春に田植えの手伝いに行った先のTさんから貰った「ゆめぴりか」の苗を“観賞用”にプランターで育てていたら出穂した。
7月25日に自転車で出掛けた月形のキャンプ場が満杯でがっかりして戻ってきた時に気づいた。道中でイネの出穂を見ていたので何だか嬉しかった。栽培技術が劣っていて草丈はバラバラ、葉の色も良くないが義理堅く育ってくれた。
5月に籾を苗マットに降ろして10センチ位になるまでハウスで育てから田植え。それから2ヵ月ちょっとで穂が出て、天気が良ければ間もなく今月末から8月初めに受粉するはずだ。最近は苗を移植する方法ばかりではなく、籾を水田に直播する方法も普及しているようだ。
イネは見た目に派手さは無いけれど積算温度で生育する精密機械のようで眺めているのが好きだ。学生時代も就職して畜産を担当していた頃もイネ科の牧草が周りの風景だったせいかもしれない。
10年ほど前に歌手の加藤登紀子さんが原発を考える一助として配布していた「長崎被爆イネ」の籾を知人から貰い受けて栽培したことを想い出す。やはり空籾が半分くらいあり、福島原発事故の教訓も風化していると思ったことがあった。
コメは凄い作物だ。何年でも同じ水田で障害を起こさずに育つ。他にこのような作物は無いはずだ。1粒の籾からおそよ150粒の米が出来るとされているので、20粒で茶碗一杯分になる。桁違いだ。因みに馬鈴薯は15~25倍。明治期に北海道に渡った日本人が故郷を思い、寒冷地のイネの栽培に執着したことが理解出来る。
米の花のひとつひとつはたった2時間しか咲かない。穂の上の方から下に順番に白く淡い小さな花を1週間くらい付けている。道端から観ても気づかない。どこまでも控えめで地味な作物だ。
じりじりと暑い日の午前中に静かに花を咲かせている。
《長崎被爆イネ 2012に栽培したもの》