10月14日(土)、文京アカデミー主催の特別公開講座「古地図を読み、屏風絵を語る」が「文京シビック小ホール」開催され、参加してきた。
東京大学史料編纂所付属画像史料解析センターの設立20周年を記念しての公開講座だった。 第1部が「古代荘園絵図が伝えるメッセージ」 現センター長 山口英男氏
第2部が「舟木本洛中洛外図と豊国祭礼図の謎解き」 前センター長 黒田日出男氏
お二人の先生は何れも大きな画面へ映像を映し出しての解説で、実に実に面白かった。今回のブログでは第2部を聞いての驚きを綴っておきたい。(写真:舟木本洛中洛外図の右隻)
黒田氏は「解析センター」を立ち上げた方で、今回のサブタイトル”デジタル画像で細部までクローズアップ!-”とあるように、二つの屏風の細部を大場面に映し出しての解説。僅か2cmの絵が大型画面いっぱいに映し出されてきた。普通、画像を大きくすればするほど画像はぼやけてしまうのだが、凸版印刷株式会社が開発したデジタル技術によってぼやけない画像が見られた。
黒田氏の著作の一つに『謎解き 洛中洛外図』がある。「上杉本洛中洛外図」は信長が上杉謙信に贈ったとの結論に至る、面白い謎解き本で、このブログでも2013/11/17 と2013/11/19 に登場させていた。その本の記述から真面目な学者タイプんの方を想像していた。しかし、タブレット片手に登壇した黒田氏は、気さくな感じの学者先生だった。普通机に置かれたパソコンを操作して画面を映し出す方が多いのだが、黒田氏はタブレッツトを持ち、移動しながらの画面を操作し、聴衆に語りかけた。
こんな風に本題に入っていった。
「高さ163cmの豊国祭礼図のデジタル版は本邦初公開で、皆さんが最初に見ます。『舟木本』と『祭礼図』の二つをなぜ選んだのか?この二つは近世初期の風俗画の出発点とも言える格別の傑作で、岩佐又兵衛は今後ますます注目されていく絵描きです。(写真:舟木本洛中洛外図の左隻)
『舟木本』は去年国宝に指定されました。『祭礼図』はまだ重要文化財ですが、予言しておきますが、いずれ国宝に指定されるでしょう。『舟木本』は今までは岩佐又兵衛とその工房の作品という風に言われてきていましたが、岩佐又兵衛の作品と言っていいでしょう。岩佐又兵衛の作品だと断定することが出来ない長い歴史がありました。岩佐又兵衛の作品だということに関しては慎重だった。今日はこの作品は岩佐又兵衛作ということで聞いてください」
戦後の岩佐又兵衛研究を終始リードしてきた辻惟雄氏は「舟木本洛中洛外図」の作者は<又兵衛前派>と長いこと唱えてきた。この「舟木本」を岩佐又兵衛作と認めたのは最近のことだが、黒田氏はこのことには触れなかった。「舟木本」の中身は次回に。