陰鬱な話だけど、それを超えてとても興味深い話だった。
日米地位協定の下に設置されている日米合同委員会という、在日米軍の幹部と日本政府の中枢を担う官僚たちの間で定期的に行われている会議の議事録の公開請求はこれまでも何度となく行われてきた。しかし、日本政府は日米双方の合意がない限り議事録等を公表しないと決められていると主張し、ことごとくこれを拒んできた。
この合同委員会が結局あらゆる機構の上に存在しているようなものだろうというのはこれまでもあちこちで語られているし、この番組の中でも、別に秘密じゃない、とか宮台氏は言ってる。でも大っぴらに話題になってない機構ではある。
これまで政府が様々な情報の非公開の根拠として「日米双方の合意がない限り公表しない」といわれていた。その日米双方を指しているのがこの委員会による議論であり決定であるらしい。では、じゃあその「双方の合意がなければ公開しない」ことを合意したのはどこなのか、その部分の議事録を公開しろ、情報公開クリアリングハウスが請求したという話。
戦後レジームに対する「アリの一穴」となるか・日米合同委員会議事録の情報公開訴訟の持つ意味
■ 軍と一般行政
で、そのアリの一穴になるのかという話も面白かったんだけど、最後の方で、神保氏が向けた話が非常に興味深い。
しかしそれより素晴らしい指摘はここ。
49分ぐらいから
(ミャンマーの話から)、でもだいたいどこでも革命があったりしたときに、軍との調整ですよね。で、これってさ、軍との調整なんですよ
アメリカからのメンバーは、在日米軍の参謀長クラス全部、陸海空、だからここで軍と民、シビリアンの間で権力の行使の仕方が話し合われてる。そこ(軍)の後ろ盾がなければ、ダメですよね。ゲバルトの根幹の部分なわけでしょ。だからやっぱ、それを敵にまわしたらね、総理大臣だってダメでしょ、軍を敵にまわしたら。
この見取りに私は100%賛成ですね。
前から日本には国防方針がないと書いているけど、要するに日本には軍がない、というのが正解なんだと思う。別の言い方をすれば、日本の軍は米軍なので、日本の国防方針とは米軍とすり合わせた方針ってことになるんだと思う。日本にある軍に似た組織はその下請け機関に過ぎない。
非常にわかりやすいですねぇ~とか言ってる場合じゃないんですが、この仕組みこそが日本の戦後だと思うわけで、そうなると、独立って何だったんですかって話なんですよね。
■ 宮台城落城
あと、この話を聞きながら、宮台さんとか小林よしのりさんらが過去20年ぐらい全面に出ている、左翼は間違っている、左翼が9条平和主義なんか唱えるから日本は自立できないのだという説がいかに実際には荒唐無稽だったか、とも思った。
彼らだけではないです。実のところ私もそう考えていた時期が長いですから。
しかし、彼らも私も間違っていたのは、それは日本がかなり独立しているという前提があってこそだったんですよ。
しかし、現実には50年代、60年代にすでに米軍との調整で生きる日本、すなわち米軍を国軍のようにして作ってる国になっていた。半独立でOK体制になっていた。
であれば、そこで「日本」が自由に軍備を整え、軍を使えるようになるということは、米軍の持ち駒が増える以上の意味にはならない。
ということだったと思うんですね。
ということは、宮台さんあたりはこの合同委員会が実はバックアップしている知識人枠だったのかなとも思った。
氏の持論である、重武装中立、周辺国との理解の推進を、半独立という現状にあてはめれば、「日本」の武装組織が大きくなるという結果だけが残されるだろう。そうなってますね、実際。
同時に、氏の持論である、僕は9条左翼が嫌いなんです、9条平和主義というのは米軍の駐留を前提にしているんです、というのも、そこだけ見れば正しいけど、半独立という現状にあてはめれば、「日本」が武装しようが現実の「日本」の国軍の位置にある米軍の存在に変更がない限り、単に9条を改正して戦争ができるようになりましょう、という結果が残るだろう。そうなりそうですね、実際。
■ といって、希望があるわけではない
といって、別に宮台さんやら小林よしのりさんを責めてみても仕方がない。それを見破れなかったというか、それを理論化して抗する勢力は日本にはいずれにしてもなかったんだから。
その中でいえば、どういう理由だろうと9条は死守すべきと考えた人たちは実にまったく貴重な存在だったなと今更ながら思います。
別の言い方をすれば、私たちの国は、抵抗していくこと以外に何か有効なことができるような国でもなかった、ということです。それを、あたかも、自力で何かができる組織を持っているかのような錯覚に陥っていた、そこが間違いのもと。
私の人生の中で、中立路線を貫くためにも日本は重武装すべきなのだと叫ぶ私に罵倒されたみなさんにお詫びをしたいと思います。見てないとは思うけど(笑)。
■ といって、希望がないのでもない
さはさりながら、といって希望がないわけでもない、とも思う。
それは、こうやって目が覚めて過去の出来事を正確に把握していって、そうならないようにトラップを避けるという学習効果が期待できるはずだから。まぁ、一進一退だろうけど。
だいぶ前に書いたけど、もともと近代日本に対して欧米のお金持ちグループは、ドミニオン以上のことをさせるつもりなんかねー、って感じだったんだと思うんですよね。
ドミニオンっていうのはカナダが英帝国グループ内にいた時の自治形態。内政は独立させるけど、外交方針はイギリスに従わせるというスキームで運用されていた。自治領となったのが1867年で明治維新と実は同じ年。この偶然がなんだかなぁと前から思ってました。
私たちは明治維新で独立を失って以来、現在独立戦争159年目だ、みたいな感じでいればいいんじゃないでしょうか。
一般兵士の人たちは私たちと一緒のパンピーなんですから国民軍のつもりでしょう。しかし組織がそういう理解で作られてなければ彼らは裏切られるわけですね。
イランの経緯はこれも含めて今後いろいろ参考になりそう。ロシアは何がどうなっても結局国軍が存在するという意味で非常に稀有な例なのであんまり参考にならないんですよね。
その前に、なんかアメリカが自国軍優位の姿勢を持ったらいいんじゃないかって気もしますね。外征部隊じゃないやつ。
同感の意を表したくて、何度もTBさせて頂きましたが、
今回は如何間違ったのか同じ物を2回もTBしていた様です。
片方を削除して頂けないでしょうか?
お忙しい所申し訳ないのですが、
如何か宜しく、お願い申し上げます。
トラックバックしていただいたのを機に貴ブログの記事を読ませていただきました。面白かったので何か書きに行こうかしら、なんて考えていたところでした。機会があったらお邪魔させてくださいませ。
どちらでも良かったのです。
優しいお返事いただけて、嬉しかった分、
この方が良かったのかも知れません。
>機会があったらお邪魔させてくださいませ。
首を長くしてお待ちしています。