The Ukraine, Corrupted Journalism, and the Atlanticist Faith
By Karel van Wolferen • August 14, 2014
http://www.unz.com/article/the-ukraine-corrupted-journalism-and-the-atlanticist-faith/
カレル・ヴァン・ウォルフレンという名前を聞くと、私は基本的にむかっ腹がたつのであんまり読みたくはなかったんだけど、読んでしまった。
ウクライナ問題についての欧州の(特にオランダだけど)困惑すべき状況がよくまとまっていた。
「マスコミに載らない海外記事」さんが訳されていたのでリンクさせていただく。
ウクライナ、腐敗したジャーナリズムと汎大西洋主義という信仰
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-d1e8.html
(ちょっとこの日本語訳では読みにくいかも、と失礼ながら思います。ごめんなさい! でも英語原文が難しい文なので後でじっくりプルーフしないとなかなか読みやすい文にはならない手のものだとも思います。)
で、中身は、要するに、オランダでもウクライナ問題の報道は嘆かわしいもので、クーデター部分をすっとばしてなんでだか知らないけどプーチンが悪いの大騒ぎが続き、その上でマレーシア航空機の事故が起こりオランダは最大の犠牲者を出した国であるにもかかわらず、詳細もなにもない時から親ロシア派がやったに決まってる、プーチン率いるロシアの悪辣さみたいな悪意のてんこ盛りみたいな状況だったようだ。
で、この人は名が通っているのでそれなりに読まれるものらしくネット上で見ていると、よくぞ書いてくれた、私の国もそうだ、俺もそうだのオンパレード。つまり、いわゆる西側を中心としてメディアの論調は一糸乱れぬ状況であるようだ。
その中では、ウォルフレンは、おそらくドイツメディアが若干ではあるが異論を挟んでいることがあり欧州における例外的な例であろうと言う。
私が知る限り、フランスもそれなりに異論を挟んでいるっぽくはある。ただ、確かに主要紙に異論が出る機会という意味ではこの件に関してはドイツが例外的な存在と言っていいかもしれない。フランスは政治家が直接異論を唱えてる系。
(ウォルフレンは日本の状況をウォッチしてはいないだろうけど、日本の状況も、他の西側と比べると多少といえどもドイツに近いと言うべきだろうと思う。特にNHKは、西側標準のヒステリーをベースにしてはいるが、よく読むとロシアの言い分を併記するようにしているんじゃないかという気配がある)
■ 大西洋主義者・太平洋主義者
ウォルフレンは他に重要なことを指摘している。それは、大西洋主義者という概念の危険性。Atlanticistというのかな。
要するに、大西洋の向こう側のアメリカと自分たちは一緒なんだ、一緒の価値観を共有しているんだ、運命共同体みたいな感じでこれを信仰してしまっている欧州人が多い、と。これこそ問題なんだと指摘している。信仰しているから、大西洋の向こうから来る声、価値、判断を批判的に受け止める契機がまったくなくなっている、と。(一時期、ブレアの頃にも言われてましたね、そういえば。)
私もそうだと思う。そして、日本には、殆ど同じ意味で「太平洋主義者」がいると思う。
で、過去150年間の日本の近代で問題なのは、しばしば西洋近代の超克がどうしたこうしたとかいうけど、要するに、最初は欧州主体で「大西洋主義者」、次は徐々に「大西洋主義者」が出てきて、このへんの人たちが日本それそのものよりもそっちの方向に惹かれていってしまった、今もしまってると言いかえることもできるように思う。西洋の超克とかいう観念的なものより動きがあってわかりやすくないですか?
で、まぁその、通常コミンテルンの陰謀だと言われている出来事や経緯の大半は実は自覚的な太平洋主義者、つまりアメリカを主体とした新しい世界秩序こそ素晴らしいと思った(勘違いした、と言いたいが)人たちによるものではないのか、という仮説は結構有効じゃないのかな、としばしば思う。
結局のところ、最近の言い方でいえば、大西洋/太平洋主義者はグローバリストだったんでしょうね。国境関係なく、世界的、普遍的、インターナショナルなグローバルな価値の体系があって、みんながそれに従うと平和な社会が訪れる、とかいうやつ。(法の支配という普遍的価値がどうしたこうした、はこの今日版だろう)
そうではなくて、自国の主権を大事にしようと発想できる人たちが増えない限り、まぁ私たちはそっちに飲まれることになっているんでしょう。
■ メディアを支配しているのは誰?
もう一つ、ウォルフレンの記事を読みながら再度疑問に思ったのは、一体誰がメディアを支配しているのか、という問題。
ウォルフレンがオランダの状況をモニターして興味深い一面を示している。オランダはマレーシア航空機撃墜事件で最大の犠牲者を出した国なので、大騒ぎになるのは当然。で、とにかくあれはロシアのせいだとメディアが一分の隙もなく騒ぐ。その中で、首相が徹底的な事故原因の調査を待つと節度ある態度を取っていたようだ。私が当時見た記事でも、オランダの首相はそういう態度だった。そして上でも書いた通りフランスの政治家とかドイツの野党議員などは異論を述べる。
つまり、ここで示されているのは、
- メディアを仕切る仕組みは各国政府とは独立にある
- 各国のメディアは同期している
ということじゃないのか。
これはこれで、もちろん一般的には好ましい。政府から独立していることが正当なジャーナリズムの基本ではあるだろう。
しかし、そのジャーナリズムが、政府ではないところで同期しているとはどういうことか。
それは、どこかが一元的にコントロールしなければ成立しない話だ。
ということは、各国のメディアは、そこに従属しているということだ。
まとめていえば、
各主要メディアは、各国政府からは独立しているが、他に従属している、という話だ。
便宜的にいえば、各国政府からは独立しているが、全員ローマ教会に所属しています、みたいな構図なわけで、あれですか、近代を否定したら中世の欧州に戻る、と(笑)。
で、つまりこの「ローマ教会」に当たる部分こそ世界を牛耳っている何者かなんだろうな、など思う。そしてそれは必ずしもアメリカ国務省とかいうところではないようなのだ。
いや~、ウクライナ問題って妙なところでいろんな足が見えて面白いなと思ってる。白い足だと思っていたのに、あれ、黒い足出てますよ、みたいな。
でも一般人も知恵がついちゃったので、主流メディアって胡散臭い、嘘つきが仕事、みたいな目で見られ、あれれ足が白いと思ってるみたいよあの人、バッカじゃないのぉ~粉剥げてるってばみたいな感じで見られてるのもホント。問題は母ヤギはいるのか?ではなかろうか。