すったもんだの挙げ句の果てに18才以下の子供一人当たり10万円相当の給付が行われることになった。
岸田首相は「迅速に決めた」と言うが何のことはない、総選挙前に国会を開いていればもっとましな政策がとおに実行に移されていた。
子供は独立し、年金暮らしには直接に影響が及ぶ話しではないが、岸田首相の「聞く力」とやらと与党の「数の力」によって、今後益々〝スジワル〟な政策がゴリゴリと進められると思うと無関心ではいられない。
一番の懸念は行政組織のトップである霞が関が想像以上に機能低下を引き起こしているのではないかということだ。マスコミはそのことにあまり関心が無いようだ。
所得基準を「世帯」ではなく「世帯主」にしたために、夫婦共稼ぎの高額所得家庭が対象となり得ることは役所の担当者が制度設計している時に直ぐに気付いたはずだ。
にも関わらず政治決着された。
さらには印刷、配布などの行政コストが掛かることが明らかなクーポン券の併用は、一説では公明党ではなく、財政規律を金科玉条にする財務省の主導で決まったらしい。
雑誌でバラマキ批判をした財務次官に役所が忖度したのだろう。
そして、何と言っても基本となる政策の目的も効果もはっきりしていない。
かつて、霞が関には政治の暴走を止める役割があったが、「この政策はマズイ。やるならこの方法だ」というチェック機能が果たせていないのは国民にとっての損失である。
岸田首相は自民党総裁選の立候補に当たって「民主主義の危機」を訴えた。首相になって記者からこのことを問われて「政治と国民との間に乖離がある」と答えたという。
その「乖離」が何故生まれたかの検証が全く無い。
安倍政権以来の側近による〝官邸政治〟で行政組織が歪められ、国民の側に立った塾考が行われなくなっていることの積み重ねが「乖離」の大きな要因ではないか。
政権交代は基本政策の方向転換と共に、行政組織の再生に繋がることでもあると〝10万円給付〟は示している。