ベイルートは被災から既にまる3日以上経ち、生存者を発見したり、病院で救急医療が行われたりといった大急ぎのフェーズは終わろうとしている。
この間、近隣諸国は近隣の大国のロシアを含め、いろんな支援をしていた。ロシアの緊急事態省のユニットはいつもながらいいなぁ、こういうのと思わされる。24時間以内に相手先の必要なものを考えてトラックに積めて、そのまま航空機でゴーという仕立てなのでとても効率的。今回も最初から野戦病院みたいな移動病院を持って行って治療にあたっていた。
他の国ももちろん大きな装置持ってるところは持ってきたんだろうけど、でも、なんか、あのへんには米艦隊を始めおっきい軍艦がうようよいるだろうに、そこらへんが諸手をあげて救援しているようには見えなかった。これは一体なんだろうというところがある。
その代りに、マクロンがそうであるように、まず真っ先に声明を出す、なんか言う、金出すと言うみたいな西側の非常に政治的な動きが目立つ。
で、トランプは、日曜日に、マクロンやレバノンのリーダーたち、その他の国々とのオンライン会議をすると言ってる。
「世界の他の地域のリーダーたち」に誰が入るんだろうか?
いやしかし、ちょっと前にはレバノンの復興会議を国連主導でやるようなことをマクロンは言っていたような気がするんだけど、いつのまにかトラちゃんの音頭になってる。
これは何を意味するんだろうか?
いずれにしても、アメの態度はあんまりいい感じはしない。というか、そもそもレバノンの政治・経済を時間かけて壊しにかかっていた人たちはいたわけで、そこにこの事件が起こった。これは、壊そうとしていた人たちにとっては「勿怪の幸い」と言って悪ければ、動くべきチャンス!!なんだろうと思う。トラの立場は今一不明だが。
多分今後、メディアをからめて、
こんなことになったのも、不正が横行するレバノンの現在のシステムが悪いのです。
さぁ、新しいレバノンに向けて出発しましょう!
みたいなことになると予想。
■ 生き延びてるカラー革命派
そして、フランスが宗主国だからというだけでなく、レバノンの国情から考えて、現在、多分、半分以上の人々はそれはそれなりにthe West側が出張ってくることに安堵していると思う。(私がどう思うかに関係なく)
なぜそうなるのかというと、シーア派が全体として支持しているヒズボラはいいとしても、そこを通したイスラムのうちのイラン勢力の伸張を歓迎していない向きは結構な数いるから。
レバノンは、2005年にカラー革命の名前違いである「杉の革命」があって、シリア軍を追い出したところから混乱している。そして、その連続のうちにシリアのアサドを倒せという運動が始まる。全体としてシリア征服プランなわけですが、しかし、征服はかなわなかった。
結果として、イスラエルに攻められる以上軍事組織は必要で、そこをヒズボラがまかなっていたため、ヒズボラはむしろ安定していった。しかし、ヒズボラに影響力を及ぼしていた(支援していた)シリアが自分んちで手一杯になったため、もう1つの影響ソースであるイランの勢力が強まった。
レバノンは、政治的ではなく、各人、各ファミリーの傾向として、基本的に古い都市の生業から持ち越した、世俗的で、コスモポリタンなところが国情として強くあるのだから、シリアが味方でいることは結局はリーズナブルな選択だったと思うんだが、
上述の通り2005年にシリア軍をレバノンから追い出してしまった。
結果的に、もしthe West集団(その中でも、要するにマロン派のファシスト野郎みたいな人たちが主体なわけだけど)がこれまで以上に入り込むとしたら、レバノンのこの15年は、新しいコロニー化への取り組みでした、みたいなものになるのだろうか。
■ 今後の注目点
多分、フランスが出張ってきて、不正がいけない、不正がいけない、政府が機能していない云々と言い募っているところを見ると、現行のConfessionalism、つまり宗教ごとに割り振って政治機構を作る慣習を止めましょう、って話をし出すのではないのだろうか。
これはオスマンっぽい状況でもあるけど、制度化していったのはフランス支配時代。当座は、それでよかったが次第に実際には国家を分離させる根本の仕組みになっちゃってるのもまた事実でしょう。だから、理屈は通る。
しかし、今これを解体するとどうなるのかというと、多分、ファシストがみんな持って行くって話になるオッズは高いでしょう。
というところで、ヒズボラさん正念場だと思う。
ここらへんの問題をネタニヤフの拡張主義とかイスラエルの野望みたいな話にフォーカスして話す人が多く見られるけど、いやそんなそんなって感じを持ちますね、私は。the Westはイスラエルより大きい。そしてフランスはだいたい常に無鉄砲で凶暴だ。
東地中海沿岸の問題は文明がぶつかるところだから揉める。
とっても大変な場所。
そのとっても大変な問題を、単なる反イスラエル問題にして見せてきた傾向があるけど、それはまったくの間違い。the Westはここは本気。