柳津(やないづ)の池の魚を毒殺す
2019.10
出羽の国柳津(でわのくに やないず)の虚空蔵(こくぞう)の池に、魚が多く棲んでいた。
蒲生下野守がそれを見て、なぜか解らないが、毒を流し入れて、魚を殺してみたい、と言った。
それで、この池は、昔から、殺生禁断の地である、と諫めたが、最後まで、意見を聞き入れなかった。
そして、魚たちは、悉く殺されてしまった。
その日より大地震が起こり、それから十四日の間、大地震は止まらなかった。
山は崩れて洞となり、河は宇埋まって陸地となった。
城中をはじめ、民屋ことごとく崩れおち、人が多く死なだ。
これより程なく、下野家は滅んでしまった。
これは、無意味な殺生の罰があたったのであろうか?
「新著聞集 第九 祟厲篇」より
訳者注:柳津について、ここでは、出羽の国=山形県、とあるが、福島県会津の地名である。 この毒流しの話と似たのが、いくつかある。