祇園精舎

気の向くままの徒然日記

口熊野マラソン 記

2009年02月02日 | Run & Walk
2月1日

結局自身が満足するほど走りこみができておらず当日を迎えてしまった。

日置川マラソンの時よりは体力をつけた。
でも日置川マラソンの時は必死になって完全に走りきれる自信をもって臨んだに対し今回の挑戦の心構えは確実に甘い。

でもプレッシャーは全く感じず前日は普段通りに寝れた。
前日は軽く調整するつもりだったのが調子がよかったので、少し走りこんでしまい足に軽く疲労を残してしまう。

大会は心より体がついていけるのかが心配であった。


完走の6時間前に食事を済ませておくのが良いらしく、当日は早く起きて朝食をとった。
しかし兄貴と一緒にいく予定だったのに約束の時間まで間に合わずバイクで現地に向かった。


途中コンビニに寄ると大阪からツーリングらしき連中がいた。
現地に着くとその連中も後からきたので同様に参加する輩だったので笑った。

8時半頃に受付を済ませ兄貴と合流。
お互いの状況と心境を話しながら、ユニフォームにゼッケンをつけたりアップしたりする。

家を出る前に便を済ませるようにしていたのだが上手くいかないもので、現地でもよおしてくる。
こんな時や場所では決まってトイレは渋滞である。。。

それが難儀だった


10時にスタート。10数分前にスタート地点に立った。


周囲を見ると仮装してカエルの被り物や赤鬼のコスプレの女性とかいてる。

東京マラソンでは仮装してる人が多いってことは知ってたけどここでも幾人もいてるからおもしろい。自分もしてみたい気持ちになる。

道路直線がフルマラソンの参加者で埋め尽くされていて規模の大きさに自然と気持ちが高揚してくる。

中央競馬のGⅠのファンファーレみたいな吹奏があってスタートした。

川の上流の水が流れるようにゆっくりと人が動く。
大きく両手を上げて誰ともなくがんばっていくよって手を振りながら笑った。
あぁ、いよいよ始まったなぁって期待が大きかった。

一緒に隣にいてた兄貴は
「気にせず先にいけよ」って言ってくれた。

「スタートから慌てていくことはないよ」っていって数キロは一緒に走るつもりだった。

でも数百メートル走っただけでムズムズしてきて「先に行くよ」って声をかけた。
「おぅ行ってこい」って快くかえしてきた。

お互い自分のペースで走り、完走しきろうと意思疎通ができたと思える。


とにかく人の群れの中なので思ったようにペースがあげれない。
先が長いから慌てないで落ち着いていこうと思ってた。


それでもペースが遅く感じてくる。
先が長いから慌てない・・・落ち着いてゆっくりと…を繰り返していた。

民家を通り、沿道の人が応援してくれてた。
律儀に手を振って「ありがとう」って応えた。
やっぱりトレーニングと違って大会にでてるって気持ちがでて俄然と張り切れた。


自分と似たペースの人の後ろについてゆく。

おじいちゃんに近い人だったけど人をどんどん抜いていく。
前半で始まったばかりなのにエライ張り切ってるなぁって思いながらついていた。

それでも息がかなりあがっていて大丈夫なのか?ってこちらが心配になっていたけど自分は呼吸も不思議と落ち着いて足の回転もスムーズでゆとりがある。


残念なことに時計を持ってくるのを忘れたのでペースが速いのかがわからない
体はホンマえらい強くなったと関心する。
とにかく体のペースで走ろうと思った。

R311に出る前にはおじいちゃんに近い人も抜いてマイペースのつもりで走る。


熊野古道の稲葉根王子前のトンネルを抜けた時に距離の長さにどうなるのか?と考えた。
中辺路までバイクで走ってもおよそ30分。それを走る・・・・すごい挑戦だと改めて感じた。

6キロの表示、某Tさんはここから勝負って言ってたっけ。。。
ホンマや、足はまだいけるけどあと36キロある。。。
まだまだこれからや頑張ろうと思った。


7キロを越えて初の給水。一の瀬ってところ。
長距離を完走するには補給が要だとの兄貴の言葉を思い出した。

喉の渇きはなかったけど飲むようにしてバナナも置いてくれてたので食べた。


途中で公共のWCにも寄った。
最期まで大丈夫だと思ったけど少しでも違和感をもって走りたくなかったから少しくらいの時間をロスしてもいいや。。ってこの時は余裕があったのだが。。。


本宮まであと40キロの表示の看板がでた。
ツーリングでは馴染みの地。
なんだか近くて遠い。でもこの時は走れそうな気がしてた。


登り坂でとにかくグングン足が動いていた。

自分と走力が似た女性も抜いて、体格がゴツくて変な腕と足の振りをしたデブイ人も抜いた。
NHKにでてた体操のお兄さんに似た人でウルトラマラソンのTシャツを着てた人も抜いた。

驚くほど余裕と元気があった。

18キロ地点で縁石でつまづいた。転びそうになったけど踏ん張った。

足が元気だったからだ。
つまづいたマヌケさよりも踏ん張れた足を誉めた。
まだ距離はあるけど動ける。
全然終わってないって鼓舞ができた

あと3キロでハーフが終わる。。。

初ハーフの時は後5キロで足が止まりかけたのだから確実にあの時以上の力を発揮できてると実感してた。

対向から折り返しの人が見えた。
約6キロの差として30分の時間差がある。
競争はしていないが実に速いなぁ…って感心した。

しかし同時に年齢別で上位いけないかな?せめて女性には負けたくないなぁ…ってって欲がでながら順位をチェック入れていた。

頑張り次第では女性の先頭と並べそうなかんじである。


ハーフを越えてしばし走ると折り返しを迎えた。

これで終わりでなく折り返し。。。
体力は残ってるけど最後までいけるのか?
距離の壁を乗り越えれるのか?と不安と期待がすごく混ざっていた。

でも走ってやるんだ!って意気込んでいた。

折り返しから反対車線をチェックいれていた。

折り返しにも到達していないのに歩いてる人がいた。
今から歩いていたらゴールは苦しいんじゃないかって・・・

そして兄貴は一体どこにいてるのだろう?って

脚部に不安があって走れるか?って言ってたからもしかしてリタイヤしていないだろうか?
すれ違ってエールをおくりたかったけど姿が見えず来た道と別のコースへ進んで行く。

人の心配より自分もしっかりしないと、ゴールで会えることを祈った


とにかく給水所では絶対に水分とバナナを補給していた。




しかし23キロ地点で足に重みがやってきた。
30キロからの壁というのが早くもきたのである。

心拍数は正常なんだけど足が重たくて動かない。
今まで跳ぶように走っていたのがウソのようでスピードが出したくても全く出ないのである。

もうリズムがバラバラで息はあがっていないのに走るのが苦痛になりゴールのイメージが見えなくなってきた



反対に抜いていた人に抜かれてきだしたのである。

体操のお兄さんは溜めていた力を解放したのか自分が抜いた時の走力とは全く違うほどのスパートでごぼう抜き。
さすがウルトラマラソンを走破してるだけはあると感心したものの

自分に走力が似た女性にも抜かれ、ついていくにも足が思ったように動かずジワジワと引き離されてしまう始末。
何が女性には負けたくない…だ。すごいうぬぼれていた

しかも変な腕と足の振りをしたデブイ人にも共に抜かれしまう


どんなに悔しくても思うように動かず情けなくなっていた。

ここまでだったんや…って。完走するなんて、ガンバルなんて、全て大言だったんやって。

自分も終わってしまうんか…って


でも止まりたくなかった。歩きたくなかった。
走れるうちは走って、走れなくなったら歩こう、棄権はしたくない

人に負けるより終わってリタイヤだけは許したくなかった。


給水所で水分とバナナだけだったけど、以降からパンも食べた。

ただのパンが不思議と美味かった。
足の疲労はとれないけどパンの味…炭水化物が全身にいきわたりエネルギーに変わっていくのが感じ取れた


次の給水でも水分とバナナとパンと梅干と…

その次の給水でも同じように…って終いにはパンを2個とってむさぼりながら走ってた。

口の中がカスカスでパンを飲み込むのも苦労してたけど、外見も情けなかったけどなんとしてでも走ろうってしてた。

そう考えると、給水で飲食を提供してくれているボランティアの存在がとてもありがたかった。
多分、給水所を利用していなかったら終わっていたと思える。


小さな子供や女性陣などから励ましもあった。

「がんばってください」って声。ホンマ励みになれた。


28キロを越えて持参していたアミノバイタルを飲用した。
ただの粉と思われたのに全身にエネルギーがいきわたっていくのが驚いた。


とにかく体が極限まで疲労すると補給がいかに大切なのかを身にしみた。


なんとかあがきながら前の人を抜いていった。
前の人も自分と同じでバテたからなのか?

抜かれた人にはなんとしても追いつきたいと思っていた。

そう思ってるとまた一人の女性に抜かれた。
茶髪でポニーテールの人。

この人に負けてしまうと全て終わってしまうと思えた。
自分と走力が似た人…この人に負けるよりも自分に負けてしまうって感じた。

引き離されたら終わりだ。この人に負けてもついていかなくてはいけない!ってその時は思った。

自分と走力が似てるので全く同じペース。
自分がストーカーのように後ろについていた。
多分、憑かれてイヤだったと思う。息もあがってきてて自分は「ハァ…ハァ…」って言ってるのだから。

ペースメーカーにさせてくれてたかもしれない。
相手が乱れてか自分が復調してか逆に自分が前に出るようになってきた。


前の人をどんどん抜いてきだしてきた。中には歩いてる人が多数でてきた。
先にスタートしたハーフマラソン組の連中で追いついてきたのである。

抜かれることが無くなり、反対に自分が追い抜く立場になってきてモチベーションが高くなってきたのである。

疲労して限界と思っていた足が止まることなく動くのである。
もはやトップギアには入らないけど、3速で維持しながらマイペースを刻めれて…

30キロの壁を越えれた!
35キロを越えた時には1キロを経過するのが苦しいと思っていたのが変化したのである。

38キロで携帯してたアミノバイタルを再度飲用した。ここでもエネルギーがいきわたった。
もうこれで給水も補給も要らない。最期まで走れるって確信した。


あと3キロの表示で時計が13時20分の表示…

4時間以内のゴールは確実だけどこうなれば3時間30分以内は出来なかったなぁ…って喜びと残念なのが出てた。

もう残りが長いとも短いとも思わなかった。


そして残り1キロの表示。
感慨深くなった。残り僅かって・・・

でも後で足音が聞こえた。茶髪のポニーテールの女性?
ここまできたら誰にも抜かれたくない!

出来る限りの力をだしてスパートをした。


ゴールまで必死に走った。

ガンバれ~って声がたくさん聞こえた

ゴールした瞬間はバンザイした。
思った以上に静かであった。





二十歳代半ばの時に思ったことがある。

「三十路までにフルマラソンを走ってやろう」って。


そうなんだ、30歳はとうに越えてしまった。
走りたいと思ってたけど諦めて不可能としてた。

でも遅れてしまったがあの時に走ってみたいと思ったことが実現した!

そして走りきれた。


ハーフを走った時と違い、ゴールしても余力はあってまだまだ走れる気力も体力も残っていた。


それでも「あぁ…立ってることができないや」って思った。

足の疲労もあったけど感情がこみあげて涙が溢れてきた。

一人で座り込んでカッコわるい


それでも自分なりに一生懸命にして燃焼できたと思える。

出来ないと思っていたことが確実に実現できたのだから
「なせば成る!」これを得れたと思える。

だから走るのがここで終わってもやってよかったというのはいつまでも自分には残るんだと思える。


心配してた兄貴もその後完走した。
お互い、しんどかったと話をしたけどそれ以上に喜んだ。
タイムとは別に、多分二人とも同じ想いをしていたと思う。



タイム 3時間36分11秒