旅の2日目、「かくのだて温泉」を後にして、徒歩15分ほどに位置する角館駅に向い始めたとたん、どちらからともなく、「もう少し角館を見ようか」と。妻は「西宮家」とこの地で開催されるフリーマーケットを見学したかったらしく、私は醤油ソフトを味わいたかった。何れも前日に知った情報。そこで駅まで行って、8時55分発の“こまち12号”を13時50分発の“こまち22号”に変更した。指定券の変更は1度は手数料無しで可能。
まずは味噌・醤油醸造の安藤商店へと向かった。途中、偶然にも以前に宿泊した「石川旅館」の前を通った。建物は残っていたが、既に営業は終わり誰も住んでいない様子。42年前の事で、さもありなんとは思いながら何故か残念な気分。(写真:経営を終えた石川旅館)
安藤家は享保時代から地主として角館に住み、1853(寛永6)年からは、小作米として入って来る米の一部を原料として味噌を醸造し、あわせて醤油も造るようになり、現在に至っている。1891年(明治24年)に建てられたレンガ造りの蔵は、1986(昭和61)年に角館町の文化財に指定され、内部の蔵座敷は見学が可能。玄関前の仕込み水で喉を潤してから内部を見学した。蔵は重厚な感じで、建物内部から座敷と庭を眺めると日本家屋の良さがよくわかる。江戸から明治にかけて度々火災に見舞われたため、レンガ造りにして防災を整えたそうな。(安藤蔵)
(蔵内で製品の試食・試飲が出来る)
(屋敷内座敷) 蔵から少し離れたところにある、安藤家が経営する「マルヨ蔵 麹クラブ」でランチ。前日に武家屋敷店で試飲した“白だし”が美味しかったので、それを使用したランチを食したかった。850円と安くて美味。甲斐甲斐しく働く3人の若き女性が好印象。残念なことに“醤油ソフト”は安藤醸造では作ってはいなかったが・・・。
続いて田町武家屋敷の「西宮家」へ。こちらの武家屋敷は佐竹直臣の居住地で、西宮家はその家臣団のなかでも重きをなした家柄とか。明治後期から大正にかけては地主として繁栄し、その時代に建てられた五棟の蔵と母屋を復元。米蔵はショッピング空間で、北蔵はレストランとなっている。私達は前蔵でコーヒーブレイク。大正浪漫の香りがする空間でのひと時。
(前蔵は珈琲店)
東京でもそうだが、最近はこれはという珈琲店を見い出し、コーヒーを味わおうと心掛けている。今回の旅行でもそれが旅のもう一つ目的。弘前・秋田でも素晴らしい珈琲店があったが、ここ角館では前日にはそのような珈琲店に巡り合っていなかったのだ。思えばそれが、角館でもう半日を過ごした、意識には昇らない動機だったかも知れない。味も香りも良かったが、過ごす空間も素晴らしく、気分よく角館を後にして一路弘前へ。(写真:器は其泉)
(観たことのない、左は桧木内川沿いのソメイヨシノ。右は武家屋敷の枝垂れ桜)