大津市で2011年10月、いじめを受けていた中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題で、男子生徒を殴ったなどとして書類送検された同級生2人=いずれも(15)=が、大津地検の調べに対し、大半を「覚えていない」などと否認していることが23日、捜査関係者らへの取材で分かった。同地検は、2人が男子生徒に対し、「死ね」などと暴言を浴びせたとして、脅迫容疑を加え、大津家裁に送致する方針。
捜査関係者らによると、地検は2人からあらためて聴取。2人が男子生徒の自殺前、「死ね」などと告げていた行為が脅迫容疑に当たると判断した、とみられる。2人は一部の暴行などの行為は認めつつ、いじめについては否認している、という。男子生徒の当時の担任への聴取はしていない、という。
県警は昨年12月、遺族の告訴に基づき、校内で男子生徒を殴るなどした13の行為を暴行や窃盗など3容疑にあたると判断。いじめていたとされる同級生3人のうち2人を書類送検し、刑事責任が問われない13歳だった1人を児童相談所に送致した。書類送検された2人のうち1人は、一部の行為が13歳当時のものだったため、児相にも送致されていた。
滋賀県の嘉田由紀子知事は24日、大津市の中2自殺問題で担任教諭を減給10分の1(1カ月)とした県教委の懲戒処分について、「(教諭が当時いじめを)認識していなかったという実態のところも含めて教育委員会が判断した」と述べ、妥当とする考えを示した。
県議会との意見交換会で質問に答えた。処分をめぐっては大津市の越直美市長が「甘すぎる」と批判しているが「処分には厳粛なプロセスが必要。責任について確実に事実をおさえながら法律や全国的な動きを踏まえて(県教委が)判断した。妥当だと思っている」と理解を求めた。
一方で嘉田知事は「少なくとも今、知事には教育委員会の判断にノーという権限はない」とも述べ、県教委の主体的な判断を受け入れざるを得ない立場も強調した。
大津市で2011年10月、いじめを受けていた中学2年の男子生徒が自殺した問題で、大津地検は24日、暴行などの容疑で書類送検された同級生2人=いずれも(15)=を脅迫などの疑いで、大津家裁に送致した。うち1人は、教師にけがを負わせた傷害の疑いでも家裁送致した。
家裁によると、脅迫と暴行、傷害、窃盗の4容疑で送致されたという。同地検は具体的な送致内容は明らかにしていないが、滋賀県警が器物損壊容疑にあたるとした成績表を破るなどの非行の送致を見送ったとみられる。
捜査関係者によると、地検は男子生徒への九つの加害行為が暴行、窃盗、脅迫の3容疑にあたると認定。そのうち暴行と一連の行為の中で、男子生徒に「死ね」などと暴言を浴びせた非行が脅迫にあたると判断した。2人は「死ね」と言ったことは認めたが、大半は「覚えていない」などと話したという。
昨年12月、県警はいじめていたとされる同級生3人のうち2人を暴行と器物損壊、窃盗の疑いで書類送検。刑事責任が問われない13歳だった1人を児童相談所に送致し、児相は今年3月、暴行などの疑いのある行為について家裁に送致した。今後、同級生3人は家裁の審判開始が決まれば、一括審理され、保護処分が検討される。
■「第三者委が調査しきれなかった部分ある」
大津市立中2年の自殺した男子生徒をいじめていたとされる同級生2人=いずれも(15)=が大津家裁に送致された24日、同市の富田真教育長は、市が設置した第三者調査委員会が今年1月に提出した報告書について、「100%ではない。書かれていない部分に重要なことがあるかもしれない」と述べ、今後の少年審判でいじめの全容が明らかになることに期待した。
第三者委は、3人のうち1人の行為について「いじめ」と認定しなかった。その一方で、先に家裁送致されていた同級生を含めて3人とも送致されたことに対し、富田教育長は「第三者委が調査しきれなかった部分があり、警察や検察の圧倒的な捜査能力との違いもあったのだろう」と述べ、立ち上げが遅かった第三者委の限界を指摘した。
一方で富田教育長は「(第三者委に)丹念に調べてもらったことを真摯(しんし)に受け止め、再検討を重ねながら、いじめの再発防止に努めたい」とし、「いじめの根絶は難しいが、芽をいかに早く摘みとるかが重要だ」と強調した。
男子生徒の自殺を機に、常設の第三者機関やいじめ対策推進室、学校安全推進室を設けるなど、いじめ問題に対するさまざまな取り組みを本格化させた大津市。いじめ対策推進室には今年4月からの発足後、1カ月間に40件の相談が寄せられた。
遺族が市などを相手取り起こしている損害賠償請求訴訟については、市は遺族に和解を申し入れながら「万引の強要」など一部のいじめ行為について認否を留保し、「少年審判の結果を待ちたい」との姿勢を示している。