AIIBの創設メンバーになるならないを巡って様々なことが言われているけど、gooブログで人気ブログの
「世相を斬る あいば達也」さんが、ロシアもので有名な、北野幸伯さんのお話をまとめてらした。
21世紀、ユーラシアの時代 まず金融秩序への挑戦から
http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/9f3dcf1b528557dbb7819a2e369709ed
北野さんのお説に行く前に、あいばさんのお話で興味深く思ったのは北野さんが反プーチンの評論家だとお考えの御様子であること。そう?とまず思った。といって私はあまり熱心に読んでいるわけではないけど、なんというかガッツある多少獣っぽい感じさえするプーチンの顔の表紙の本があったなと思ったし、プーチン一派を劇画っぽく日本市場に導入されたのは北野さんかもな、ぐらいは思ったことがある。
しかし反プーチンというほどでもないのではなかろうか。ふと思うに、そういうことじゃなくて日本市場にロシアものを導入する際には多少けなし気味、へんでしょ、へんなんだよ、からでないと受け入れられないから劇画的に多少おかしい人々みたいに描いちゃったということではなかろうか、など思った。で、このことの意味はしかし実は小さくないのよね、と思う。
で北野幸伯さんによる今回のAIIB騒動の意味は、パワーシフトと。
パワーシフト~欧州が米国を捨て、中国についた日
AIIB参加に動いた欧州諸国の思惑
http://diamond.jp/articles/-/69203
そう、このインパクトは実際大きいわけですよ。さらにプーチンは2007年だったかの有名なミュンヘンでの演説以来一極支配は終わらせるべきという主張をしているわけで、その流れで見れば大きな変化だったと言えるでしょう。
ただ、これは世界スケールの捉え方であって、日本人にはこれを言ってもあんまりピンと来ない人の方が多いのではないのか、というのが私の考えだったりする。
まずローカルの認識調整が大事だろう、と。
つまり、日本人の大多数の頭の中はまだ冷戦時代なんですよ。信じられないことに。だから、冷戦は終わりました、というのを周知徹底させるべきとマジで思う。あはは。
ロシアはソ連を終えて、ロシア第一期没落編も終わって、復活編序章も終わって、現在復活編本論、みたいなフェーズにいるんだけど、日本ではそれでもなんでも、何があっても、どういうわけだか、謎だろうがミステリーだろうが、意味不明だろうが難解だろうが、とにかく冷戦なんですよ。
もちろん、中国は言うまでもなく「あっち」の側。
で、しかし、あっちもこっちもなく、もう別に冷戦はやってないわけですよ。冷やし中華は始まるけど冷戦はもうないっしょ。
というか、そもそも冷戦というのもアメリカ覇権の自己都合みたいな仕組みだし、本格的に何をやっていたのかといえば、アメリカがロシアを封じ込めてただけって気もする(笑)。そして封じ込めつつ相手を悪魔化して、後ろではソ連に核攻撃をしようと本気になってプランニングしたら6000万人だかがソ連国内で死ぬという想定になってたそうで、たけど、お前それやってどうするよという国内反対派に押しとどめられて、ぜ~ぜ~言いながらそれでも何かしたかったんだけど、実際には一回も米ソ直接対決なしで、結局軍事関係じゃない派の手によって、もう終わりにしろよとなった、ってのが冷戦時代というものではなかろうか。
そう。共産主義か資本主義か問題は所詮は混乱期をどう収拾するかの時間の問題だったと思うし、最初から取ってつけたような話の上に、70年代にアメリカが中国に接近して、お前はやっぱり俺と組むんだぜベイビーみたいな関係を構築して以来、なおさらどうでもよくなったと思う。
そもそも共産主義はロシアの発明品でもなければロシア人が求めてそうなったわけでもないことを誰よりも一番良く知っていたのは一部アメリカ人ではなかろうか。
昔から思うんだけど、冷戦って、主戦場は、正教 vs 西ローマ教会の方が共産主義 vs 資本主義よりずっと正しいような気さえする。この戦いは500年越し、1000年越しなので見ごたえがあるよ。
■ 価値観外交
私が思うに、日本でも90年代には冷戦は終わってたと思う(笑)。でも、中国が中国共産党という一党独裁のままなので、それがどうしても気になったんだろうね。
ではなんで今多くの人は冷戦のままなのか。それは、むしろその後靖国問題が出て来て、続いて第一次安倍政権で麻生さんが価値観外交なる謎の外交方針を持ったせいでなかろうか?
価値観外交って、名前こそなんだかニュートラルだけど実際には、中国、または中国、北朝鮮&ロシアを仲間はずれにしましょう運動だったわけだよね。自由でも 民主主義的でもない国とは付き合うなと触れ回ってたと。
そして、反射的に自らは、中国とは違う、ロシアとは違うという意識を再度過剰に設定するはめになった、と。
しかし、ロシアとトルコのどちらが制度的に、そして気質的に民主主義の土台があるかといえばおそらく世界中のジャーナリストはトルコとは言わないし、そもそも我が国は一党独裁ならぬ一家独裁みたいなサウジアラビアから大量の石油を購入して親しく付き合っているわけで、この関係のどこに普遍的価値の共有があるんだい、という話なんですよね。
私が知りたいのは自民党の安倍氏一派はこれによってどんな成果を期待したのかということ。
あと、自分の隣国をまるごと全部仲間はずれにする外交って何?とも思う。
■ 防共協定を思い出す
しかし、これは日本にとっては初めてではない。1930年代にも、1933年に国際連盟を脱退した後国際的孤立を防ぐための防共協定外交で一回やってる。
これは結果的には、ドイツしか乗って来るところがなくむしろ日本は孤立していったともいえるいう顛末で終わった。イギリスにしてもポーランド、オランダ、ベルギーにしても、シナの国民党にしても、当時「防共」といえばソ連を相手にするという意味になるんだから、日本に誘われても無意味に「そうですね」と言えるわけもないのに、日本の外交官はこれを売りにまわっていた。
積極的平和主義と日独防共協定
と、今回の価値観外交の顛末も、なにやら似たものになってませんか、と思う。
で、その一つの表われがAIIBの顛末ではないの、と思うわけですよ。安倍さんが有田外相の代わりに自ら出張って各国を回るものの、チャイナとの不和はあるが無意味に敵対視することはしませんからね、と各国から釘をさされ、最も重要なことには、チャイナのみならず、オバマ政権もこの様子を決して快くはみていなかった。
30年代ではイギリスイーデン外相が、日本は一体何をやっているんだろうと不可思議に思っていたが、やらせておけ、的に放置したらしい。NHKスペシャルのこのシリーズの第1巻がまさにそこ。
イーデンは、日本側の提案に対して、「一つ間違えば、この考えは世界を割ってしまう恐れはないでしょうか」と語ったらしい。
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ドキュメンタリー | |
NHKエンタープライズ |
1 日本人はなぜ戦争へと向かったのか “外交敗戦”孤立への道
2 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 巨大組織“陸軍” 暴走のメカニズム
3 日本人はなぜ戦争へと向かったのか "熱狂”はこうして作られた
4 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 開戦・リーダーたちの迷走
5 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 戦中編 果てしなき戦線拡大の悲劇
そういうわけで、パワーシフト問題を語るよりも前に、とにかく価値観(つまり内政)で国をいじめたり、外したりというのは25年前に終わってます、流行りませんでした、価値観外交は大失敗でしたという点を早急に周知徹底させた方がいいんじゃないかと思うなぁ。
多分、妙な排外主義もこの妙ちくりんな価値観外交と連動しているんじゃないかとも思う。「あっち」と違うという意識を持てと政府が言ってまわってるんだから。
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田嶋 信雄 | |
講談社 |
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日本の選択〈9〉「ヒトラー」に派遣されたスパイ (角川書店) |
NHK取材班 | |
角川書店 |