昨日(6月26日)、チェコの写真家ジョセフ・クーデルカの写真展「プラハ 1968」を観に、恵比寿にある東京都美術館に出掛け、併せて社会学者小熊英二の講演を聞いてきました。(会場入口のポスター)
1968年プラハ。「人間の顔をした社会主義」のスローガン。ドゥプチェクに代表される共産党々内改革派が主導する「歴史的実験」。二千語宣言に象徴されるチェコスロバキアの改革運動はこの年の8月20日、ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻により挫折し、プラハは春から長い厳冬期に逆戻りしたのでした。
ジョセフ・クーデルカ(1938年、現チェコ共和国生まれ)は、このチェコ事件が起こったこのとき、団結して兵士達に抵抗する市民の攻防を写真に収めました。
しかしプラハの春が終焉を迎え、ソ連が導く共産主義への「正常化政策」が敷かれる状況では、これらの写真は国内では発表できる記録ではありませんでした。密かにアメリカに持ち出され、翌69年に「プラハの写真家」という匿名者によるドキュメントとして発表され、ロバート・キャバ賞を受賞します。 撮影されてから43年、その多くの写真が日本で初公開されました。
怒り・悲しみ・抗議・沈黙・放心・ほほ笑み、市民や労働者は様々な表情を見せます。それに対して兵士たちは一様に無表情です。自分たちの正当な政府と、自分たちの進める改革を、”帝国主義の謀略に乗せられた動き”として、侵攻して来た同盟軍。何故だ!の思いが強かったことでしょう。その激しい無念の思いが伝わって来ます。
このとき、プラハ市共産党委員会は「偶発的な抵抗は控えよう」なる声明を出していました。暴力的な抗議行動より、非暴力的抵抗や抗議を示す民衆の姿。街に座り込む多くの人々、戦車を取り囲む若人たち、抗議のこぶし。何が問われていたのか。年月が明らかにしてくれましたが、この写真展からもそれが伝わって来ます。
この写真集は「プラハ侵攻 1968」として出版されています。朝日新聞26日(日)の読書欄でも紹介され、解説者は「ベラ・チャスラフスカ 最も美しく」で、この事件にも触れた後藤正治です。