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米軍、B2戦略爆撃機ハワイに配備・・・を受けて考えてみる

2019-01-15 18:19:42 | アジア情勢複雑怪奇

金曜日だったかに、米軍がB2戦略爆撃機をハワイに配備するというニュースを読んだ。別に初めてもっていく話ではないが、とりあえず、中国なにするものぞ、米軍様はお怒りだ、といった感じで喜ぶ人がいるんじゃないかと楽しみにしていたのだが、あまり出回らない。

せいぜいこんなの。

米軍が最新鋭B2戦略爆撃機をハワイに配備 中国をけん制する狙いか

http://news.livedoor.com/article/detail/15863501/

アメリカ軍は11日、最新鋭のB2戦略爆撃機をハワイに配備したと発表した。インド太平洋地域への展開能力を示し、中国をけん制する狙いがあるとみられる。

 

中国を牽制する狙いか、って誰かが加えたんだろうけど、中国以外のどこを狙うの?という気もする。あはははは。

どういうのかというとこういうの。

 

で、太平洋と中国周辺の米軍基地はこんなの。

 

で、ハワイでこれをどう使うことを想定してるんでしょうね。

というかですね、アメリカは過去40年ぐらい世界一極支配を妄想したがそんなことはもう話したくありません状態になってしまった、という、要するに大失敗状態が現在なわけです。それにより、戦略的に大問題を抱えているという気がしている私。

 

いや、軍事だけがすべてじゃないですよ。だけど、米は実は本質的には軍事覇権なので、軍事的に圧倒的に優位にたって、いざとなったらお前を殺してやるいざとなったらお前の内部をグダグダにしてやる、と言えないと成りたたないシナリオなわけですね。

ところが、ロシアがパリティー復活している。これはホントは具合が悪い。イラつく。だからNATO諸国のチンピラを使って凄ませているわけだが、しかし、ロシアさんからの回答は、常にアメリカに向けられ、核戦争になったら、お前は死ぬ。後悔する暇もなく、というどうあれパリティーだからな、わかっておけよ路線をこれでもかと突きつけられる。

去年秋の毎年恒例のバルダイ会議でプーチンはこんな劇的な表現までする始末。

攻撃する人は、報復は不可避で、やったら破壊されることを知るべき

攻撃されれば私たちは犠牲者となり、殉教者として天国に行く。彼らはただくたばる。後悔する暇もなく。

Any aggressor should know that retribution will be inevitable and he will be destroyed. And since we will be the victims of his aggression, we will be going to heaven as martyrs. They will simply drop dead, won’t even have time to repent,” Putin said during a session of the Valdai Club in Sochi.

After nuclear holocaust, we’ll go to heaven as martyrs; attackers will die as sinners – Putin 

https://www.rt.com/news/441631-putin-nuclear-holocaust-heaven/

 

恐ろしい発言だわ、と英米メディアでは一応きゃーきゃーきゃーーーーの記事が結構出たものの、あまり盛り上がらなかった。だったらNATO拡大とかしてんじゃない、と言われたくないからでしょうかね。あはは。

全体的に、大失敗であることを見たくないから、中国に向かって吠えてみるとか、ロシアで話を作ったりしつつ、なんとかしようとしているのが米だと思ってみているとハラハラもしないんじゃないかと思うな。

 

■ ディフェンスチーム=絶対にお前は報復される理論

で、冷戦期からの米ソ、米ロ対決においてロシアの姿勢は一貫してディフェンス。最強のディフェンスとは何であるかをず~~っと追及してきて、どうやっても必ず報復できる体制にすることが目標であるらしくみえる。そして、その報復の選択肢として、各種のミサイルを運用してる。(核と言ってるけど、必ずしも核兵器である必要はないでしょう。高速ミサイルの破壊力もものすごい。)

Tu-160みたいな高速の爆撃機を持っている意味もここにあるでしょう。つまり、上にあがって移動しつつ最適なポジションからミサイルを撃つ、という発想なんだと思うな。世界最速、世界最大の戦略爆撃機という意味はそこにあるでしょう。部分軌道爆撃システムと発想は似てる。

ロシアの戦略基地は欧州側の北極海沿岸にあるので、上空にあがったらカナダ、アメリカもイギリスも眼下という位置取りなのも重要。ワシントンの目の前にいると想定されているロシアの原潜も威力はあるし、どこからでも漁船からでもコルベットからでも鉄道上のコンテナの中からでも撃てるカリブルミサイルもスゴイが、いやしかし、上からのももの凄い。つまり、これもみんな、絶対にお前は報復される体制を幾重にも作りまくってる、と改めて見直してしまう今日この頃。

 

■ オフェンスチーム=制空権を奪いに行く

それに対して、アメリカの戦略爆撃機というのは、他国の領空に入って行って、つまり相手の制空権を取って地上を爆破することを念頭に作られているんだろうと思う。だから、ステルスに拘る。

聞くところによれば米は70年代後半にその分スピードの追及が後退した、諦めた(ソ連との比較で)、ということらしい。つまり、攻撃に特化しているということですね。

 

で、80年代、90年代には、相手を弱らせたので、どこでも爆撃できるというつもりだったんだろうが、いやそれがそうもいかなくて、というのが現状。

こんなに世界中に基地を作ったわけだけど、ロシアと中国が軍事訓練までして内陸側をしっかり固めてくると、いや、持ったからと言って・・・になってないか???というところ。


基地らしい基地は世界中に800カ所と言われているが、その他を含めると3000カ所から4000カ所ぐらいあると言われている。アメリカ人の基地縮小を求める派の人たちが調べても実数はペンタゴンが出してくる資料ではよくわからないらしい。

最近話題の、シリアのイラン側のアル・タンフはどの資料でも基地としてリストされていないらしく(笑)、この調子でよくわからないものが多数ある、と。

その名もずばりの、Base Nation(基地の国)という本があって、この件は結構追いかけている人がいる。これ用のwebサイトもある。

Base Nation: How U.S. Military Bases Abroad Harm America and the World (The American Empire Project)
David Vine
Metropolitan Books



■ 対チャイナ

それはともかく、それで一体チャイナをどう攻撃するんだよ、というのが実はよくわからない。私は今まで一度も納得できるプランを見たことがない。

 

そもそも、米軍の極東におけるプレゼンスって、もともとは東インド会社勢がロシアを攻めるために日本を使い、中国を混乱させるための基地としてまたまた日本が使われましたというのを引き継いでるだけで、しっかり考えて存在しているというものでもないような気がする。

前世紀においては、朝鮮戦争、台湾問題、ベトナム戦争+その余波と、日本の基地はアジア侵略にとって欠かせない場となって大活躍した。

また、ここがなければ、中東に艦隊を派遣するのも一苦労。

日本の基地は、アメリカ(または東インド会社的人々)のアジア侵略にとって有効ではある。

しかしそれは、最低でも70年代以降チャイナ本体を攻撃しようなどという壮大なプランであったことは一度もないのではあるまいか?

英米は、ユーラシアに自分の兵がないから、ユーラシアの巨魁の周辺民族を焚き付けることで、清帝国、ロシア帝国を崩したように、帝国内の安定を奪って、政治的に崩していくというのが本筋でしょう。

対チャイナの入り口は、渤海湾、南シナ海(ベトナム他を含む)、新疆ウイグル、チベットで、そのうち渤海湾は北朝鮮がバカではなかった、南シナ海はドゥテルテが出てきてワヤ、ウイグルは、ロシアがキルギスタン、タジキスタンをCIS(旧ソ連のようなもの)に含めて安定化させ、中国側からはウィグル人の脱洗脳化とでもいうべきプロジェクトが続いてる。チベットはそもそもやりにくい。

といった感じで、どこも大変。そして、台湾問題が残ってる。

このうち今後も継続してお金使って行く必要があるのは、南シナ海→シンガポール→インド洋のルートなんでしょう。でもこれって、米と日がぐじゃぐじゃ騒いで、南シナ海に中国が原潜基地作るのがけしからんとか言い出してしまったことは果たしてよかったのか?とも思う。

底意は、南シナ海を通って太平洋から中東に行くルートから俺を締め出さないでくれと言っているみたいな気さえする。

本当は、余裕があるなら、千島も日本に騒がせて、ロシアのオホーツク海の事実上の内海化を脅かしてやりたい、ぐらい思っていると思うが、現在のところ何もない。そういうことをすると、逆にカリブ海が騒がしくなったらヤダし、とか、実は米国本土というのは実に無防備なもんなんだ、だからあんまり騒がしくさせられないってのももちろんあるでしょう。

 

■ 今後

で、アメリカ国民は基本的にこれらの海域への関心は今でも高くないが、将来的にも全然高まらないと思うんだなぁ。

ヨーロッパ側は、人が住んでるポーランド、バルト海云々を人質に取ったからこそ、ロシアを敵にするというピクチャーが成り立った。本当は別にこの地域住民が戦争したいと言っているわけではなくても、きゃーー、とか、わぁあああとかいう被害者の声みたいなのを始終挙げてくれることが彼らに対する支援の対価みたいなもの。その声のおかげで、それじゃ軍備を、などと言えるという仕組みがよかった。もし本当に怖いなら、ロシアと話し合えば?などとは言わない(笑)。

中東は、サウジとイスラエルを手離せないから完全撤退という話にはならないでしょう。田中宇さんが何を言おうが(笑)。ただ、カスピ海からこっそりひっそり精密ミサイルを撃て、地中海側にS-400で防御陣地作っちゃうプレーヤーが登場しちゃったことで、中東ならなんだって俺様の思惑次第などとはもう言えなくなった。

では極東はどうなのか。

せっかく持った日本、どうあれアングロのオーストラリアを防波堤にして、グアム、ハワイを本拠地とし、インド洋に目をやる、みたいな感じ?

つまりやたらに海なので、日本にはじゃんじゃん船を作ってもらいたい、となるんじゃないでしょうか。しかし、それは空母なのだろうか? 普通に海保的なブラウンウォーター海軍を目指した方が何かと便利な気がする(ブルーウォーターってのが要するに大洋を渡るようないわゆる大海軍、それに対して沿岸中心なのがブラウンウォーター)。

わかりません。でも日本をこの南の海域のプレーヤーにするとして、それって日本の安全保障なんだろうか?という気はする。フィリピンの南だから従来の考えでいえばかなり微妙。だからこそ、そうだからこそ、集団安全保障設計にして、米軍と共に行くなら全部合法にしたいのではなかろうか、など思ってみてる。

 

■ いずれにしても艦隊決戦はない

でね、中国と日本+アメリカが尖閣を巡って艦隊決戦をするかのような記事が出ていたのがつい2年前。70年前じゃなくて、2年前ですからね。あははは。

自滅への一歩を踏み出した中国 尖閣で軍事衝突なら「1週間で全滅」の指摘も (2/3ページ)

2016.06.11

https://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20160611/plt1606111530001-n2.htm

もし、中国側が戦端を開いたら、どうなるのか。 
 前出の世良氏は「有事となれば、海自佐世保基地から8隻の護衛艦からなる第2護衛隊群が急派される。航空自衛隊那覇基地からはF15戦闘機30機程度が、空中戦に備えて出撃するだろう。他の基地のF2戦闘機が応援に駆けつける事態もあり得る」といい、続けた。 
  「後方支援に回るのが、米海軍の第7艦隊だ。米原子力空母『ロナルド・レーガン』に加え、イージス艦など10隻、原子力潜水艦3隻が出動するはずだ。中国側は東海艦隊が前線に投入される。駆逐艦やフリゲート艦、潜水艦など50隻が所属する艦隊だが、自衛隊と米軍との戦闘力の差は歴然だ。1週間で東海艦隊が 全滅する事態もあり得る。中国は『自滅への第一歩』を踏み出したともいえる」

http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/40660d5ab352e08fd6600394f619bbc4

 

これってどういう展開なんでしょうね。いきなり艦隊決戦なんでしょうか?

いまどきそんなことやるの??? つか、尖閣諸島は日本にとっては重要な意味を持つけど、だけどアメリカ人にとっては所詮は岩なわけで、そのために第7艦隊は空母を失うことを覚悟して決戦するんでしょうか。あり得んでしょう、そんな。あはははは。

チャイナもシリア公式デビュー、そして日本は艦隊決戦

 

日本のネトウヨのにわかミリオタみたいな人たちを煽って、面白可笑しく書いちゃってるこれらの「専門家」は、もしこうやって日中間に波風が立っていて、それが故に日本が食えなくなっていたら、お前らみんな腹切れよという話ですよ、ほんと。

このアホがメガホン持ってる状態を野放しにしている間、世界で何が起こっていたかを全然伝えてこなかったことのツケをこれから私たちは払うわけですよ。ガラパゴスランドになってんだから。

しかし、これらの右派ばかりが危険なのではない。リベラル勢もおかしい。「中東あたりがきな臭い」だの「ロシアが強気ですから、困ったものです」だのと訳知り顔で中東情勢の大事なモメントを全然見ていなかった。アルカイダを使ったプロットが機能不全に陥ったという重大な局面なわけだが、いまだに全然見えてない。

そして、リベラル勢というのは、口では戦争はいけない、話し合いをとかなんとか言うが、ロシアが出てきたら急に好戦的になって、その結果明らかになってきたことには、彼らは驚くほどアメリカが強い、なんでもできる、アメリカ様が出て行けばなんでも解決すると思っているようだということ。この点で、実はネトウヨと表裏だった

困ったもの。

 

■ オマケ

上の「Base Nation」には邦訳がある模様。タイトルが違うので全然気づきませんでした。

米軍基地がやってきたこと
デイヴィッド・ヴァイン
原書房

 

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2 コメント

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日本は実効支配していない尖閣諸島 (ローシャン)
2019-01-15 21:30:27
尖閣諸島は日本が実効支配しているというのは幻想です。実際は巡視船が島の周りをくるくるまわってるだけで、誰も怖くて上陸できない。

で、中国もまた公船が時々来て、くるくる回っている。つまり日本と同じコマを進めているだけ。

もし日本人が上陸すれば即攻撃、逮捕されるでしょう。それが分かっているから、くるくる回るだけ。米国が占領している島(射爆場)なんて近づくこともできない。孤島なんて上陸支配してメリットがない。

ミサイルの時代に離島奪還?時代錯誤も甚だしい。艦隊決戦?日露戦争の話?

中国がこの諸島で引くに引けないのは、日清戦争でとられた台湾の一部だからです。

民主党政権時代に漁船を拿捕して喧嘩を売ったのですから、日本が引かなければちょっと元に戻らないのでは。いっそ巡視船の総引き揚げをやったら、向こうも、こなくなるかも。

せっかく水陸機動団なんて昔の海軍陸戦隊みたいなのを作ったものの、米国の手先でどこに派遣されるのやら。



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ぐあからハワイへ引いてみせた米軍爆撃機 (ローレライ)
2019-01-16 00:13:52
グアムからハワイへ引いてみせた米軍爆撃機と言う話で、ロシア中国イラングループとの囲碁の手が動いた。
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