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サンクトペテルブルク国際経済フォーラム:business as usual

2021-06-05 04:56:44 | 欧州情勢複雑怪奇
6月2~5日、ロシアで、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムが開かれていた。

例年6月あたりにやっていると思うけど、去年はコロナ騒ぎでやらなかった。今年は行われた。

コロナも騒ぎだけど、なにせ米とヨーロッパがロシア叩き、ロシア憎しに奔走している中なので、西側メディアでの扱いは予想通り小さかった。

とはいえ、現実は現実なわけで西側メディアが書かないから存在しないというわけにはいかない。

今年は、そういうわけで、このフォーラムが通常通りとなり、それなりの参加者もちゃんとありましたという点がまず重要だったでしょう。business as usual(業務平常通り)を地で行っているということ。

そして、最終日に例年通りプーチンがやってきてスピーチをしていた。その冒頭、ノードストリーム2は、ロシアとドイツの各セクションを除いてほぼ完成、各セクションを溶接したら終わりだ、と宣言していた。つまり、これもまた、business as usualの1つでしょう。必要な人がいて、持っている人がいて商売が成り立ってる。それを政治的な思惑から馬鹿みたいな騒ぎにした奴らに対する、リアリティー重視派のパワーを見せましたといったところか。

こんな街でやってる。the Westだかなんだか知らないやくたいもない奴らがロシアから離そうとする企みをヨーロッパ人たちが嫌がる理由はたくさんある。文化的に一緒にいたい人たちだから。



■ カタール

で、私としては、この会議でもう1つ着目したのはカタール。今年のゲスト国。

カタールのパビリオンだそうだ。
 


で、フォーラムの期間中に、ロシアとカタールがいくつもの契約を交わしていた。

Qatar and Russia ink over 65 agreements at economic forum in St. Petersburg

カタールの貿易担当の大臣によれば、投資という点から見ればカタールがロシアの最大のパートナーでしょうな、だそうだ。

過去数年を見ていても重要なところでカタールが入っていたりする記憶があるので、多分これは本当。そして、セクターも多岐にわたってる。

カタールにしても、サウジにしても、より少ない程度にはUAE(アラブ首長国連邦)にしても西側の各国のように制限されていないってところも面白い。子分のようで子分でない。


カタールといえば、サウジと共にアルカイダ系過激派の資金源として名高く、かつ、それの過激派の行き先は結局のところ多くの場合ロシアの弱体化狙いだったわけだから、この様変わりは面白い。

サウジアラビアもいろんなところで、ロシアと関係している。というより、多分、ロシアに売り込まれてるというべきなのではなかろうか、という気もするけど、とにかく大きなプロジェクトの話をする関係になってる。

サウジに原発を建てるという話もロシアからだし、それどころか、第三国に原発を建てないか、みたいな話もあった。それはつまり、サウジ資金をそっちに使えってことでしょう。あと、水素がらみの協力も言い出してる。

25 MAY, 22:40
Moscow offers cooperation on NPP projects in third countries to Riyadh
https://tass.com/economy/1293673

Saudi-Russian cooperation includes construction of nuclear reactors, minister says

サウジアラビアは、今年は、初めて、ロシアが開催している国際アーミーゲーム(陸軍の技を競いましょう大会)に参加するそうだ。インドネシアも初参加。

Indonesia, Saudi Arabia to participate in International Army Games for first time


中国とかイランがこの大会のレギュラーみたいになったことすら驚きだったのに、今度はサウジですか、といったところ。


■ 産油国同士

で、総じていえば、サウジはロシアのいろんな提案を、過去の悪さから断るに断れないいうのもあるだろうけど、それだけじゃなくて、サウジはサウジで、都合よく使っては消そうとする(に違いない)西側のやり方に腹を立てるところももちろんあるでしょう。そこらへんを、うまーくすくってるのがロシアなんでしょう。

IEA(国際エネルギー機関)という、名前が国際だが、要するに西側各国を束ねる機関が、化石燃料に対する投資をゼロにする、そうすればバラ色の未来、みたいな馬鹿みたいなレポートを書いて、それを日経が拾ってわーわー騒ぐということをやってる昨今、当然のことながら、サウジとロシアは同じ立場にならざるを得ない。

日本でもちらっと話題になってましたね。この衝撃的に愚かなレポート。

IEA「石油投資ゼロ」が衝撃なワケ


で、このネットゼロ推奨レポートに対して、ロシアはデカい声で、ある意味サウジもさそって、IEAのネットゼロ計画とか「非現実的だ」と言う。

Russia and Saudi Arabia reject calls to end oil and gas spending, call IEA’s net-zero plan ‘unrealistic’
PUBLISHED FRI, JUN 4 20216:58 AM EDTUPDATED FRI, JUN 4 20219:41 AM EDT

これはまったくその通りでしょう。いかに産油国が憎くても、そんなことしてどうするよ、といったところ。

さらにもう一発、今回の経済フォーラムでも、ロシアのノヴァク副首相(ついこの間までエネルギー担当の大臣として産油国との駆け引きに奔走していて上首尾だったので副首相に出世した)は、こうやって石油関連の投資ゼロにしていったら、原油価格はバレル200ドルまで上昇する可能性もあるだろう、とか言ってた。

Suspending investment in oil to push price up to $200 per barrel, says Novak
https://tass.com/economy/1297779


これは別に産油国の希望を言ってるんじゃなくて、普通に考えてもその可能性は出てくるでしょう。

だって、掘り進んでいってる資源なので、150年かそこら使ってきて、次第に手間のかかるものになってるわけですよ。そこで、もう投資しない、となったら、今あるもの、簡単に手の届くところの原油しかゲットできない、需要に対して供給が減る、価格が上昇する、となるのはむしろ合理的な推論でしょう。

金融屋は技術、というか現業をなめてる。

そういうわけで、business as usualとはいかない世の中ではあるにせよ、それでも人はものを食べるし、寒けりゃ温まりたいし、暑けりゃ涼しくしたい。そこが変わることはないでしょう。

■ オマケ

現在注目のパイプラインは、既にノードストリームじゃなくて、パキスタンのもの。カラチ・ラホール間を結ぶパイプライン。陸揚げして内陸に運ぶっていう設計のように見える。どこのを入れるのか・・・誰が金出すのか・・・で結構揉めてる。

で、もし、資金繰りが上手くいくならば、2025年に完成させることができるとロシアのエネルギー大臣がサンクトの会議で言った模様。

“If it goes well with funding issues, we expect the project to be fully implemented in 2025,” the minister told journalists on the sidelines of the St. Petersburg International Economic Forum. 


■ オマケ2:ノヴァク

ノヴァク副首相は、次世代ロシアでもきっと重要な人になってると思うな。だって、こういう人たち(左、ガスプロムのミレル、右プーチン)に育てられて各国の海千山千と渡り合ってきた人だから。一挙手一投足を監視されながら、動かされてた(笑)とも言うだろうけど。



プーチン政権の強みは、情報機関出身者が多数だったこと。情報機関出身者は、主流メディアが書く「正しいナラティブ」以外のものを見ている人たちのことだとも言えるでしょう。つまり、表では嘘がまかり通ってる。

ノヴァクはバックグラウンドが経済なので、治安機関、軍出身者より弱い、正史を語りかねない背景なわけだけど、エネルギー相体験によってリアルにモノが動く世界、つまり、「正しいナラティブ」でない、裏を見る人になったと言えるんじゃないかと思ったりする。表に出ない登場人物にも会っただろうし。そんなわけで注目してる。


■ オマケ3

総合の数字。

 



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1 コメント

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産油国の夕張化目指す西側諸国! (ローレライ)
2021-06-06 10:38:32
炭鉱政治家トランプの失脚以来、産油国の夕張化目指す西側諸国の偽環境保護に対抗してOPECの陣営の復活図るロシアサウジイラン中國の陣営連絡のペテルブルク会議!
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