「神様 2011」は、代表作は「センセイの鞄」で知られる川上弘美の作品。「福島原発の闇」は堀江邦夫作、水木しげるの絵になる作品。「神様 2011」は2011・3・11以降,かって完成した前作「神様」に追加文を加えて新たな作品に仕上げました。「福島原発の闇」は初出「アサヒグラフ」の記事を改題し、解説を加えて再出版したものです。
「神様」は1993年に書かれた川上弘美最初の短編でパスカル短編文学賞受賞作品。くまにさそわれて散歩に出た、私とくまの一日の物語で、くまと私はごく自然に日常会話を交わし、行動を共にし、別れには抱擁し合います。のどかな平穏の日々の童話の様な物語です。
あとがきで著者は「熊の神、というもののでてくる話しです。日本には古来、山の神・田んぼの神・土地の神など、人の暮らしのまわりに沢山の神様がいました。万物に神が宿るという信仰を、必ずしもわたしは心の底から信じているわけではないのですが、窓越にさす太陽があんまり暖かく、これがほんとうに、おてんとうさまだと感じる、日本古来の感覚はもっているわけです」と語っています。後半の感覚は、私の気持ちの中にもある感情で、全く同感です。
その彼女が震災以降の様々な事々を見聞きするにつけ「わたしは何も知らず、また、知ろうともしないで来てしまったのだ」と感じて、それ以来にわか勉強もし、3月末に、あらためて「神様 2011」を書いたのです。文章は前作と殆ど同じですが、土地などは放射能に汚染されているという前提で、微妙な部分では少し表現が変わりますが、前作と同じ流れで物語が進行していきます。彼女の思いは次の一文に収斂しています。”日常は続いていくけれど、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性をもつものだ”。一方「福島原発の闇」は次回ブログに。