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シリア・ウクライナと続くアメリカとロシアの奇妙な関係

2014-04-25 19:36:48 | 欧州情勢複雑怪奇

オバマさんは本当に何しに来たのだろうと改めて思うのだけど、これはつまり、東・東南アジアの組み合わせはこうなってますので皆さん覚えておいてくださいね、という仕切りの挨拶ではなかろうかなど思う。

つまり、遠からぬ日々に何かある可能性がありますということかな、と。

それはそれとして、現在のアメリカはウクライナの問題もありオバマ政権は弱気だ、負けてる等々の批判やら分析やらが出回っているけど、これはこれで情報戦なんでしょうなぁとか思う。だって、根本的にクーデーターなんかしかけたことが間違いだという話を一切無視して分析したところで何がどうなるわけでもない。

アメリカの覇権の維持方法というのは、上で政策を決めたら、その通りに国民が動くようメディアを動員するというもの。逆ではない。では今の焦点は何か。多分、ウクライナは混乱させておくことがアメリカの利益だということなんじゃないかと思う。

それはロシアを弱らせるためか? それもなくはないけど、むしろEUとロシアを適宜分断させておくためにはこのぐらいあってもいいかな、ぐらいの半腰じゃないのかと思う。

■ 分裂を修正しているのではないのか、アメリカ?

最近のアメリカ、特にシリア以降を見ていて思うのは、現在のアメリカ政権というのは、実は外と戦っているというより、内部で戦っているのではなかろうか?

それはつまり、CIAだとかサウジアラビア、巨大資本等々が結託して何かをしている、その「影のオペレーション」の動きを修正していっているのがアメリカの政権なんじゃないのかということ。

最近、ロシアのプーチンが、ウクライナのキエフの政権を、これはもう「軍事政権」だから今後はそのようにみなすぞ、と言っていたが、アメリカの「影のオペレーション」が作った政権なので、南米のそれがそうであったようにまぁその軍事政権的でしょう、やはり、とは思う。ロシアはあえて示唆しているのかもしれないとも思ったりしないでもない。

化学兵器はアサド政権ではなかった

4月の1週目に、アメリカの著名ジャーナリスト、セイモア・ハーシュ (または、シーモア・ハーシュ)が、昨秋のシリア問題の裏側を暴露した記事を出した。以来、静かに広がっている。1)

The Red Line and the Rat Line
http://www.lrb.co.uk/v36/n08/seymour-m-hersh/the-red-line-and-the-rat-line

それによれば、

  • シリア政府に対する「反政府軍」とか呼ばれていたグループの一つ、アル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を支援していたのはトルコ。
  • 化学兵器を使ったのはシリア軍ではない。そもそも、ロシア、イギリス、アメリカの諜報グループが分析をしていて、かなり早い段階から化学兵器を使ったのはシリア政府ではないと結論が出ていた。
  • オバマが、化学兵器を使ったのはシリア政府以外に考えられないと語っていた時、米の統合参謀本部はそれは誤りだと知っていた。
  • しかし紆余曲折というか政治的にというかメディア的にというかでアメリカがミサイル攻撃をするという話になってしまったが、それを押しとどめたのは、シリア軍は使ってないと米の情報機関が断固主張したため。

といったことらしい。要するに、米国政府は確実な証拠がないどころか、それは間違っていると知っていたにもかかわらず、シリア政府がサリンを使ったとあの大騒ぎをしたわけだ。

しかし、セイモア・ハーシュが言っていることは、実のところシリア危機が騒がれていた頃に部分的に出回っていた情報ばかりだし、ご本人も記事にしていた。

「シリア化学兵器攻撃、米政権が情報隠し」、調査報道のハーシュ氏
http://www.afpbb.com/articles/-/3004831

ただ、ハーシュさんは要するに暴露当番と思えばよくて、こういう人がこのタイミングで長いものをまとめて公表したことが重要かと思う。

(4月上旬、欧米メディアが奇妙なほどにロシア非難のトーンが低くなって、その後規制が強まった感じになったのもこれに関係があるのか?)

もちろんどこかに嘘や半分ホントの部分も埋め込まれているかもしれないが、とりあえずこの話を平たく考えると、シリアが戦域になっていった経緯には、トルコを含むなんらかのグループがいて、そのグループはアメリカの大統領に嘘を発表させるぐらいに影響力があって、大統領はその嘘に従ってミサイル攻撃をするはめに陥っていたが、米内部の諜報機関、軍部はそれを阻止しようとした、ということだと思う。

しかし、軍は政府の下なんだから命令系統から考えて限界がある。そこでロシアが登場して嘘話に基づくミサイル攻撃を食い止めた、ということ。

つまり、そのなんらかのグループに対して、米の諜報部、軍部のみならず、ロシア、イギリスの諜報部、政府が共闘した、と見ることが可能だ、ということ。

アメリカ人が現在わいわい騒いでいるのは、トルコ政府の関与の仕方が実に汚い、アメリカの外交状況は混乱している、影のオペレーションは止めさせるべき、といったところに焦点が当てられているが、私としてはこの組み合わせの方が余程問題だと思うし、現在の世の中を示しているのではないのかなど思ってみたりする。(情報機関ってそういうものですよ、でもあるわけど)

■ 対立の構図

何を争っているのかといえば、おそらくこういう構造の対立じゃないのかしら。

それは、一極支配型 vs 米の優位性を保った上でのリアリスト型、なんじゃないかと思う。

(A) 一極支配型
戦略重視で、各国はそのためのコマとなる
各国をコマにしないとならないから、年中、クーデター、レジームチェンジ、影で手をまわして選挙に影響を与える、といったことが必須になる。民主化云々はその方便。
つまるところ、トロキスト

(B) リアリスト型 
地域覇権を持った国を複数認める 
つまるところ、普遍的・歴史的な統治が基本になりやすく文明による差異容認におちつく

で、現在は、アメリカが(A)から(B)に移行しようとしているが、(A)追及の「影のグループ」を叩けばすむという話でもないので(利害が錯綜しているため)苦闘している、と。

■ アメリカとロシアの奇妙な関係

整理して考えてみると、オバマ政権というのは、一極支配型の理念に基づき影で動き回っている勢力の動きを、動かせるだけ動かした後でアメリカにとって不体裁にならないように収拾していくことがミッションなのではなかろうか。

そして、シリアのケースを見るに、ロシアは米の敵ともいえない。オバマ政権は「影のグループ」を制するためには、むしろ、ロシアに騒いでもらうことが必要。

ウクライナのケースも、ロシアが騒いだことによってヌランド等の「影のグループ」と動いている人たちが誰だか白日の下に晒されたともいえる。

オバマもケリーも発表は大きく、ロシアにきついことを言っているが、やっていることは小さく、軍の方はほとんど嫌々ながら船を出したり人を出したりしている。ロシア軍およびロシア政府がシグナルを読み違えない、つまり馬鹿でないことを前提に、アメリカが馬鹿に見えないようやりくりしているのではなかろうか。

つまりロシアの強みである敵にされることに耐性がある、狂人でない、国内をコントロールできる(民主主義って一般人が暴発するのが一番始末に負えない)ところを反響板のように利用しつつ、「影のグループ」に修正を促している、と考えてみたくなるわけだ。

もちろん利害はしっかり敵対的だろうけれども、大枠のところで、ということ。

陰謀論的だけど、私は今後この反響板仮説でみて行こうかなと思ったりしている。

■ ロシアに不利じゃないの?

ふと考えると、これじゃロシアが悪者になって気の毒ではないのかと見えなくもない。しかし、シリアのケースではプーチンは得点を稼いだわけだし、そうとも言えないだろうと思う。むしろ色々、さすがロシアだな、みたいな場面が密かに賞賛を呼んでるぐらいでしょ。

また、世界中が全力でロシアを解体すべく攻めてくるよりはずっといいとも言えるだろう。(一極支配型の人は、これを目標にしている。ロシアの資源を民営化して国営で力を蓄えるモデルを粉砕したい。)

さらにいえば、もしロシアモデルが上手く行って、その上善政を敷いたりしたらどうなるか考えてみれば、ロシア叩きは時々必要かもしれないという気にもなるのじゃなかろうか。

エマニュエル・トッドが、名高い「帝国以降」で、ロシアには覇権国家としての普遍性があると言っていたが、実際そうなんだと思う。資源はあるし、理数系の天才も出るし、言語は古く文学者は普遍的だし、我慢強いし、諜報強いし、愛国心あるし、集団主義だし、周辺諸民族が治まる傘を提供できちゃう可能性を秘めている。

問題は、最近のトレンドとどう整合的な施政ができるか、ぐらいでしょう。だから、時々妨害したくなる勢力がむしろ必要じゃないのか、と。

いやいや、力による支配は誰も好まない、という人がいそうだけど、それは多分に西側のイメージ戦略の影響もあるのではなかろうか。ロシアの基本モデルはそういうものじゃないと思う。これは別途考えてみる。

そういうわけで、米ロは奇妙な共闘関係にあるんじゃないのかなぁと見える。そもそも冷戦って米ソの共闘関係、G2だしね。日本政府筋も結構理解しているような気がしないでもないと思う今日この頃でもある。

■ 追加情報

1) 日本語でこの話を書いてらっしゃる方はいないかしらと検索したら、桜井さんという方が書かれていたのでリンクさせていただく。

トルコ政府がシリア政府軍と戦うアル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を支援とハーシュ記者は主張http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201404070000/

2)シリアにおけるトルコの話でよくまとまってる記事。

Turkey Cooks the Books in Syria
Seymour Hersh documents Ankara's efforts to pull the U.S. into the Levant.

(米国を地中海東岸に引き込むためのトルコの努力をハーシュ記者が文書化)
By Philip Giraldi • April 23, 2014

http://www.theamericanconservative.com/articles/turkey-cooks-the-books-in-syria/


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