マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『感染症の世界史』を読んで

2020年05月09日 | 医療

 本書では前半部分でこの20万年の地球環境史と感染症が語られ、後半部分で日本列島史と感染症に触れられる。 
 人類は今までに実に多くの感染症と闘って来たことが良く分かる。天然痘・ハシカ・ペスト・マラリヤ・スペインかぜ・・・。私たちは、その幾多の感染症の大流行から、奇跡的に生き残った「幸運な祖先」の子孫、とうい視点に初めて気付かされた。その中では特にスペインかぜの印象が強烈だっが、その個々の戦いの詳細よりも、人類の移動と感染症の関連を特に面白読んだ。

 ◎約20万年前にアフリカで誕生したと考えられてきた、現世人類の祖先は、最新の感染症の研究成果も取り入れて、従来考えられていたよりも数万年早い12万5000年前ごろにアフリカを出たとする説が有力になってきた。
 その移動には意図せざるお供がいた。ネズミ・ゴキブリなどの小動物以外に目に見えない膨大な数の細菌、ウイルスなども人や動物に寄生して移動した。

 本書にはピロリ菌・エイズ・パピローマウイルス・水痘(水ぼうそう)・成人T細胞白血病・結核などが登場するが、これらの原因になる病原性微生物は、いずれもアフリカが起源とみられる。宿主の人ともに進化しながら、世界に拡散していった。
 私達ホモサピエンスは出アフリカ以来ずうっとウイルスや細菌と付き合って来たことになる。人類の歴史は 20 万年だが、微生物は 40 億年を生き抜いてきた強者。地上最強の地位に上り詰めた人類にとって、唯一の天敵が病原性の微生物。

 ◎白血病の一種「成人T細胞白血病」(以下白血病と略記)を持ち込んだのは縄文人だった。
 ウイルスの系統分析から人類の起源や移動の歴史を推測する「ウイルス人類学」が近年注目を浴びている。白血病のウイルスの大部分は母から子へと垂直感染することから、このウイルスの変異を追っていけば人類の移動を追跡出来るはずとの観点からの移動仮説がある。
 旧石器時代から縄文時代初期にかけて、「北方ルート」からサハリンや朝鮮半島を経て白血病亜型Aのウイルスが日本列島に広がった。更に縄文時代初期には「南方ルート」で朝鮮半島から新たな集団が列島に流入し、彼らが広めたのが日本型亜型B。
 日本人に多い白血病亜型Bが列島に侵入したのは、遺伝子の違いからみて約1万4000年前ごろと見られる。つまり日本列島に新たな集団が移住してきたのは縄文時代初期で、彼らがウイルスを持ち込んだ可能性が高いとの仮説である。 

 ◎感染症の歴史の中で最大の悲劇となったのが、第1次世界大戦末期に発生した「スペインかぜ」だった。
 
ヨーロッパ戦線に送られた兵士に感染者が交っていたことからヨーロッパ全域に流行が始まり、その兵士の移動とともに4ヶ月間で世界中がインフルエンザに巻き込まれた。当時中立国だったスペインでは5~6月に約800万人が感染し、国の機能はマヒした。大戦中に中立国スペインでは情報統制がなく、流行が大きく報道されたため「スペインかぜ」と呼ばれた。スペイン政府はこの名称に抗議したが、あとの祭りだった。
 死者数は全世界では5100万人~8100万人と推定され、日本ではは約40万人に達した。自宅に籠る以外、予防策としてはマスクしかなった当時の人々はどんなに怖かっただろう。流行は1918年~1921年。その僅か2年後に関東大震災が起こっている。それに気が付いたとき、私たちより一世代上の父・母の世代が如何に困難な時代を生きて来たのかに思いが及んだ。

 著者石弘之氏(1940年生まれ)はアフリカ、アマゾン、ボルネオ島などで長らく働き様々な熱帯病の洗礼を受け、奇跡的に生き残ってきた。彼は警告する。「日本はじめ世界は歴史上例のない人口集中と高齢化の道を突き進んでいる。地球環境の破壊とあいまって、今後ますます流行の危険は高まるだろう」と。彼のような人がマスコミに登場しないことを不思議に思っていたら、角川文芸WEBマガジンのインタビューに応えるサイトがあった。こちらの記事の方がはるかに読みやすく、現感染が“新型”と呼ばれる理由にも触れられていた。
 URLは
 https://kadobun.jp/feature/interview/9yhcdzonav40.html
 又は“石弘之”の検索を経てそのサイトへ到達可能。
 

 


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