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高野連の行動こそ紛らわしく疑わしい(3)

2013-08-24 07:13:58 | 日々雑感

久しぶりに野球を熱心に見ていたら、とんでもない事態になっているように思えつい書き継いできたが、じっくりといろいろ読んだり見て考えるに、私が海外に行っていた10年ぐらいの間に、高野連とマスコミがタッグを組んだ「偽善」の押し売りはここまで来ていたのかと驚いた。

しかも、ネット界隈の人々の見解のいい加減さというのも相当酷い。政治モノの見解であちこちのコメント欄とか2チャンネルのスレッドとかが非常に荒れることがあるが、あれと同じ。そこから考えるとある種の工作員みたいな人もいるんでしょう。手際もいいし。まぁそれはそれ。

別に花巻東を応援したいと思っていたわけでもなんでもないが、野球というスポーツが他人を貶めるためのネタに成り下がっていることが残念でならない。しかもその主体は高校生なのだ。気の毒すぎる。

ネット打法については前に書いたし、その後あちこちのブログやラジオなどでも、高野連の処置はおかしいという意見が出てきたようなので、ちょっと安心した。

しかし、もう一つ、「サイン盗み」という語は訂正すべきだと思う。だって、高野連が規律しているのは、「サイン盗み」ではないから。

■ 「コースや球種を伝える」

鳴門vs花巻東の試合の8回2アウトから、審判は二塁走者の千葉くんの元に血相を変えてかけより注意をした。その行動があまりに感情的に見えたので私は驚いたが、どうあれ彼の行動がもたらす意味は、走者がサインを伝達していると疑える行為があったので注意した、だ。

この件について、赤井淳二大会審判副委員長(61)は「(二走が)紛らわしい動作を行なっていたので、大会規定16により(球審が)注意しました。罰則ではありません。

と語っている。
http://www.sanspo.com/baseball/news/20130820/hig13082011030009-n2.html

この審判の行為は、大会試合規定16に基づく。同規定とは、

走者やベースコーチらが、捕手のサインを見て打者にコースや球種を伝えるなどの行為を禁止する。もし疑わしい行為があれば、審判委員はタイムをかけ、当該選手と攻撃側ベンチに注意をし、止めさせる。

同規定は、日本高等学校野球連盟の審判規則委員会が「周知徹底事項」としてあげている中の「マナーについて」という中の一項とほぼ同じ。
http://www.tottori-hbf.jp/syuuchi.html

読めば分かるとおり、禁止されているのは、「捕手のサインを見て打者にコースや球種を伝える行為」だ。

しかし、人々は「サイン盗み」がいけないと触れ回っている。

そして、youtubeにアップされている動画やその他のクリップ画像を見ると、多くの人が「あからさま」と指摘しているが、千葉選手が手を振っている、ちょろちょろ動いている等の行動は、本当に、「コースや球種の伝達」を示すのか?

その前に、そもそもこの規定自体、個別具体的に考えると非常に曖昧だ。ちょっと考えただけで次のような疑問がもちあがる。

サインとは解読されるべきコードの意味なのか、それと視認した情報を含むのか。

二塁走者が視認したもの(例えば捕手の位置)を打者に伝えるのは、サインの伝達なのか?

エンドランや盗塁のために、走者、打者はサインまたは合図を交換するが、この動作と、「捕手のサインを見て打者にコースや球種を伝える行為」を、審判は見分けられるのか。

「捕手のサインを見て」というが、サインの解読には単なる視認より時間がかかる。事前情報等から配給を読んだ打者が上手く振れている場合、相手方捕手が警戒し、塁上走者の単なる動作を「サインを読まれた」と感じた場合、このアピーるは有効なのか、等。

要するに、この規定は、元々正確に判定できないことを前提にしているのではなかろうか。だからこそ、その帰結も、審判が疑わしいなと思ったら「注意」を与えろ、でしかないし、そこに具体的なペナルティーがない。上の審判副委員長も、罰則ではないと言っている。実に曖昧な、法ではないんですが、こうしていただきたい、という規定なのだろう。そして「こうしていただきたい」の中身は実は決まっていないので、相手の側は、用心に用心を重ねて内側のラインを取って行動するしかなくなる。税務署ににらまれた中小企業、別件逮捕を恐れる前科のある人、みたいな心境か。

■ 噂が「真実」を作る材料と手順

「サイン伝達」違反は、上で見たように実際曖昧な規定で、そもそも「違反」というのも違うのかもしれない。あくまで疑義への注意が行なわれただけだ。

しかし、ネット上ではすっかり、花巻東は確定的に「サイン盗み」を行なったことなっている。カット打法はいいが、サイン盗みが高野連を怒らせたのだろう、のように。

この認定に大きく貢献したのは、次の3つの事情だと思う。

(1)  審判が、突如血相を変えて、かなり感情的に二塁に向かった。

(2)  鳴門高校捕手や関係者が説明というより感想、思い込みを試合後に語り、マスコミがそれらを無定見に流した(マスコミが作話してなければだが)。

(3)  高野連の審判部ではなく、参与という肩書きの人物が、もし次の試合で同じことが起こったら「没収試合」の可能性もあると発言した。

(1)も(2)も(3)も、「サイン盗み」を証明するものではない。

(1)は、あの審判はなぜあんなに感情的なのか不思議なぐらいだったが、これがまた、既に花巻は真っ黒認定派にとっては、あんなに怒るほど酷かったのだ、に見える。警察があんなに見張ってるんだからきっと犯人よ、式。

(2)も、鳴門高校の捕手は申し立てた人なのだからそりゃ、花巻東は露骨にサインを送っていたと言うだろうし、関係者はそれに「尾ひれ」をつけた談話をする。しかし、それはどれだけ言っても一方当事者の見解にすぎない。

(3)は、前にも書いたとおり、高野連・竹中雅彦参事の言葉。

審判部ではなく、参事にそんな権限があるのか、かなり怪しい。「注意」しかできない事項を重ねると没収試合になるという理屈は相当おかしい。

総じて言えば、高野連の妙な対応と鳴門関係者のはっきりともしない「やっぱりそうだと思ってました」的なコメントが、花巻東まっくろ説の根拠だ。

高野連は、本当に老獪な組織だと思う。何を言われても、突っ込まれても、おそらく、「疑わしい行為があったので注意を与えたまでです」としか言わないだろう。何が疑わしく、その注意は判定なのか否か、どんな意味を持つのかを尋ねても、「マナーの問題です」と答えるだろう。

ルールがあるならルールに従うべき、と言って何か正しいことを言った気になる人もいるが、ルールは適用可能なもので、それが適切に運用できてはじめてルールだ。平等、公正に運用できない努力目標を書きつられたものをルールと呼ぶのは誤りだ。

高野連は、この運用上難点がありすぎる規程を早く外すか、運用が可能なまでに制度設計しなおしてほしい。

(ちなみに、私はサイン禁止の有効ですばらしい制度設計などできるはずがないと思う。野球というのはどこまで行っても読み合い、盗みあいのスポーツだから、もしサインを伝達しあう行為を完全に効果的に禁止しようとしたら、それはこのスポーツのエッセンスを抜く行為だと思うからだ。)

■補足:

上の(2)であげた鳴門側から出た言葉の一例。

 だが、敗れた鳴門サイドからはこんな声が飛び出した。「(花巻東戦に備えての)ミーティングで(鳴門・森脇)監督から『向こうはサインを盗むから気をつ けろ』という話がありました。対策として試合後半はサインを変えたり、遊撃手が二塁走者の前に立って見えなくするとか。ベンチの選手が相手のランナーや ベースコーチの動きを注意して見るようにもしていました」とある選手。試合前から花巻東の動きを警戒していたという。

鳴門の学校関係者は「残念というか…。そんな野球をやっていたとは以前から聞いていた」とぶぜんとした表情を浮かべ、ナインも「(花巻東の)一塁コーチもこっちのキャッチャーばかり見ていました」「勝つためとは思うけど、フェアじゃない。本当にやるんだなと思いました」などと不満そうに話した。さらに他校の選手からは「(花巻東の疑惑は)有名な話ですよ。結構前から知っていた。千葉だけじゃないですよ。二塁から首をクイクイって左右に振るとか…」との声も…。

http://www.tokyo-sports.co.jp/sports/baseball/175089/

昔の高野連なら学校関係者に注意するレベルだとも思う。なにしろ審判の注意(あくまで疑念でしかない)を超え、他校およびその生徒・関係者の名誉を無根拠に毀損することを語っているのだから。

しかし皮肉なものだ。鳴門高校は「サイン盗み」を放置した時には勝っていたのに、8回2アウト、一打同点という大ピンチに捕手が審判にサインの伝達をアピールし、論理的には「サイン盗み」がなくなってから、不運な打球をきっかけに敗北した。野球のサインとはもっと奥深く、幅広いものなのではないのか。


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