楕円と円 By I.SATO

人生も自転車も下りが最高!
気の向くままに日常と趣味の自転車旅を綴ります。

荻田康永『考える脚』で冒険旅の準備

2020年04月04日 | 日記

 

5年前に完全退職したので、幸か不幸か“外出自粛”は普段の生活と変わりは無い。しかし、今年は気分が少し違う。雪が消えたのに自転車旅の計画を立てるモードにならない。コロナ雲が立ち込めている。

これはマズイ。そう考えて北極冒険家の荻田康永さんが昨年の春に出版した『考える脚』を読んで冒険旅気分を味わうことにした。

2013年の『北極男』に続く2冊目で、この3月に第9回「梅棹忠夫文学賞」を受賞している。梅棹忠夫氏は文化人類学者でチベット探検などでも知られる。

『北極男』は何故北極圏に惹かれるのか、2000年からの18年間に亘る15回の旅を通して語っている。

『考える脚』は近年の3つの旅を綴っている。綴るというと「行ってきたぁ。」的な作品を想像しがちだが、荻田さんの「冒険」に対する考え方が爽やかに表現されていて人柄が顕れている。自らも書いているが、精神力とか根性のような世界が嫌いな人だ。美学がある。

3つの旅は、「北極点無補給単独徒歩の挑戦-2回目-(2014年3月)」、「カナダ・グリーンランド単独行(2016年3月)」、「南極点無補給単独徒歩(2017年12月-2018年1月)」。それぞれが一冊の本になるような貴重な記録であり、3編が荻田さんの心の軌跡で繋がっている。

初めてお会いしたのは2014年の「地平線会議」だった。誰が参加しても良い冒険者の集まりは知っていた。東京出張で時間が出来てふらりと参加した時のスピーカーが荻田さんだった。

ひょうひょうと430Km地点で撤退した2回目の「北極点無補給単独徒歩」の報告をしていた。退職後に何をしようか、漠然と自転車旅を考えていた時に決定的な勇気を貰った。

「無謀と冒険は違う。」このひと言に尽きた。

以来、分けるのは準備の質。何をどう準備するか考え抜き、そのプロセスを楽しむのが「冒険」と考えている。

若者がするような〝自転車野宿旅〟を65才男がするのは、人によっては年甲斐も無い「無謀」なことに映るだろう、そう世間体を考えていた。

しかし、やりたいことにしっかり準備をして臨めばそれは心の老いに人生の残された時間を費やすより意味のある「冒険」ではないか。そう切り替わって古希を迎えた。

-  未知とは所詮、訪問者それぞれの未知でしかない。心が動く、だから冒険をする。  -また、ひとつ『考える脚』から勇気を貰った。

反3密。空気が綺麗な静かな自転車旅の行き先を捜す準備になった。