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ポスト安倍が見えない日本 (7):対処療法的嘘の限界(2)

2019-01-11 18:08:45 | アジア情勢複雑怪奇

ロシアとの平和条約交渉はもう決まったのだ、2島返還だ、みたいなことを書いている人が時々見えるんだけど、どうしてそんなことが言えるんだろう?と非常に疑問に思っている。

なぜなら、ロシア関係というのは第二次世界大戦の終結周辺についての、あるいは戦争に至る過程を含めた20年ぐらいの日本のオフィシャルストーリーを崩してしまう話が含まれているのだから、日本側は抵抗するに違いない、から。

このへんでさんざん書いた通り。今まさに起こっていることは、私の考えでは対処療法的嘘の限界の話。

ポスト安倍が見えない日本 (6):対処療法的嘘の限界

2018-10-14 16:03:44 | アジア情勢複雑怪奇
 

そんな中、雲行きが怪しくなっているようだ。

安倍ぽんを含む日本の公人の発言および読売新聞のリークに関して、駐ロシアの日本大使がモスクワのロシア外務省に呼ばれて抗議された。

ロシア「合意を乱暴に歪曲」と非難:日露首脳会談は実現するか?中村教授、中止または延期の恐れを指摘

https://jp.sputniknews.com/opinion/201901115795301/

 

それを受けて、ロシアでは下院にクリル諸島引き渡し禁止を求める法案が提出されている。

クリル諸島引渡し禁止法案、露下院に提出

https://jp.sputniknews.com/politics/201901105792607/

ロシアの自由民主党に所属するセルゲイ・イワノフ下院議員は、クリル諸島(北方領土と千島列島)が露サハリン州に属すと規定し、この領域の排除に関する条項を含む法的文書を禁止する法案を下院に提出した。

LDPR lawmaker submits bill to Russian parliament to ban Kuril Islands’ transfer to Japan
January 10, 18:59 UTC+3

http://tass.com/politics/1039411

  

どうしてこうなったかの説明は、スプートニク日本語版で筑波大学の中村逸郎教授がいろいろ解説されている。

中村氏「島民への対応や賠償請求権といったテーマは、両国首脳が共同で発表する類のものです。これでは、イニシアチブは完全に日本にあることになってしまう。それについてはロシア外務省の抗議の中でも明確に書かれています。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は何度も、平和条約交渉は、日本が無条件に第二次世界大戦の結果を認めた上で進められるべきものだ、と発言してきました。日本が、現島民を追い出さず、元島民に対して日本政府が補償する方向で検討しているということは、ロシアからすれば第二次世界大戦の結果を『受け入れていない』証拠だと受け止めるかもしれません。なぜならこの補償とは、ロシアが不法に領土を占拠したことに対する補償だからです」

 

で、その根本にあるのは、田岡俊次さんが実にあっさり語ったこの話。

田岡俊次さんの言い方を借りれば、結構なインテリでも、北方領土はロシアが不法占拠したと本気で言っている、という状態のこと。

ここに入れた田岡俊次の動画は、手短でわかりやすい。

ポスト安倍が見えない日本(2)

 

日本はそもそも国民にポツダム宣言の内容すら教えず、外務省は日ロ関係ではサンフランシスコ条約が問題だというのにそこを見せず、結果的に常に常に、あれはロシアの不法占拠であると、メディアと街宣右翼を通じて宣伝してきた。

しかし、そんなものいくら宣伝したって、本筋には関係ないんだから意味がないどころか、ロシア側の心象を悪くし続けてきただけだ by 田岡、というのもまったくその通りでしょう。

ロシア大使館、ソビエト大使館の周りには人相風体のよろしくない街宣右翼の人たちがたむろする、という長い歴史を日本は持っているわけですが(笑)、こんなものを見せられて、あるいは場合によっては脅されて(だってそもそも怖いでしょ)、日本って素晴らしい、日本人って素敵、日本人は優しいわ、とか思うロシア人はいないだろうなとしばしば思い、考えると滑稽な話にしか思えず愕然とする。

それは日本人の一般人にとってもそうで、ああいう街宣車の人たちの地鳴り声が必要なのであれば、それはつまりスジの良い話ではないと言ったも同然であろうと私はずっと思っている。

この状況を生じさせたのは日本の外務省もしくは政府、自民党、といったあたりなわけだから、まずなぜこうなったのかを日本国民に説明する必要がありますよ。

私はそれをせずに、いい加減に、後ろで幾重にも幾重にも秘密のディールを作って、表面では日本国民向けに、ロシアは金が欲しかった、そうだそうだ、みたいな調子で話が終わることはよろしくないと思っているので、ラブロフ外相には是非強硬に、これは第二次世界大戦終結の問題であると言い続けていただきたい。つか、私がどう思うとそうすると思いますが。

 

■ 関連記事

3000億円くれてやった、は多分嘘という話。

日露:平和条約 or WW2終結問題

2018-09-12 23:49:12 
 


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10 コメント

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敗戦を受け入れない日本の与野党に外交資格無し (ローレライ)
2019-01-11 19:23:16
ロシア視点だと、敗戦を受け入れない日本の与野党に外交資格無しと言う話。
アメリカが特殊なガラパゴス空間を日本に造って目クラの日本人を育てたという占領政策の被害者意識が日本人に無い話。
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2015年をスルーしたバカさ加減 (ブログ主)
2019-01-11 21:06:15
ローレライさん、

これは中国との間の台湾、朝鮮半島の決着とも関係があるから、ロシア政府はこの地域で唯一の言葉たっしゃなプレーヤーとして踏ん張ると思う。

中国、朝鮮&日本ではこじれるばかりだとアメも知ってるから、露が悪者になってほじくってくれることをむしろ期待してたりしそう。いや、俺らは仲たがいさせるのは上手いけどさ、みたいな(笑)。
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ロシアテレビで領土問題 (石井)
2019-01-12 20:45:30
一般にロシア人の日本に対する印象、日本人に対する態度は非常に良好で、こちらが気恥ずかしくなる位なのですが、テレビで日本のことが話題になることは滅多にありません。それでもこの問題は例外らしく、この間は1日に2回も取り上げられていました。(60 Minutesという番組、毎日昼晩2回別内容で生放送)
https://www.youtube.com/watch?v=wx6f7v7XdbE&t=2220s
ロシアテレビの東京特派員(完璧な日本語使い)が日本の「2島返還は確定、後は島民の処遇問題のみ」という雰囲気を伝えた所、「夢よ夢、私の甘い夢は何処。ということに日本はなるだろう。」と軍事評論家の右翼が発言、スタジオ中が苦笑していました。司会者(夫婦)も強引で絶対に誰にも渡さないという空気に満ちていました。画面右側の3人が、所謂リベラルで、強烈な反共反ソ反露の連中です。何事でも政府には反対な彼等ですら、日本に返すとははっきりと言わず、交渉と国民への説明が必要と言葉を濁す感じでした。一番冷静だったのは、クリルの首長で、「安倍の発言はマトモに受け止めていない。ここは我々の領土で故郷だ。」ネットの書き込みを見ていても、ロシア国民からは、2島返還すら不可能と見ざるを得ません。第2次大戦の犠牲の上での領土のひとつであるということと、フルシチョフがやらかしたクリミア譲渡と並ぶ失策という意識が働いており、日本がいつまでも夢見る夢子ちゃん状態では、未来永劫、問題解決はなく、グダグダの関係が続きそうです。本当はロシアは日本にとって非常に有益な国になる可能性十分な筈なのですが。
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概ね同意です(残念ですけどね) (ブログ主)
2019-01-12 21:04:17
石井さん、

レポートありがとうございます。
ロシア国内で話されていることだけでなく、そこから漏れてくる英(または英独仏あたり)語で話す在外ロシア人の反応を見てもおっしゃる通りにみえます。

また、過去数年の殊にウクライナ問題をめぐって、ロシアはNATO東方拡大問題で西側に騙されたという認識が特にアメリカで広がっています。したがって、ここでまた米軍基地の島たる日本が何かいっているというのは、ロシアはまた騙される問題になってしまってる。

日本国内ではこれをまったく気にかけてませんが、覆しようがないトレンドです。

更にもう一つ、ロシア当局者は今回本当に怒ったんだろうと私が思ったのは、島民を「袋に入ったじゃがいも」扱いしていることでしょう。「袋に入ったじゃがいも」というのはプーチンがウクライナ問題の時に発言した言い方です。

ソ連が崩壊した後、バルト三国、ウクライナ等々15の共和国にいたロシア人はある日突然「外国人」になって、そこで満足な人権的保障を受けられないケースが多発し、まだ解決していないところもあります(特にバルト三国)。プーチン周辺はこの問題を不正であるという感覚で捉えていると思いますし、それは正しいと私も思います。

日本の、特に安倍の発言は、島民を非常に軽く扱ってると私でさえ思いました。

といったところで、まぁその、ゆっくりやるしかないんじゃないでしょうかね。プーチンが来日の時いっていた通り、人々の交流があってはじめて解決できる問題でしょう(中国と自分たちは40年かかったとも言ってましたよね)。
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領土コンプレックスを捨てるべし (ローシャン)
2019-01-13 23:14:55
以前、正月に北方領土の写真集を1冊5万円で買えと電話がかかってきて、丁重におことわりすると、急に声色が変わって「私らも遊びでやってるんやないんや!」と怒鳴られあわてて、ガチャ切りしたことがあります。それから数年、歳が明けると電話でひやひやしてました。

戦後の日本政府の対ソ・対露政策は文化的な香りが全くないですね。秋田犬を贈ってなんぼ気を引いてもダメですよ。

「関特演」のとき沿海州を占領してその後ハルピンの交響楽団を持って行って、宣撫工作に使うという話を聞いたことがありますが、そのころの方がロシア人を理解していたのかな?

日本は領土コンプレックスをいい加減卒業しないとね。





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私の知らない世界 (ブログ主)
2019-01-14 17:33:43
ローシャンさん、

またまた、私の知らない世界のお話、教えていただきありがごうございます。

何かこう、「北方領土」って戦後の時間の中で特定の人たちの営業ツールになっている部分は実際あったんだと思うんです。そういうのも調整しないと終われない。それは別にロシアのせいじゃない。どうするんでしょうか。
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南千島郡という郡はない (И.Симомура)
2019-01-15 04:15:01
行政管区上は千島全島が千島郡に一つに所属していますね.南千島という領域概念があるならば,当然「北千島郡」と「南千島郡」の両方があって然るべきでしょう.(歯舞諸島は根室郡に所属していたかな?)あの近藤重蔵は、既にエトロフ島に建立されていた,ロシア正教会の十字架を倒した上で日本の国標「ダイニッポンエトロフ」を立てたのです.つまり固有の領土ではありません.「還ってきたら儲けもの」という考えで領土を扱うのは,危険この上ない,ということを認識するべきだ.
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郡ではなく国(くに}の誤り (И.Симомура)
2019-01-15 18:52:12
ブログ主様 前通信に誤りがあります.「郡」ではなく「国」が正しい表記です.申し訳有りません.
 カムチャッカに近い島の風景を撮影保存した,ガラス乾板原版が網走の北海道立北方民族博物館資料室にあります.中には,天皇侍従訪島に備えて築工された,張り出し型大桟橋と沖の軍艦が撮影されたものもあります.父親は水産技師でしたが,彼の言に拠れば,千島列島水域では漁獲は安定したものではなかったそうです.
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千島国 (ブログ主)
2019-01-15 19:17:40
И.Симомураさん、

興味深いお話をありがとうございます。
明治維新の後に古代律令制風に国郡里制の名前を付けた時の名前のことをおっしゃっているものと理解します。

しかし、思えば日本では「北方領土」に拘るわりには、千島国を置き、みたいなことをやっていた当時のことをあまり語りませんね。これはやっぱり語り出すと、北海道その物がヤマト的日本の征服地としか言えない(であれば千島が固有の訳はない)という話に流れるのがイヤなのだろうか、など思ってみたりもします。

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放棄千島列島問題の最良解説ブログ (И.Симомура)
2019-01-15 21:08:39
ブログ主様 放棄千島列島の諸問題は,「ソ連のカメラ・レンズ」というブログの「北方領土問題」の名の支処で論じられております:
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/indexHoppou.htm.私はロシア極東を研究するNGOに所属していますが,このサイトで援用されておる条約文,古地図,日本政府発行切手の図案,郵便局の消印の千島国の印,米国で発行された「ソ連千島侵攻歓迎」のラベル,等々,非常に貴重なものが多いので,会員に必読をもとめたことがございます.なにやら外務省はそろそろ千島全島は放棄したものであることを認める方針に切り替えたのではないでしょうか.根室などでは右翼の街宣車の影が薄くなったということです.
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