらに武力侵略路線を追求しているのも問題でしょ?

と考えてくるに、日本の言論人のこの間の問題の立て方が妙だったのは、思うにそこを追及するとイスラエル批判になるからではなかろうか?

これが面倒なので、英仏のサイクス・ピコ条約あたりだけにフォーカスを当てようとしているんじゃないのか、など思う。で、この路線はISISの公式声明みたいなのもそうだよね。サイクス・ピコをはじめとして英米が勝手に敷いた路線を俺らは許さないとイスラム世界は考えてる、というもの。

しかし、これって巧妙に(全然巧妙じゃないんんだけど)イスラエル要因を無視している仕掛けのように思う。

が、全然巧妙じゃないわけで、伊藤さん始め欧米の知識人たちはそんなもんにひっかかるわけもなく、問題の根は英仏という the West 本体にあることはあるが、最新のレイヤーにはイスラエル問題があるということを理解しているでしょう。

バカみたいな話だけど、日本って相対的に西洋史に疎い社会なので、これで通じちゃうのかもなぁ。

■ カオスに進む方がいいと思っている派が確実にいる

20分ぐらいからの、アルカイダなんかのスンニ派グループとシリアを含む(アサド周辺はアラウィ―だから)シーア派が終わらない戦争を戦ってるのはイスラエルにとって好都合という考えを持っている人たちが確実にいる、という話も重要。

別に陰謀論じゃなくて、実際そういう発想をする人たちがいるわけですよ、世の中には。

■ 問題は dignityだ by スコークロフト

22分ぐらいからの、アメリカのブッシュ父政権時代に安全保障補佐官だったスコークロフト氏の発言紹介も大事。

アメリカはアラブ世界を1945年以来自分たちの都合のいいように使って来た、と。つまり、ある時はこっちに味方して、またある時はこっちと敵味方を替えてみたり、自由と民主主義が大事だといいながら王政の、自由とも民主主義とも縁もゆかりもないところを支援してみたりしてる。こんなことをやっているのでアラブ世界はアメリカ人のいうことを何にも信用していない。どうせ嘘ばっかり言ってる、としか思ってない。彼らは結局、dignity(尊厳)を求めているんだ、という話。

実にまったくそうでしょう。

■ イスラム&正教

でもってここではアラブ世界の話とされてるけど、今日的にこれが、インドから西の主にイスラム世界と、そこにロシア世界がこの線でぴったり一致していることが重要ではないかと私は思う。

ロシア世界はソ連じゃない歴史的存在としてその地位を回復しだすと正教世界になる。となるとその隣接地帯はイスラムで、この組み合わせは、対西ローマ世界(これが the West)では一致しているところが多々あるわけですよ。

最近ロシアはエジプトとの関係強化を進めているし、シリアとは現状同盟関係にあり、トルコはロシアとの関係を生暖かいものにし、ギリシャがモスクワを見るようになって、キプロスに至ってはロシアに基地を使わせてもいいよ、など言いだしているわけで、これって東地中海チームができつつあるんじゃないか、と思うわけです。

このへんで書いたこと。

対ロシア制裁と黒海・地中海

で、この本旨はどこにあるかといえば、それって対 the West なんじゃないかと、私は考えるわけです。半分趣味の入った妄想ですが(笑)、逆十字軍みたいでいいじゃんか、と。

こんな感じで前に書いたところを引用してみたい。

the West というのは、日本では「西側」とかいって1991年までのいわゆる冷戦時代の組み合わせを指しているようだけど、その後もずっと使われている語。この意味 するところは本来の文明区分なら、西欧を中心とした、キリスト教でも西方ローマ教会を中心とした文化圏を指すものなんだろうけど、このthe Westという曖昧模糊とした概念は地理的概念を飛び越えて支配領域を飲み込むという傾向を非常に強く持っている。

それが故に、日本とかトルコみたいなキリスト教とも西欧文明・文化と関係のないところとか、色濃く正教、東ローマ帝国に関係のあるところまで、the West に入れられてみたりする。

で、the Westの拡張傾向は今にはじまったわけではなく、十字軍の昔からある。さらに十字軍というとイスラムからイスラエルを奪還するキリスト教国の取組みとし て一般に知られているけど、正教というか東ローマ教会というかを敵視すること並々ならぬものがあって、ついには東ローマ帝国を事実上ぶち壊すことまでして いる。第4回十字軍遠征というやつ。

The Westと日本

私の妄想では、最終的にイスラエルは the Westの前進基地という役割を終えて、この東地中海世界に単なる独立国として収斂されるようになるだろう、と思ってたりもする。だって長い目で見たら勝てないから。

いろいろ難しいところ(興味深いところ)にいるわけなんだけど、なんでだか日本ではその感触が全然共有されていない。良い意味でも悪い意味でも要するにこれが日本なんだろうと思う。つまり、孤立した文明なんです。で、これでいいんだし、これが基本なんだと受け止めることが重要だと私は思うわけですよ。

 


 

 

 


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