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欧州の極右がプーチン大統領を賛美する理由

2014-04-27 19:36:19 | 欧州情勢複雑怪奇

この2か月の間に、プーチンがどうも欧米の右派に好まれているという記事を2本書いた。

プーチンはアメリカ右派の希望の星なのか

EU不拡大で一致しちゃうイギリス保守系とプーチン

ついに、プーチンおよびロシアを憎んであまりある派閥の勇たる英エコノミスト誌が記事にしていた。感慨深い。

まぁ、トレンドとして見逃すわけにはいかないほど大きくなってるから、これを書かないで欧州議会選挙を迎えたら読みに影響がでるわけで仕方ないか、となったのかしら。

「欧州の極右がプーチン大統領を賛美する理由」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140423/263385/?n_cid=nbpnbo_top_updt&rt=nocnt

 欧州の極右主義者たちはプーチン大統領に何を見ているのだろうか。形は違えど国粋主義者である彼らは、ロシアの影響を逃れるために戦うウクライナに肩入れしてもよかったはずだ。ハンガリーのシンクタンク「ポリティカル・キャピタル」のピーター・クレコ氏は、プーチン大統領が支持を集めているのはロシアが運営するメディアの好意的な報道だけが原因ではないと指摘する。

 プーチン大統領が力強く国益を主張する姿や、キリスト教の伝統的な価値観を重視する姿勢、同性婚への反対、そして重要な経済部門を国の管理下に置くその手腕に多くの人々が惹かれているという。加えて、東欧に根づく「汎スラブ主義」(スラブ民族の連帯と統一を目指す思想)も一役買っている。そして一般に言われるのは、極右主義者の多くがプーチン大統領と同様に米国・EU(欧州連合)が主導する世界秩序を嫌っているということだ。プーチン大統領にとって、極右主義者たちからの支持は欧州で影響力を持つための第2のチャンネルとなる。

2番目の段落の読みは正しいと思う。米国・EU(欧州連合)が主導する世界秩序、いわゆるNWO(New World Order)とかいうのを嫌いぬいている人が多い。この嫌悪への発信源はイギリスだと思う。イラク戦争の頃からNWOという語が一般化した。

でも、「ロシアの影響を逃れるために戦うウクライナに肩入れしてもよかったはずだ。」は笑止千万でしょう。ウクライナは欧州とアメリカのNWO主義者たちが、金融資本のため、石油資本のためだか何だか知らないが、ウクライナの一般人のためではない理由でクーデータを起こした、と多くの人々は騒いでいたし、今もいる。

ウクライナを偽の希望でつってIMFに直行させるというその行動様式が酷いだろう、という左派の人もいる。だから実のところ、プーチンの方が少なくとも普通、ロシアの方が気前いいじゃないかというのは「極右」現象でもない。

クーデーターという語がきついなら、they toppled the legitimately eletected govenment(彼らは選挙で正当に選ばれた政府を倒した)とかぐらいでもいいけど、なんせ、この政変はEU&USAの産物だと考えている人たちは多数。米国ではここはほぼ情報操作されて「クレムリンの言い訳」扱いされているが、欧州では、そのクーデーター政権に、穏当に言って「極右」、実態はネオナチめいたい人々が多いことまでよく知られている。

ところが、主流メディアはそこをすっ飛ばす。

欧州各国で、うちの主流メディアは違うことを言ってるけど、そんなの嘘!と思う人が多発したし、今もしているでしょう。そこでまたNWOに行くわけです。

■ とはいえ情報統制発令中

で、ここで、現在はネット上ではさらに微妙な情報統制がなされている。欧米の記事の下にはしばしばコメント欄が付されていて、そこで議論とか罵倒が行われている。2チャンネルっぽいのもあれば、かなり有益な話になっていることもしばしばある。

が、最近ウクライナ関係の記事のコメント欄がしばしば封鎖されている。確か4月1週目ぐらいのどこかで、あれ、っと思ったらイギリスのメジャーなところはみんな一度にそうなった。

その前はといえば、Telegraphなんか反共でならしたイギリス右派御用達の新聞なので、それ相応の記事が載るのだが、その下のコメント欄が100じゃなくて、1000とか2000とかいう数のコメントであふれて、その大半が、そうじゃない、あのクーデター政権はおかしい! ポーランドにNATOの兵を駐留させるだ?また私たちを戦争に連れ出すつもりなのか!! みたいな西側的にはあってはならない(笑)意見ががーーーっと書き込まれることがあって、みていて結構はらはらするぐらいだった。

その上、UKIP(イギリス独立党)のファレージ騒ぎがあったので、これはあかんとなって、現在のTelegraphはより厳しくウクライナ関係の記事は反ロシアで淡泊でコメント欄なしになったんだろうと思う。Guardianの方もまちまちだが、基本的には開いてるかな。

4月7日の、ロシア外相ラブロフ氏の記事には、実に4700ものコメントがついている。これがある種のピークだった気がするなぁ。この後、Telegraphは止めたんじゃなかったか。

It's not Russia that is destabilising Ukraine (ウクライナを不安定化させたのはロシアではない)
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/apr/07/sergei-lavrov-russia-stabilise-ukraine-west

まぁ、別にみんながロシア支持になるわけじゃないんだけどね。このあたりでクーデターの話を欧米はカットして、適当にロシアが怖いぞ、のトーンに持っていきたかったので、ラブロフ氏は反撃に出たというところか。

ところがこれが大反響になったので、もう諸国民には好きには言わせないと誰かが考え出した・・・。それは誰が? でもってまたまたNWOに行くわけです(笑)。

■ 「極右」の伸張には主流メディア不信もある

結局、こういうことをするからこそ、余計にEU/NATO/USAはおかしい、NWO阻止となる。

上のThe Economistはそこをすっ飛ばしているが、プーチン好きのトレンドに乗っていなかった人でも、この春の出来事によって何かがおかしすぎるとなった人は少なくないだろう。その時プーチンは事件の象徴にすぎないが、反EU票にはつながるだろう。

というわけで、「欧州の極右がプーチン大統領を賛美する理由」には、メディア不信という大きなファクターもある。

そうそう、ロシアは情報発信を非常に重要視して多数の自国メディアを用意している国なので、それを読むと欧米の話と違うじゃないか、となる。これは非常に大きい。考えてみれば欧米メディアが初めて本格的に挑戦を受けているともいえる。

アメリカではこれを、「ロシアのプロパガンダを信じるな」である程度振り払えているのだが、上で書いた通り、欧州はウクライナの位置を知っているし(アメリカ人は2割以下しか知らないというアンケートもあった)、そもそもネオナチって何よ、でミソがついてしまったので、ロシア報道が一概に間違っているわけではない、と考える人、少なくとも両方プロパガンダとして読めばいい(結果的に欧米メディアの信頼は落ちる)となった人も出て来ただろう。


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