数十年振りにアガサ・クリスティーを読んだ。『感染症の世界史』にこう書かれていたのだ。(以下数行はネタバレの可能性があります)。
「風疹が登場する小説には、1962年に出版されたアガサ・クリスティーのミステリー『鏡は横にひび割れて』が有名だ。ちなみに、この年はヨーロッパで風疹の大流行が起きた年だ。クリスティーの代表的なキャラクター、老嬢の探偵ミス・マーブルが主人公のものとしては、最高傑作との評価もある」と。更に東京新聞の読書欄・記者の1冊でも、外出自粛時に読むに適する本の1冊としても紹介されていた。これは是非読みたいと思い、『隠蔽捜査』(著:今野敏)と同時にネット注文した。
作品の舞台は、ロンドンから列車で1時間ほどの場所にある架空のセント・メアリ・ミード村。その村にミス・マーブルも彼女の親友バントリー夫人も住んでいる。(私達は、15年ほど前に、ロンドンから列車で1時間ほどにある小都市を訪ねたことがあった。そこで、今は福岡在住のOさんがB&Bを経営していて、その時の風景を思い出しながら読み進んだ。)
時は、周りには新興住宅が建ち始め、都会化の波が押し寄せて来た年代。マーブルたちにとっての古き良き時代は過ぎ去ろうとしていた。マーブルも歳をとり、付き添いさんからは年寄扱いされ、視力も大分衰えてきていた。
バントリー夫妻の住んでいたゴシントン・ホールも何度か持ち主が変わり、今や映画スターのマリナ・グレッドと映画監督の夫妻が住み始めた。その引っ越しを記念し、村の有力者や関係者を招待してのパーティーが開かれる。
その最中に招待客の一人が変死を遂げる。警察の調査が開始され毒殺による殺人事件だったことが判明するが、警察の懸命な捜査にも拘わらず犯人は絞り切れない。一体誰が犯人なのか・・・。
伏線らしき記述を丁寧に読み進むと誰が犯人なのか凡その推測がついてしまう。しかし殺人の動機はわからない。当日のパーティーに出席していたバントリー夫人の話を聞いてマーブルには謎が解けて始めてきた。最後にはマーブルによって明解に謎は解き明かされ、ジエンド。
バントリー夫人がマーブルに事件当日の様子を伝えようとして、女優の「凍りついたような表情」を表現するのに、アルフレッド・テニスンの「シャロット姫」の一節を引用した。(私は全く知らないが)その詩は
<織物はとびちり、ひろがれり
鏡は横にひび割れぬ
「ああ呪いがわが身に」と
シャロット姫は叫べり。>
この詩文は暗号ではなく、ここから殺人動機が分かるわけでもないが、『感染症の世界史』に紹介されたことがヒントとなり、私にも大体の推測がついてしまった。
450ページの長編だが、会話文が多く読みやすい。名探偵ポアロは何冊か読んだことがあったが、マーブルさんは初めて。老嬢は体力は衰えたが頭脳いまだ明晰、と描かれていた。
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