東アジア方面では南北朝鮮問題で話題がいっぱいという趣だが、世界的にはイラン・ディールがどうなるのかにハラハラしている報道も同様に大きい。
2015年にいわゆる5大国+ドイツとイランの間で合意した合意をトランプはぶっこわすと言い続けているため、イランとアメリカの間で厳しい言葉の応酬が続いている。
そんな中、イランとロシアは関係を深めていて、前から噂のあった、ロシア主導のユーラシア経済連合(EAEU)とイランとの間にフリートレードゾーンを作ろうとしていた。両国間の基本合意はされているようなのだが、いつまでにというのはかなり不透明だった。今年中にとか春までにとかとか言われていた。そんな中4月24日、ロシアのメドちゃんがこの合意を承認した。
Russia's PM approves agreement on establishing free trade zone between EAEU and Iran
http://tass.com/economy/1001393
MOSCOW, April 24. /TASS/. Russian Prime Minister Dmitry Medvedev has approved a draft interim agreement with a term of four years that provides for the formation of a free trade area between the Eurasian Economic Union (EAEU) and Iran, according to a relevant decree released on the government website on Tuesday.
それとは直接は関係がないが、イランはロシアのリージョナル・ジェット40機を発注して、とにかく早く納品してくれと言っているという話も出て来た。
Iran Agrees $2B Deal For Russian Passenger Jets, Amid Ongoing Delays For Airbus And Boeing Planes
基本的にイランは、長らく西側の恣意的で一方的な経済制裁に苦しんでいたので、いろんなインフラ整備が遅れており、航空機が古いのばっかりになってるというのもその一つ。
そこで2015年に上のいわゆるイラン・ディールが成立した時、オバマはボーイングに80機だったかのドでかいお土産をつけていた。これはつまりこういうプレーヤーを絡ませることで後戻りさせないためだろうと言われていた。
欧州もエアバスを100機だか受注した。
ところが、トランプになってから話がひっくり返っているためなのか、それ以外にも理由があるのか知らないが、ボーイングはまだ1機も納品しておらず、エアバス+ATR組みもちょびっとの納品にとどまっていると上のFobesの記事は書いている。
Together these deals represent several tens of billions of dollars’ worth of aircraft. However, relatively few have been delivered, with just a handful of Airbus and ATR planes arriving in Iran to date and no Boeing planes.
そこでロシアのリージョナルジェットの出番となったらしい。リージョナルジェットは確か20機ぐらいは前から受注していたような気がするんだが、それが倍増したということなんじゃないかと私は記憶する(Fobesはそうは書いてない)。
ということで、このへんはいろいろ流動的だが、欧州勢は基本的にイランと商売がしたい。何がなんでもしたい。だからトランプ邪魔するなと言いたい理由は多数ある。
さらにもう一つ。
これも前から出てるネタである、ロシアとイランの間の物々交換は5年の枠組みで合意されて既に導入され、最初のイラン産原油がロシアに運ばれましたというニュース。
Russia & Iran drop dollar trade by extending oil-for-goods supply agreement
Published time: 19 Apr, 2018 04:28
Edited time: 19 Apr, 2018 08:41
https://www.rt.com/business/424541-russia-iran-oil-supplies/
枠組みとしては、イランがロシアに原油を渡して、ロシアは450億ドル、ってことは5兆円近い規模で物品をイランに納品するというもの。
Moscow and Tehran ratified the agreement, under which Russia would initially buy 100,000 barrels a day from Iran and sell the country $45 billion worth of goods.
5兆円の信用枠を作って、決済は原油でする、と考えればいいんだろうね。ある意味通貨より取りっぱぐれがないとも言えるかも。
こうやって国家ごとに国際決済を物品で決済したら、別にあんな闇だらけの中央銀行システムネットワークなんかいらねーってのという示唆が楽しい(笑)。
■ S-300の余波
で、シリアにロシアがS-300を納品するんじゃないかというので、イスラエルの新聞が毎日ロシア、ロシア、ロシアとうるさい。これは上のイランディールが決まった直後、S-300がロシアからイランに納品された時を思わせる。
シリアへの英米仏の空爆の直後からロシア軍がこういう態度を取った。
シリアにそろそろS-300を配備しよう
S-300はミサイル対応だから、これを置かれるとイスラエルは勝手に他人様の空域に爆撃するとかいう長年の「既得権」の有効性が著しく損なわれる。
ロシアはどうもホントにシリアに導入するらしいとなったら、今度はイスラエルは、そんなもの撃破してやると息巻いている。
しかしその一方で、リーバーマン etc. がロシア当局者と折衝を続けていて、
Defense Minister says Russia is a ‘very pragmatic’ actor in Syria
https://www.timesofisrael.com/defense-minister-says-russia-is-a-very-pragmatic-actor-in-syria/
ロシア人はプラグマティックな人たち、合理的な人たち云々だから心配するなみたいなことを言っていたりもする。
確かにロシア人はプラグマティックな人たちだが、裏切者を許さないときなど、決意した時に断固とした行動を取ることでも知られていると思う。
■ オマケ
イラン問題というのはイランというより、イスラエルの問題の反射。そしてイスラエル問題、というより中東の混乱は、
- 油田地帯へのコントロールを絶対手放したくない人たちの既得権保持問題
- シオニスト→ネオコン/トロキストの変容の結果としての既得権保持の問題
- 中東を支配下に起きたいという欧州+カトリック勢の長きにわたる希望
あたりが重なってこんなことになってるんだと思う。
その結果としてイスラエルは世界中から嫌われる、もはやどうしようもない国家になってる。周辺民を殺したところでそのイスラエルに希望を持つ国民がいなかったら国勢はさがる一方。というところで、このへんでまずは考えてみたらどうなんだいと示唆され続けているんだろうと思う。
というところで、話は難しいんだが、でも、ロシアは2を解こうとしていると思う。
このへんはその取り組みの一環でしょう。
ナチズム打倒においてソ連が果たした役割を決して忘れない by ネタニヤフ
イスラエル、5月9日をビクトリーデーにする
まもなくビクトリーデーなので、何か動きがあると思う。