江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

本朝食鑑に見る河太郎(カッパ)  

2019-10-21 23:05:31 | カッパ
本朝食鑑に見る河太郎(カッパ)  
                   2019.10
 「本朝食鑑」より

最近、水辺に河童なる者がいて、能く人を惑わす。

或いは、大鼈(おおすっぽん)の化けたものとも云う。
それ故、顔は醜くく、体は、童児のようである。

皮膚は、青黄色である。
頭上には、凹んだ処があり、常に水を蓄えている。
水があれば、則ちが力が強く、制しがたい。
水が無ければ、力が弱く、捕まえることができる。

それで、もし人がカッパに出会ったら、必ず先に腕を持ち上げ、拳で、頭の水を取ってしまえば、カッパを倒すことができる。

伝え聞くところによれば、海西諸国には、このカッパが、人をだますことが多く、人を妖力で害する。

土地の人は、大鼈(おおすっぽん)ではなく、老いた川獺(かわうそ)の化したものである、と言っている。

その物のたぐいは、変化(へんげ)して、どのようになるのかは、測りがたい。

海国には、この族(やから)が最も多い。


編者注:「本朝食鑑」は、文字通り解釈すれば、本朝すなわち日本の食品についての書である。
    しかし、カッパを食品とみなしてはいないし、食べたとの逸話もない。
    この場合の「食鑑」は、食品を中心とした博物誌と解釈した方が、妥当でしょう。
    

大和本草附録に見る河太郎

2019-10-21 22:57:05 | カッパ
大和本草附録に見る河太郎
                    2019.10
河太郎と相撲をとった人が、正気を失って、病いになった場合には、
しきみの木の皮をはぎ、乾燥させて粉(抹香)にし、水にかき混ぜて、呑ませれば、すぐに正気をとりもどし、本復する。

しばしば用いて、効果があると云う。
しきみは、莽草である。
木であるが、本草綱目には、毒草類に、分類、記載されている。

編者注:これは、大和本草附録(益軒全集)に見る河太郎の記述です。
    貝原益軒先生は、実にまじめな人です。
    「大和本草」も、まことにまじめな書です。
    その、先生も、カッパ(河太郎)の存在を疑っていなかったようです。
    これは、時代の為でしょう。

スッポンがカッパとなる  「さへずり草」「松の落ち葉」

2019-10-21 22:44:51 | カッパ
スッポンがカッパ(河太郎)となる
                        2019.10
「さへずり草」 「松の落ち葉」の巻  より。  
   
山崎美成が、このように語った。
水虎(すいこ:カッパの別名)の写生図を見たことがある。
背と腹ともに、スッポンの甲羅によく似ている。
手足首の様子はスッポンによく似ている。
世人がスッポンの年経たものである、と言うのも、うなづける。
先日見た陰乾(かげぼし)した物を見た。
それを、諸国図説のとを比べて思うに、(カッパは)カワガメの年経たものが、変化したものであろう。
越中富山の方言に、カッパのことをガメと言うのも、大いに訳(わけ)があるのであろう。




河太郎の身長及ぴ鳴声  蜀山人全集「一話一言」

2019-10-21 22:27:23 | カッパ
河太郎の身長及ぴ鳴声

蜀山人全集  「一話一言」より
河童図説、享和辛酉六月朔日。

(以下の文は、東浜という地名の権平次さんと言う名の漁師から、浦山金平という人への報告書のようです。
 河太郎カワタロウは、カッパの別名の一つ。)

報告書

水戸浦より上った河童は、身長が三尺五寸余り(105㎝位)、重さが二十貫目(約75㎏だが、身長と釣り合わない。しかし・・・)有りました。
見た目よりも、体重が多う御座いました。

海中にて、赤子のような鳴声が夥敷(おびただ)しくきこえました。
漁師たちは、船に乗っておりました。
海の底から声が聞こえてきましたので、網を下したところ、いろいろの声が聞こえてきました。

それから、さしあみを引廻しましたが、網の内へ拾四五疋ほど入っておりました。
カッパたちは、おどり出て逃げ出そうとしました。
船頭たちは、棒かいなどで、打ちましたが、カッパたちはねばり付いて来て、かい等で打っても、一向にききませんでした。
そのうちの一匹が、船の中へ飛込んだので、とま等を体の上に押しかけて、その上からたたいて、打殺しました。
その際に、やはり赤子のような鳴き声を出しました。
河童の鳴声は、赤子の鳴声と同様で御座いました。
打殺した際には、屁をこきました。
誠に耐え難い臭いで、船頭などは後あとまで、悩まされました。
カッパを打った捧かいなどは、生臭い臭いが、未だに消え去ってはおりません。

尻の穴は三っつ有りました。
全体的に、骨が無いように見えました。
屁の音はしなくて、ズズッとばかりでありました。

カッパたちを打つと、首が胴の中へ八分程入ちました。
カッパの胸は張出していて、セムシのようで御座いました。
死んでしまって首が引込まない状態でした。

当地では、度々カッパを捕えますが、此の度つかまえたもの程大きいのは、今までありませんでした。

珍しいことでありましたので、ご報告申し上げます。

以上。
六月五日 東浜、権平次   浦山金平様