フランスはマクロンの方がちょっと譲歩した模様。
フランス、燃料税の増税延期=デモ参加者との会合は中止
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120400694&g=int
【パリ時事】フランスのフィリップ首相は4日、テレビを通じて演説し、来年1月1日に予定していた燃料税引き上げを6カ月延期すると表明した。
来週は12万人集結予定、バスチーユでやるぞとかいう話になってたし、どこで取ってもデモの支持は高く、低くて70%台、高くて84とか85%だったので、一部が騒いでるだけ、みたいな日本の当局者が大好きな手法は全然取れない。
フランスはデモは当然だとはばからない国民から成る国として世界有数だから、この成り行きはまったく理解可能。ただ、暴徒っぽすぎるだろうという部分は2005年あたりに移民がらみであった騒動を思わせて、よろしくないと思った。
あと、燃料税は確かにきっかけだったけど、マクロンは税制全体、労働法制全体を変えてイギリスっぽいってかアメリカっぽいってかの、要するに投資家フレンドリーな社会に制度を変えようというつもりで出てきてるから、それに対する反発は潜在的には大きい。
特に、wealth tax(富裕税)を改革して、要するに投資家にとってより好ましい環境にしていっているという姿勢が顕著に見えてたあたりから戻れない感じになってる気がする。つまり1年ぐらいぐつぐつ煮えてて、最終的に「金持ちのための大統領」というニックネームに収斂されてると思う。
ま、実際そうなんですよ(笑)。しかし国民の、大統領周辺は俺らをバカだと思ってやがるな、という反発を呼び込んでる。ここらへんで、すねないで怒るのがフランスではありますね。だからマクロンを仕込んでるのってロスチャイルドがどうしたとかいうけど、結局ワシントンなんじゃないかって気もするところがある、私は。だってフランス的に進めてないもの。
さらに、もう一つ。マクロンの大統領当選の仕方がいかになんでも作られすぎてたってことがくすぶってもいるでしょう。
あの選挙は、順当にいけばフィヨンが有望だったといっていいんじゃないかと思う。フィヨンは中道右派の実績ある人なので、中道の票をかせげた。対抗馬のルペンを嫌うフランス人は多数いるが左派も嫌いという人はフィヨンに乗れた。
しかし、これがエスタブとしては困った。なぜならフィヨンは、
フィヨン氏は、クリミアそのものというよりソ連崩壊後からの西側の政策には誤りがあったと言い切っている人。だから、各国のリアリスト系の人と同じようなことを言っている。
“I think [the West] made huge errors” in dealing with Russia after the Soviet Union’s collapse,” Fillon told journalists at the European-American press club in Paris. “We committed errors that led to the tensions that we know today … We partly provoked the situation.”
West ‘provoked’ Russia, says former French PM François Fillon
http://www.politico.eu/article/west-provoked-russia-says-former-french-pm-francois-fillon/
そして、フィヨン元首相は、そもそもプーチンと何度も話し合っている、仲のいい政治家だと考えられていている人。
仏大統領選予備選、サルコジ脱落、フィヨン vs ルペンか?
よーするに、アメリカのミアシャイマー教授なんかと同様、NATOを無軌道にしてるのが間違ってるという、私にいわせりゃ「正しい」見通しを持ってる人ですが、主流政治言論的にはあってはならない話。
これは困るでしょ?(笑)
そこで、と繋ぐべきかどうかわかりませんが、ともあれ、フィヨンは、フランスの検察がでしゃばって金銭スキャンダルを持ち上げて脱落させられた。まるっきり民主党が勝つ前の小沢って感じでしたね。
フランスのエスタブの読みとしては、ルペンは限定的だから、ちょっと左っぽく見えなくもないところから使い勝手のいい奴を出そうって腹で、マクロンに行ったってことだったと思う。
こういう成り行きをフランスの政界および知識人はハンドルできなかった。左派は昔の左派ではなくリベラルになっちゃってるから「プーチン嫌いだわ」路線だし、右派はおろおろするかルペンに行っちゃた。ホントに手っ取り早くハンドル握れそうな人をフランス政界は独自に出せなかった。(ルペンファンの人には申し訳ない言い方ですが)
ここらへん、いやぁ最近のフランスの凋落を見る思いでしたね、ほんと。バカだったもの。
で、現在のデモ隊にはこれら左右の政治勢力はかかわれていないようだ、と書いてる人たちがたくさんいるけど、上の成り行きから見てもそうだと思う。
でので、こういうデモは当局者にとっては頭痛いでしょう。だって政治的なリーダーが関与してない、最低でもしきれてないデモだから。
ということで、フランス当局は、マジで、これ以上広がらないためには妥協しかなかったんだろうな、と思う。
あと、Brexitのブリテン、メルケル代替わりの模索、イタリア反発気味という中で、フランスでpeopleの不満が爆発するってのは、EUを作ってなんとしてもこの支配体制を守る気でいる人々(欧州の一般人ではな)にとっては嫌だからなんとか早めにハンドルしようとしているんだろうと思う。
しかし、書いてきたようにこれはよく練られた作戦のうちにあるデモの広がりではないようだ、ということは、この妥協も成り立たない可能性がある。その意味で今後も余談を許さないってところでしょうね。
■ オマケ
マクロンがブエノスアイレスのG20でも歓迎されず、家に帰っても大変という中、プーチンとメルケルは豪華な朝食を食べていた。
欧州寡頭勢力によるEU支配をもくろむ人々にわざと見せようと思ってやってるのかなぁとか思えて楽しい(笑)。ロシアの国のマークが入った食器類で用意されていることからこれってアルゼンチンのロシア大使館かどこかなんだろうか?いずれにしても、イクラとキャビアがおいしそうでおいしそうで、心からご相伴にあずかりたい!
Caviar & sausages: Putin & Merkel share working breakfast at G20
どうなるのかわかりませんが、不穏分子のサクラを投入しているってことはないのだろうか、というのはあり得ると思います。
あちこちのブログ界隈では、西側メディアがかなり注目していたことから、これはつまり仕込まれてるだろうと読んでいた。
それは私も思ってる。しかし全般的にそうかと言うと多分違うのではないかと思う。
つまり、普通の仏式デモ→煽って暴徒化→緊急事態宣言ですまそうとしたが、予想以上に鎮まらない気配になった、ということではなかろうか?
エマニュエル・トッドが、暴力を呼び込んだのはマクロン政権の方だ、という言い方をしてる(警察の対応とか傲慢な語り口とかで煽ったことを指していると思う)。
ということでさらに興味深いことになってきた。
何者かのパシリなくせに、アンビシャスなこのちっぽけな小僧が私は大嫌いだ。
黄色のベスト、私の年代的には、フィリピンのピープルズパワーを思い出す。フィリピンにあやかり、小僧を追い出せ。
西側の中ではフランスとアメリカがはっきりとした革命の足跡のある国ですからこの流れは理解可能。
しかし、そうはいってもフランスにはもうゴーリストとかいないですから(笑)。だから、日本を見てもわかる通り、西側内だけの緊密なワシントンコンセンサス体制になりつつあるんじゃないかと推測します。