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西側という宗教 (2)

2015-01-05 13:08:53 | アジア情勢複雑怪奇

2014年は、アメリカというのは左翼国家なんだという西部さんの言うことがようやく多少なりとも世間で理解されたかも、という年だった。(e.g. 「アメリカは左翼なんです」西部邁ゼミナール 2014年10月05日放送

(それはそれで喜ばしいが西部氏はドイツに毒された一部統制派と同じ轍を歩んでいると思えるので私はこの論点以外では氏を評価していません。僭越ながら先生の問題点は歴史理解およびそれへの興味が浅かったことだと思います。)

アメリカが左翼だったらじゃあソ連は何だ、共産主義とは社会主義とは何だといえば、それも左翼。つまり20世紀とは左翼の内ゲバ時代だった、と。

私の言い方では、これはつまり「西側という宗教」が世界を覆っていた時代という感じでしょうか。

西側という宗教 (1)

アメリカというのはこの「西側教」における過激派なんだと思う。19世紀末ぐらいから多少の軋みを伴っていた西側教の乾坤一擲ともいうべき賭けが第一次世界大戦で、そこでそこまでのリーダー格だった国々は借金漬けになって、順次ドル体制に組み入れられていって、アメリカという新体制に従属を余儀なくされていく。第二次世界大戦でそれが完成する。

■ 西側≒西欧化≒近代化

西側という語は冷戦時代のいわゆる資本主義陣営のことをそう呼んでいたので、今でもそういう狭い範囲で考えている人が多いように思う。しかしこれは日本語の翻訳の問題。

全部要するに、Western、the Westということ。

その時々で、政治なら「西側」、または「欧米」、文化なら「西欧の」、みたいに訳しわけているだけ。

そういえば最近、ロシアは欧米と対立しており、とテレビのアナウンサーが言っていたけど、ロシアは the West と対立しており、その中には「G7の一角として」とか「西側諸国の一員として」の自己に大きな価値を置きそのように行動した日本も含まれている。

あたかも日本は中立的なように記述してそれを読みあげているけど、この判断には何の根拠もない。こういうあたかも日本は中立的であるかのような錯覚を起こさせることで、日本の政府およびメディアは広く日本国民を騙しているのよね。最近これがとても気になる。

■ the Westと革命

で、このthe West勢力の総本山がどこにあるのか知りませんが、ともあれこの人たちは世界を変えようとして過去何百年か頑張ってる。で、様子が多少過激になったのは200年ぐらい前で、さらにバージョンアップしたのが100年前のアメリカによる覇権の奪取と清朝の滅亡、ソ連の誕生だと思う。

そのやり方は、革命なる手段を使うことで、この手続きはだいたい2段階あるように見える。

最初のの目標は、旧体制をぶち壊すこと。封建的とか、身分制秩序とか、王権神授説とかなんでもいいけど、連綿として続いた体制およびそれを支える支配層を没落させること。

一般に日本ではこの部分だけを「革命」とよびそれはもっぱら共産主義革命のことだと理解している人が多いと思うけど、何主義だろうが関係ないと思われます。要するに旧体制の打破が目標。

2つ目は内政の変革。経済体制をグローバル資本主義にフィットするように変えること、でしょう。1つめと2つめの間にどれぐらいの時間が必要なのかはその地域による、と。

日本でいえば明治維新が第一革命で、敗戦が第二革命。でも第二革命は世界規模で経済を復興させないとならないためグローバリズムはちょっとお休みの時期にあたっていたので、1990年代になってあらためて第二革命 v2が行われた、みたいなところでしょうか。

■ 不可逆的な the West 革命

このthe Westによる革命は、実にまったくかなりの程度不可逆的であることに特徴があったと思う。ソ連は崩壊するけど、そこでロマノフ朝を再興できるわけではないことが好例。逆にいえば、旧体制の復活ができないだけの時間革命的であり続けることが肝要、と。要するに、人々に主権があるという思想を浸透させると支配層よりも人々の数が多いので、こっちに既得権が発生する。すると体制が安定するということじゃなかろうか。あと、人々に自分の運命というものを感得させない、死をかけても守るべきdignity(尊厳)よりも安定した生活が尊いと発想させることとか、集団主義を粉砕するとかいったツールも重要。

この文明は不可逆的だ、ということの危険性、恐ろしさに気づいたのは例えばニーチェであり、もっと十分に気づいたのはマックス・ヴェーバーでしょう。マルクスは仕組みの解明に功はあったけど文明史的視点がないので部分的な気づきに過ぎない。

(いつ見ても不機嫌そうなヴェーバーさん)

我が方の夏目漱石が健康的でないのもそのへんに気づいていた(しかし解明できる知識はない)からではなかろうか?

この本、入門とあるけど、わかりやすい誰でもわかるヴェーバーとか言う意味の入門書じゃなくて、ヴェーバーが何に悩んだのかを解明することによって、周辺的にthe Westが運命的である理由、みたいなことになっていて非常に興味深い。良書だと思うけど、入門という曖昧なタイトルをつけているぐらいでテーマ設定が明確でないので読みにくい本ではある。

マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書)
山之内 靖
岩波書店


■ the West の運命や如何に

とはいえ、不可逆的であると思えた the Westも、なんか妙な具合になっている。少なくともヴェーバーが観念した当時よりはなんかずっと、これって丸見えじゃん、みたいに楽屋裏が見えてしまっていて、さらに明治の志士たちがなんだかとってもワクワクするなぁ~と迎えた時代よりも the West には陰りが見える。こんな感じ。

西側教団の根本的な間違いは、1980年あたりまでは、この布教を順次、穏やかに、入るといいことありますよ、ほら、あなたにも経済成長という現世利益が、とかいう調子でやってそれなりに成功してきたことに飽き足らなかったことではなかろうか。

冷戦構造が崩壊して以来、西側でなければ人にあらず的な無暗に積極的な拡張政策を取ったため、布教実績に陰りが見え、これまでの支持層だった先進国で支持を 失ったのみならず、市場拡大のためのターゲットとしていたインド、中東で大きく支持を落とした。さらに、最後の大市場として期待された中国市場において も、思ったほど支持が伸びない、って感じでしょうか。(西側という宗教

とはいえ、もう一回封建制ってことにはならんでしょ? その分には不可逆性は残るでしょう。ただ、チェチェンでプーチン政権が取ってる手法なんかは、かなり脱近代的で面白いとは思う。
(チェチェン人は確かにロシアのくびきから出たかったが、チェチェン闘争に外国人の過激イスラムが侵入するに至ってチェチェン人たちが、こんなテロリストらに祖国を壊されるならロシアに付く方がマシ、になっちゃって、それに対してロシア側は大金を投入してチェチェンの街をきれいにして治安を回復させて手打ち。チェチェンは国境を警備するという役割でロシアに奉仕し、ロシアはそれが守られてる限り自治を認めるし支援するよ、というちょっとした封建体制になってる)

また、ロシアとチャイナ、イラン etc.の物々交換的経済も、前にも書いたけど金融資本主義から交易経済への刺激みたいなものが発生してくる機縁となるんじゃないかと思う。やたらと金(ゴールド)を貯めてるそもそも共に産金国であるロシアとかチャイナが、ロシア帝国と清帝国に見えてきたりもする。

そういうわけで、the Westの不可逆性は依然として残るものの、地球上の各地域で多少の修正が行われるような気運が続けば、その不可逆性は単なる歴史上の変化以上のものではなくなる(つまり、ヴェーバーが嘆いたようなこのthe Westという文明に特有の不可逆性ではなくなるということ)、という可能性もわずかながらも見えて来るのかもしれない。まぁ100年後はどうなるのか、50年前よりもいくらか不確実性が高まったって感じでしょうか。

 

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