ドイツの総力戦演説の話を書いたばかりだけど、今回のドイツもなんだかまた総力戦演説をしているっぽい。
シュピーゲルというドイツを代表するメディアの今週号の表紙が異常だというのが話題になっている。
これはもう異常。一国を代表する正当に選挙されたリーダーに対する態度ではない。もちろん、プーチンに対する西側メディアはもう既に修復不可能なまでの悪意、悪意、悪意のオンパレードになっているが、まだそれは、(良いことではないにせよ)ソ連だから、という言い訳もあった。ソ連は既にないんだけどでも多くの政治家、知識人の頭の中には未だに悪魔のソ連が生きている。それはロシア人のせいではなく、それら狂った頭を抱えたままの妄想家のせいなのだが、その不自由な頭の故に理解してやろうじゃないか、とも一応思えた(思えないけど)。
が、事はアメリカの大統領に対する同盟国ドイツの態度なわけですよ。
で、シュピーゲルは表紙だけでなく中味もすごい。
これは国際版(英語版)にもついてる記事巻頭の写真。国際版の記事タイトルはAmerica First。
しかし、ドイツ版の記事は、これになんというキャプションを付けているかというと、Mephistos Plan。メフィスト的プランってことは、悪魔の計画ってことでしょうか?
記事はここ。ここを開けると一番上に、Mephistos Planとまた出てくる。
https://magazin.spiegel.de/SP/2017/6/149411810/index.html?utm_source=spon&utm_campaign=centerpage
で、この記事のリードとしてでかでかと載ってる分を訳すと、
ドナルド・トランプはアメリカを独裁政治に再構築できるのだろうか? レジスタンスのワルツは歌う、あたかも全世界を変えるかのように。彼は彼の戦略責任者の理想に従う。ポピュリスト、スティーブン・バノンは今アメリカで最も危険な男だ。
多分、だいたい合ってると思う。
でさ、これってもう、完全な悪質プロパガンダでしょう。
ワルツ云々というのは、つまりボルシェビキが世界を席巻するのだ、でしょうね。
(総力戦演説におけるボルシェビズムがやってくる、と同じく恐怖が忍び寄るという意味だろう、ということ。参照:対イラン制裁に反対します by ロシア&中国)
我々は戦う必要がある、我々優秀なるドイツ民族が立ち上がらねば世界は劣等民族に覆い尽くされてしまうのだ、と。
いやぁ、さすがナチスの本場でしたねとか笑いたくなる。
バノン氏については、昨日書いた通り、確かに大変なことを呼び起こすかもしれない男なわけだけど、それは「独裁制」にするとかいう話ではない。
「アメリカもイノセントじゃないだろ」がもたらすざわめき
さらに、自分が気にいらないものはなんでもかんでも独裁者とか専制とか言い出すというのは、西ヨーロッパ1000年の伝統かもしれないよ、という話はこれが参考になるかも。
ヨーロッパ1000年のロシア恐怖症
かいつまんでいうと、西ローマ教会は自分に正統性がないもんで、正統に続いている(つまりオーソドックス)ビザンチンの教会が憎くて仕方がない。だもんで、東方にあるやつはみんなあっちは専制だといって侮るのが習わしになってる、という話。
だから、西側チームが「独裁」とか言い出す時というのは、ほんまもんの場合もあるだろうけど、多くの場合、要するに、あいつらは敵だと言う時のいつもの言い方、みたいなところがあると受け止めるのがいいんじゃないかと思う。これを文字通りに、いいえ私たちは民主的な部分もあってみたいに言っても多分通じない。
「戦後レジーム」を壊したくない一番手は実はドイツだろういう話はこのへん。
混乱を無視して進むドイツ流
■ オマケ: モンキーモデル
日刊ゲンダイに出ていた記事。各紙このところ一生懸命バノン叩きをやってるんだけど、日本人でここに興味のある人がどれだけいるのか不思議なぐらい。でもやってる。
トンデモ政策書いた陰の大統領 バノン首席戦略官の影響力
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/199137
バノンの話が出たら、まず、この間書いた「ステートメント」が入ってるかどうかをチェックしましょう。あれがとても重要なのにまず書いてないことが意味するところは大きいね。
ウクライナ危機の時からなんとなく仮説として考えいるんだけど、世界的な情報統制って、多分系統別に分かれているんじゃないのかな。
本国仕様:アメリカ、イギリス用
モンキーモデル:属国群用。この場合ドイツを指標とする
みたいな感じ。ちなみにモンキーモデルとは、兵器に使われる語で、他国に輸出する際意図的に性能を下げたり、ブラックボックス化したりと、本国向けには絶対かなわないようにして出すタイプのこと。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書) | |
堀 茂樹 | |
文藝春秋 |
帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕 | |
石崎 晴己 | |
藤原書店 |
蹂躙する、押しつぶすということです
ドイツ語の能力が錆びてしまっているのですが、原文を読む重要性に改めて気づかされます。
ボルシェビキにバノンなどは比せられているのですか。
シュピーゲルの政治的立場は知りませんでしたが、なんとまぁアカラサマなことですね。