マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

敗軍の将、兵を語る(その3)

2017年09月08日 | 将棋

 電王戦第2局は5月20日、姫路城で行われた。ここまでの電王戦4局の舞台は全て世界遺産の建物の中で行われたことになる。この一戦ではプロの棋士たちにも理解不能なことが起こっていた。

 
 
 第2局、
またしてもポナンザの初手は常識にない「42玉」(右図)。しかし、先手番の名人は動じなかった。名人の立てた作戦は、第1局の敗戦から学んだのか短期決戦。これに対するポナンザの手はまたしても意表を突くものだった。一度前進した攻めの銀を後ろに引き、専守防衛の作戦を取ったのだ。厚い守りに跳ね返され攻めあぐむ名人。そこで短期決戦の方針を変え、名人も守り固めることにした。この時、評価値は202で名人やや有利。持ち時間も40分多く残していた。「自然な手を積み重ねて、相手が攻めてきたらしっかり受けるといういつもの通りの差し回し」。天彦流だった。

 名人は43手目に金を玉の傍に寄せ穴熊を目指した。守りを固める名人の自然な一手。しかし評価値に思いがけない変化が起こる。名人側からみた評価値3に下がり、名人のリードが無くなり互角になった。
 更には鉄壁の穴熊に組み始めた。穴熊はプロ同士の戦術で高い勝率を誇る。しかし評価値は更にマイナスに傾いていく。検討していた棋士たちも驚きを隠せない。「何が悪いのですか」の問に誰も答えられない。佐藤康光会長曰く「自然な手を指しているのにどこが悪いのか分かりません」。実はこの場面を冒頭”棋士たちにも理解不能”と書いた。恐らくは今後何故かがプロの間で検討され続けると思う。(写真:右は穴熊完成間近。下は穴熊完成)
    
    

 その後ポナンザは歩を使い巧みに攻めを繋いでいく。見落として一手を境に鉄壁の穴熊は見る見る崩壊。最早
挽回不可能。そして94手目、名人は「負けました」と頭を下げた。
 記者会見では名人は淡々と勝負を振りかえった。「僕自身が持っている感覚や価値観で正面からぶつかっていって敗れました。ポナンザの独特の感性を見せられ、それが私を上回った2局であったかな」と。山本さんは「コンピューターが名人に勝つというひと昔前では信じられないことが達成できて、私満足しています」と語った。(写真:戦いを終えた名人)





 その後名人戦で佐藤天彦名人に変化が現れていた。今までの定跡とは違う一手を名人戦で採用し勝利していた。(写真:名人戦第2局。名人はの8手目は☖74歩)

 AI搭載の将棋ソフトは棋士から多くを学び飛躍的に強くなった。今後は棋士たちがソフトから吸収すべきものが多々出現するのだろうか。無敵を誇ったポナンザは、第27回「世界コンピュータ将棋選手権」で新人「elmo」に敗れた。素人目にも、将棋界は激動期に入ったようにと思える。

 今日から3泊4日で信州旅行に出掛けます。ブログ更新は12日以降の予定。