2月3日、歌舞伎俳優の市川団十郎さんが、肺炎のため66歳で急逝された。衷心よりお悔やみを申し上げ、ご冥福を祈ります。
昨年末には中村勘三郎さんが57歳で亡くなったばかり。新歌舞伎座での舞台に立てなかったお二人の無念さを想う。こけら落とし興行の6月には「助六」が予定されていたそうで、団十郎の雄姿を二度と観られない残念さがこみ上げてくる。
団十郎を最後に観たのは、昨年の10月「大歌舞伎」。夜の部の「勧進帳」での富樫役で、弁慶は松本幸四郎。二人の役どころは昼と夜で逆転し、昼の団十郎は見なかったが、弁慶役で『団十郎の心は富樫にはなく、ただ義経を守ることにある。それは富樫との対決が済み、酒を勧められて舞う時にも現れて、主君一筋の武骨な漂泊者の悲しみがそくそくと伝わってくる』との劇評にある様に、男気豊かなで、豪快な荒事(あらごと)を得意にした舞台を何度かは観られたのに・・・。
朝日新聞には『2011年から全国骨髄バンク推進連絡協議会長として患者の支援活動に励んでいた。自身が出演する公演には、白血病患者や家族を無料で招待していた』とも紹介されていた。
それにしても歌舞伎役者とは何と体力・気力を必要とする稼業なのか。この2年数ヵ月の短い歌舞伎見物でも、”舞台に命を掛ける”との表現がぴったりする様な場面の身近にいた事になる。
11月2日に観た「吉例顔見世大歌舞伎」での片岡仁左衛門。病の片鱗をも見せず元気に出演していたのに、体調不良のため翌日から休演。復帰は23日となる重い病だった。
2年前の9月歌舞伎「沓手鳥孤城落月」の淀君と「口上」に出演した中村芝翫は、確か1日の出番で病に倒れ、10月10日には亡くなられた。代役は福助だった。恐らく病をおしての舞台と稽古だったろう。
市川染五郎が上演中の舞台で奈落に転落したのは8月27日。重傷で危うく一命を取り留めた。9月1日開幕の「秀山祭九月大歌舞伎」観劇時に、当然彼の姿は無かった。
以前に増して歌舞伎に関心が向くようになっている。新歌舞伎座にも興味が湧く。