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対イラン制裁に反対します by ロシア&中国

2017-02-07 01:25:32 | 欧州情勢複雑怪奇

トランプ政権が弾道ミサイルの発射実験をしたイランに制裁を課し、さらに、イランはテロ支援国家だのなんだの吠えた件について、ロシア、中国両外務省がそれぞれコメント。

イランはテロ国家ではない 露外務省
https://jp.sputniknews.com/politics/201702063312809/

イランはロシアで活動が禁じられている「ダーイシュ(IS,イスラム国)」、「ヌスラ戦線」などのテロ組織との結びつきは今まで一切ない。6日、ラヴロフ外相はこうした声明を表した。

Kremlin disagrees with Trump's claims Iran is 'terrorist state number
one'
http://tass.com/politics/929170

 

中国の方は、中国は常に一方的な制裁には反対、だからこのイラン向けも反対、その上このイラン向け制裁によってイランと取引のある中国企業も迷惑してる、やめろよ、というロジック。

China protests U.S. sanction list on Iran that hits Chinese firms
http://www.reuters.com/article/us-iran-usa-china-idUSKBN15L0R0?feedType=RSS&feedName=topNews

 

で、この「イランもの」を推進しているのは、まぁ誰でも知ってる通り(笑)、イスラエルらしい。でもって、イギリスのメイが共同歩調を取るらしい。どうなんだか。

 

とはいえ、イランを巡る情勢はオバマ以前のようなことにはなりようがない。

一つの理由は既にイラン核合意が成立しており、これは英米仏、中国、ロシア+ドイツが当事者。これをひっくり返すということは、アメリカの同盟国内に亀裂が入る。

今日のWall Street Journalがいみじくもそう書いていた。

【社説】イラン政策を転換したトランプ政権
米財務省はイランの弾道ミサイル計画に新たな制裁
http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582604051962285804

 米国のドナルド・トランプ政権はバラク・オバマ前大統領がイランと結んだ核合意から撤退するか。世界が注目するこの問いに対する答えはどうやら「ノー」のようだ。

核合意から撤退すれば米国と同盟国の関係が断たれるうえ、イランに悪さを重ねる隙を与えると考えれば、妥当な判断である。しかしトランプ大統領に、オバマ氏がやろうとしなかった仕事を引き受けるつもりがあるように見えることは確かだ。オバマ氏がやろうとはしなかった仕事とは、核合意を厳格に実施すること、そして中東におけるイランの侵略行為と戦うことである。

 

もう一つの理由は、戦争になったらどうするんだよ、だからでしょう。

これはイラン側の理由ではなくて、アメリカ側の理由。アメリカ人がヒラリーみたいなのを選ばなかった、その大きな理由は対外戦争を止める、せめて縮小するだろうと思ったから。

で、これを裏切ったらトランプ政権はもたないでしょう。そして、それだけでなく、イラン相手に戦争するということは、むこう何年もがっつりやらんとならない話になるわけですから、もはやアメリカをグレートにするなんて話はおじゃん。

つか、イラン相手に相手が屈することを目標として戦争をするというのは、ロシア相手に戦争するのと似たものがあると思う。つまり、攻めていく側は勝ち切れない相手だということ。中国相手もそう。

そりゃ軍艦だの飛行機だのなんらかの施設を空爆して、よーしアメリカは勝った、といってひとしきり喜びの報道を出す、とかいう2003年のイラク相手のようなことはできるだろうけど、その後、どうやってイランをアメリカにとって都合のいい国家に出来るのか。まったく見えない。イラクだって成功してないのに。ということは反発されるのは時間の問題。

さらに、その間に非対称戦としてあっちこっちのシーアムスリムが一斉蜂起なんかした日にゃ、イスラエルだっておちおち眠れない。その間に石油の輸送に問題が起きたら、日本なんかどうするんですかという話にもなりかねない。プーチンと習が手を取り合う写真が目に浮かぶ。

もう一つあった。オバマ以前と違うのは、シリアの一件のおかげで、シーア派つながりでイラクの一部がイランと繋がってシリア奪還のために動いていたこと。この連携が有機的になったのはもってオバマのおかげ。ありがとうオバマ。

 

ということで、トランプ政権のへんなイラン敵視は、上手にバランスしながらやってる分にはいいけど、自分で振りあげた拳の置き所を探すような真似になるとアメリカにとって非常に大きな傷になると思う。

私の感にすぎないけど、なんとなく、トランプ政権はつられてる気がちょっとしてる。釣ってるのは中国とイラン。ここは実際強気に押せるところだし。

 

■ ネタニヤフ、総力戦演説

で、一方そのイスラエルのネタニヤフ首相は英首相メイさんと会談していた。短い映像を見てしまった。英Independentにあった。

イランはイスラエルの殲滅を狙っている、イランは中東を制覇しようとしている、ヨーロッパを脅している、西側を脅している。そして次から次から挑発している。

Iran seeks to annihilate Israel, it seeks to conquer the Middle East, it threatens Europe, it threatens the West, it threatens the world. And it offers provocation after provocation,' said the Israeli Prime Minister

http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/theresa-may-benjamin-netanyahu-israeli-prime-minister-iran-sanctions-downing-street-talks-ballistic-a7565141.html

 

と、ネタニヤフ氏は本当に言っていた。まぁ基本線は前から同じことを言っているんだけど、今回も言ってる。一応これは俺らのスタンスだからというところなんですかね。でもなんか声に覇気がない気もする。

 

それはともかく、この言い回しって、ドイツのゲッペルスの1943年のいわゆる「総力戦演説」が原型なのかなとふと妙なことを思った。

どちらにも共通しているのは、無条件の恐怖、無条件の敵の設定となぜだか自分の側に人はつくべきだと信じていること。

 

総力戦演説というのは、1943年2月ドイツがスターリングラードで敗北した後にゲッペルスが行った演説。

スターリングラードの敗北以降、情勢的にもうドイツ軍の勝ちはどう考えても見通せない。そこで、ルーズベルト、スターリンは降伏を勧告するのだが、ドイツはそれに応じずゲッペルスが演説して、国民の総力を結集させると言い出した。ドイツはここからマジの総力戦になる。ここまではいろいろ普通の生活部分も一応あった。

この演説のカギは、ドイツが敗北したらボルシェビキがヨーロッパ全土を覆うのだ、というのを前提に組みあがっていること。

そして、ここでボルシェビキというとただに共産主義者の話に聞こえるけど、ここまでナチスは、スラブ人全体を劣等民族扱いした言辞を多数広めていた。劣等民族のスラブ人を優秀なドイツ人が支配してやるのだ、といった調子。だから、併せていえば、そもそも劣等民族として排除していたそれが怒涛のように押し寄せるというイメージ化が完成した、みたいな感じでしょうね。悪魔化はこのようにして達成される、みたいな。まぁ、実際この時点でも、攻撃に出かけていってるのはドイツなんですけどね(笑)。

ネタニヤフにとっては、イランがヨーロッパを、ひいては世界を脅かす存在らしい。

 

■ その頃欧州では・・・

ゲッペルスの演説からそうは遠くない時期に、欧州ではしかしながらソ連が勝った。

枢軸国から立場を変えたイタリアでは、あの有名な指揮者トスカニーニが連合国の勝利を祝い、当時のソ連の国歌「インターナショナル」を指揮してたりするわけで、ヨーロッパといってもそれぞれですね、と言っておきたい。あはは。

"The Internationale" conducted by Arturo Toscanini--BANNED by U.S. censors!

 

トスカニーニに限らないけど、この当時非常に多くの欧州知識人はヒトラーのドイツ、またはもっと広くファシスト党一派を嫌いまくっていた。最近は、なんだかユダヤ系とか左翼だけがヒトラーを嫌っていたかのような認識を持っている人がいるようだけど、それはまったく違う。

そういうわけで、ゲッペルスが演説していたころ、もしこれを聞いたり読んだりしたとして、多くのヨーロッパ人たちは、ヨーロッパを壊しているのはお前だ、失せろ!、とか思ってたんだろうなぁと想像するとちょっと興味深いものを覗いたような気がする。

まぁ大東亜の盟主たる日本が~とか言ってた奴らに言われる筋合いはないと言われる覚悟はあります、はい。

 

■ オマケ

日本の記事も興味深い。

イスラエルが外交攻勢 首相英米訪問、イラン包囲網狙う
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H9V_W7A200C1FF8000/

 

イラン包囲網・・・。そういえば日本は中国包囲網をしているはず。

イランと中国を包囲する世界にしたらロシアも包囲されるんですかね、やっぱり。ユーラシアの大部分を孤立化させた世界ってどういうものなのだろうか。

 【ロンドン=小滝麻理子】イスラエルが外交攻勢を強めている。ネタニヤフ首相は6日、ロンドンで英国のメイ首相と会談し、敵対するイランの台頭が中東地域にもたらす脅威を訴える意向だ。「親イスラエル」と「反イラン」の立場をとるトランプ政権が米国で誕生したことを受け、国際社会によるイラン包囲網の強化を目指す姿勢を強めている。

ロシアと中国とカザフスタンとウズベキスタンとキルギスタンとパキスタンとイランとシリアとトルコとアフリカ諸国多数を除いた国際社会が、団結するみたいです。

 

ネタニヤフもどうかしていると思うけど、日本の方もどうかしてる。これは冷戦の後遺症みたいなものじゃないっすかね。ソ連のcontainment(封じ込め)とか、encirclement(包囲網)という発想が、なにかとっても好きらしい。使いたくて仕方がない用語なのだろうか? これを使うと強くなった気がするとか?

 


 


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2 コメント

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『ロシア連合』の結束 (ローレライ)
2017-02-07 05:56:18
『イラン中国敵視』は結局『ロシア連合』の結束と言う結果をもたらしたのが『上海機構の歴史』である。
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divide and conquerの敗北 (ブログ主)
2017-02-07 17:26:00
ローレライさん、

そうなんですよね。アメリカの一部のロシア上げは、それによってイラン&中国とロシアを分けようという作戦ですよね。

でもこの思惑がこれら3国には見えてるし、これら3国の草の根も結構わかってるっぽい。divide and conquer(分割して征服)という名高い作戦もやり過ぎて見切られてるって感じ。
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