国内では珍しい街と街を結んで走る自転車ロードレースの「2023ツール・ド・北海道」の初日(8日)に悲しい事故が起きてしまった。
中央大学の五十嵐洸太選手(21才)が、下り坂で対向車線に出て前を行く集団を追い越し中に、登ってきた乗用車と正面衝突し、9日に亡くなられた。
本当に痛ましい。ご冥福を心からお祈り申し上げる。
4年生だから就職も決まり、大学最後のシーズンに打ち込んでいたと思う。
報道写真で道路上に倒れている自転車のゼッケンプレート161を見て、涙がこみ上げた。
末尾1番は通常はエースナンバーであり、5名のチームの中で一番先にゴールすることを目指すポジションだ。
チームメートはそのために様々なアシストをするのが自転車レースだ。
現場は若い頃はロードレースの練習で、最近は吹上温泉に向かう自転車旅で走っている。
「ツール・ド・北海道」では7~8年前に審判員として、車両で通過したことがあった。
美瑛町から登って、十勝岳望岳台の横を通り、標高1,000m付近の吹上温泉を過ぎてからの狭くてカーブの多い急坂で事故は起きた。
審判員の経験では、山間の狭くて険しい峠などでは両方向が通行止めになるが、コースの枝線にある農家、牧場などの車両や交通規制開始前にキノコ取りなどでコース内に入っている人の車両が突然出てくる危険性は以前からあった。
そのため、先頭のパトカーがスピーカーで注意を促し、要所では立哨員が警戒し、これまで事故は無かったと記憶している。
事故原因は警察が調査中であり不明であるが、報道によると、乗用車の運転手は交通規制が行われている区間の駐車場で観戦した後に吹上温泉に向い、下ってきた選手と衝突したようだ。
この通りだとすると、乗用車の運転手は交通規制開始前にコースに進入して観戦し、もう選手は来ないと判断して吹き上げ温泉に向けて走ったと推測される。
五十嵐選手が追い越そうとした集団は先頭からかなり遅れていたのかもしれない。
レースでは、最後尾の選手の後方から警察のパトカーが交通規制の解除をスピーカーで告知して行く。
乗用車の運転手はその行動からコアなファンと思われるがこのことを知らなかったのだろうか。
五十嵐選手が追いそうとした集団はレースのどの位置を走っていたのかも焦点だ。
もし先頭からかなり遅れていたとしたら、審判員が手薄になっていて危険行為の制御など、レースコントロールが不十分だったことも考えられる。
いずれ原因が明らかになると思うが、十分検証して安全対策を強化し、ヨーロッパスタイルの「ツール・ド・北海道」が継続されることを願う。